今回ご紹介するのは、衣笠泰介さんの作品です。
キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田 文登さんです。

作者……衣笠 泰介(きぬがさ・たいすけ)さん

キュレーターより《松田 文登さん》

光と色彩に溢れた、衣笠泰介のマジカルな風景描写。「ブタペストで朝食を」

「ブタペストで朝食を」

色鉛筆やクレヨン、油彩、アクリル絵の具―。さまざまな画材が使われる彼の作品は蛍光色で描かれる風景が一際印象的だ。華やかで大胆に見える作品だが、一歩近づけばまた新しい景色が見えてくる。散りばめられたアルファベット文字や、色鉛筆の上に重ねられた絵の具の色目が立体的だ。キラキラと光輝くその画面に、いろいろな思いや疑問を馳せながら前のめりに見てしまう。

写真:衣笠泰介さん

1989年に京都市生まれた衣笠泰介さん。2歳から絵を描き続け、マジカルとも評される色彩感覚と感受性で光と色彩に溢れた世界を描く。そのアートワークは国内外で高い評価を得ている。京都市内の「ギャラリーミラクル」を拠点に、東京・京都・沖縄・札幌・大阪・ニューヨークなど、各地で個展を開催。京都上御霊神社と京都御所内白雲神社の絵馬所には、大作絵馬が奉納常設展示されている。

衣笠さんの作品は、旅行で訪れた地の景色や写真、部屋の中にある瓶やボトルなど、実体験に紐づく事物がモチーフになって描かれている。創作を始めた当時から文字やアルファベットを描いていたそうで、その作風は今日の作品でも一貫して継続している。ニューヨークのオフィス街の一角も、故郷である京都の古風な街並みも、どちらも分け隔てなく美しい景色として、カラフルな世界観に昇華される。鑑賞者である私たちは、現実と幻想が入り混じった不思議な世界に誘われる。そして、彼の目にだけ映り、彼だけに描き出せる光景を、どこまでも旅してみたいという衝動に駆られてしまう。

「ティファニー前 New York」

「京都駅からタクシーに乗って、バス乗って」

その感動を皆さんと分け合いたいという想いが募りに募り、昨年12月19日、ヘラルボニーが京都で初めて出店した「HERALBONY」のポップアップ店舗内で衣笠さんのライブペインティングイベント開催した。テーブルにはモチーフにして描くための写真を敷き詰めていたが、衣笠さんはその中から手に取ったモチーフを一瞬見るとすぐに手元に目を落とし、スラスラと描き始めていた。

たくさんの来場者に囲まれ、注目を浴びながらも、いつも通り”自由に楽しく”描く衣笠さんの姿がそこにはあった。

一体次は、どんな幻想世界を創造するのか。彼のマジカルな風景は、これから彼の作品に出会い、魅了される人々の心象をも美しく、鮮やかに彩っていくだろう。

写真:2021年12月イベントの様子


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

 


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