今回ご紹介するのは、熊谷 敏江(くまがい・としえ)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

熊谷 敏江 くまがい・としえ
1992年生まれ

熊谷の日常には、様々な創作活動が溶け込んでいる。その創作活動は、独特な愛らしさを持つ動物や植物等のイラストの描画から、タオルの糸をほどいて作る立体物など奇想天外で創造力豊かだ。

熊谷は、平日、通所する障害者支援施設にある熊谷専用の創作スペースで絵画制作に打ち込んでいる。モチーフとなる題材は雑誌や絵本等から着想を得たり、その時の気持ちから思い浮かんだりした鬼や猫、アニメのキャラクター、花、通所する施設の職員など、多様なイメージを描き出していく。また施設にいる職員のリクエストに応じて制作することもあり、テーマに合わせて彼女独自の視点で解釈し、新たな形をのびやかに生み出している。

熊谷は特定の画材にこだわることはなく、様々な画材を自在に使いこなして創作を楽しんでいるようだ。また、画材に留まらず、モノの「素材」を活かした創作も圧巻である。
通所する施設以外の時間では、タオルの糸をほどき、何やら立体物を制作している。

タオルの糸がこんな風にほどけるとは想像もしていなく、人の創造力にはほとほと驚かされる。器用な手つきで、一本ずつ、糸がほどかれていき、細く繊細な糸の塊となったオビジェに生まれかわっていく。この創作は、何かモノを創っているということよりも、熊谷がリラックスできる行為であるようだ。手先の器用さもさることながら、手元をまったく見ずに行っていることにも驚嘆する。

こうした多彩な日常の中で、熊谷は自分らしい表現を楽しみながら生き生きと過ごしている。その表現力は見る者の日々も楽しませている。


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


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