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今回ご紹介するのは、東 美名子さん(東京・練馬区)の作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……東 美名子(ひがし・みなこ)さん

美名子が初めて自分の背丈より大きいキャンバスを貰って絵を描いたのは10歳の秋、偶然訪ねたエイブル・アート・ジャパンが開催しているワークショップ(現在のアトリエポレポレ)でした。

それから…

色を重ね合わせ混ぜ合わせ奔放に楽しむ時期を過ごし、訪れた思春期。答えの出ない苦しみに身体も心も押し潰されそうになりながら、絵に自分の思いをぶつけることで少しずつ前に進みました。

学校を卒業して小さい頃からの夢だったハンバーガーショップで働き始めて18年。

絵を描きながら陶芸を作りながら、小さい頃からのもう一つの夢だったアニメーターになる夢を叶えました。日曜日の夕方になると自分の描いた動物たちがNHK Eテレの画面いっぱいに動き出すのを心待ちにしている美名子です。(母・東 明子)

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

「東 美名子の世界」

東 美名子は10歳から絵を描き始め、以来26年のキャリアを持つアーティストだ。モダンアート協会に所属し、現代アート系のギャラリーで個展も開催する。
彼女にはダウン症という特性があり、好奇心が旺盛、美術館や博物館が大好き、映画もよく見る。好きな画家はゴッホ、ポロック、シーレ。美術館では一枚一枚じっくりと長い時間をかけて見るのだという。

東にはそれぞれ傾向の違う二つの作品世界がある。
その一方は、少し暗めで、ある種のアカデミックさがありながら、実在感と幻想的なビジョンが共存し、孤独と夜を感じさせる象徴世界。

代表作「月と街」では、ニューヨーク・マンハッタンの夜空に大きな丸い月が浮かぶ。2001年9月、ツインタワーが崩落する三日前に偶然その地にいたこと、その時の記憶にインスパイアされた作品だ。そこにはその三日後に起きた大惨事への思いが静かに込められている。
沖縄のサトウキビ畑、ひめゆりの塔、広島、ベトナム、訪れた地に思いを馳せ、祈りを込めた作品の数々。絵の具で下塗りをし、じっと画面を眺め、タッチや色の濃淡から何かが見えてくるのを待つ。イメージをつかみ取ったら逃さず力技で持っていく。この重たいシリーズを描くことで、思春期の苦しさを乗り切ったのだという。

さて、東のもう一方の世界には、カラフルでユーモラスな動物たちがイキイキと躍動している。じっくり見て観察する東らしさがよく表れ、形態や特徴をていねいにとらえている。色彩もキュートでイラストレーション的な親しみやすさもある。表情豊かに、いまにもしゃべり出しそうな東の動物たちは、じつに魅力的で、Eテレの番組『ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!』内のアニメーション『ネイバーズ』のキャラクターにも採用されている。

※『ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!』(Eテレ 日曜 午後5時~)より

陶芸による立体作品では、東の持っている二つの世界がちょうど良い具合にミックスされている。これもモチーフは生き物たちで、形態を捕らえる巧みさによって、生命の存在感がダイナミックに力強く伝わってくる。

幼い頃から表現することが生活とともにあったという、豊かな環境の中ではぐくまれた才能は、“障がい者アート”や“アウトサイダーアート”といったカテゴリーをやすやすと超えていく。そして、“障がいがあるアーティスト”という固定概念をも溶かしていくのだろう。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)

記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。


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