今回ご紹介するのは、宮 宏一郎 (みや・こういちろう)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

宮 宏一郎 Koichiro MIYA
1974年生まれ

宮の作品には、多くの人々が描かれています。その一人ひとりの傍らには、生態を示す言葉や数字が記されています。成長の過程は「運動能力(瞬発力、持久力、敏捷性)」や「知能指数(IQ)」といった指標で示され、さらに総合的な運動能力は「エネルギー消費量(kcal)」という形で数値化されています。まるで車の性能を排気量で表すかのように、人間の成長をエネルギー消費量で段階的に描いているという、なんとも独創的な着想のもとに描かれた作品群です。

宮がこのような作品を描く背景には、人間の成長や科学の発展に対する深い興味があります。幼少期からオルガンを弾いたり、動物や宇宙、科学、生物などの図鑑を夢中で読んでいた宮は、最終的に人体に関する図鑑に興味を抱くようになりました。中学生になる頃には、これまでの経験や知識をもとに独自の世界観を築き、絵を描き始めたそうです。

作品によってはピアノの鍵盤を加えて人間の成長を表現するというものもあります。通常ピアノの鍵盤は88鍵ですが、宮の作品では214鍵が描かれています。「214鍵までの音域があったらすごい」「これは未来です」と彼は語ります。

実際の物理的制約を超える要素が頻繁に登場する宮の作品には、既成概念にとらわれない未知や進化への想像力と独創性であふれています。


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


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