今回ご紹介するのは、平山 亮(ひらやま・りょう)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

平山 亮
(ひらやま りょう 1992年生まれ)

現在、日本とベルギーのアウトサイダーアート(アール・ブリュット)国際交流展 Ikigai(いきがい)が、ベルギーのギスラン博士博物館で9月8日(日)まで開催中である。
この展覧会の出展者の1人が、平山亮である。
6月にIkigai展の鑑賞ツアーが企画され平山と現地に赴いた。

平山はベルギー滞在中のホテル自室や、ベルギーのアトリエ(クンスト・イエロー・アート)を訪問した際も気づけば、ベルギーの出展作家とともに描画に向かっていた。どこにいても変わらない描くことへの旺盛な意欲が伝わり、平山の心や頭の中にはいったいどのような創造や想いが去来しているのだろうと思いをはせる。

この平山の紹介レポートでは、平山の母、淳子さんから教えていただいた平山の作品ストーリーも作品と合わせて紹介する。
平山は3歳から粘土で昆虫、動物、ロボットなどを作り始め、12歳ぐらいから色々なロボットの絵を描くようになる。モチーフは漫画やゲームを参考にしているが、色彩や造形に至るまで平山が創造するオリジナルキャラクターである。
平山の創作は、タイトルと配色構成を考える「アイディアノート」と連動しながら行われている。「アイディアノート」は、「チームガジェッター」シリーズのストーリータイトルが羅列されたリストであり、1から順番に平山の中で次から次に浮かんだタイトルが細かく鉛筆で描きこまれている。それと平行して行われるのが、紙面に登場するキャラクターたちのイメージカラーの選択と配色の可能性についての思考メモである。配色構成は、五行思想から考える色と、平山の中にある色に対する意味づけが納得するまで続けられる。タイトルや色などの構想が決まると、現実と想像の世界を行き来しながら、創作する作品を一気に描きあげていく。

2011年にあった東日本大震災の際に津波の映像を見て以来、現実は壊れるものだと知り、平山の中に「地球を守らなくては」という意識が強くなり、作品の主軸には「地球を守る」という平山の強い思いがある。
現在、月曜から金曜までの毎日4時間の仕事以外は、多くの時間をアイデアデッサンと色鉛筆を使った絵画制作を行っている。

「チームガジェッター」とは少年カゼオシキを中心に結成された地球防衛軍である。光の戦士ガジェッターは、素粒子にも巨大な機械型ロボットにも変形する事ができ、D N Aのような3桁から9桁のナンバーと意味を持つ12色の色の組み合わせで作られている。ガジェッターとガジェッターに選ばれし少年カゼオシキは、美しい地球を守るため、大魔王ロボッツザウルス、司令官が操るロボットモンスターリキットエイリアンと日夜戦っている。

遠い昔、オルタナ大陸では炎のドラゴン族の国王ハカイオウと黄金のドラゴン族の皇帝ムゲンテイの古代戦争が行われていた。
人間たちは、激化する戦いを終結させるため2体をクライマックスゲートに封印させるが、時が流れ、新たにアルビオス大国となったオルタナ大陸では、悪の将軍ゼラが、王になるためデロスアイランドからムゲンテイを覚醒させ、アルビオス国王継承者皇子バキは、炎のドラゴン族の王ハカイオウは平和を守るため復活させた。新たな戦がまた始まる。

これは地球によく似た科学文明を持つ青き惑星エーテルスと異世界宇宙アストラル界で繰り広げられた物語である。
悪の中の悪、悪の中の善、善のなかの悪、善の中の善。生まれた場所や住む場所が違っただけで、悪にも善にもなる不思議。果てしない宇宙と精神の世界の平和を求める攻防は続く。


平山さんが出展するベルギーでの展覧会が開幕中!
日本とベルギーの国際交流によるアウトサイダーアート(アール・ブリュット)展

Ikigai

会期:2024年4月27日(金)―9月8日(日)
会場:ギスラン博士博物館(ベルギー/ゲント)

本展では、日本とベルギーの両国で創作を行う、多様な背景を持つ作家が生み出す独創性あふれる作品を広く紹介する。本展のコンセプトは「Ikigai」。「生きがい」は、自分の人生における価値や喜び、幸福感を探求する概念であり、私たちが日々生きる上での大きな原動力となるものである。私たちは皆、自分の人生を見つめ、振り返ることがある。自分の人生において、本当に望んでいることは何かを知ることで、自身への理解を深め、より自分らしく生きるという選択を行っていく。本展を通じて多種多様な人々をつなぎ、互いの文化芸術や作家たちへの理解を深めるとともに、鑑賞者自身がそれぞれの人生や生きがいを見つめる機会になることを願う。

主催:
クンストハウス・イエロー・アート
ギスラン博士博物館
社会福祉法人愛成会

詳しくは、Ikigaiのサイトをご覧ください。(NHK HEARTSのサイトを離れます)


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


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