今回は、シリアスゲーム「樹立の森 リハビリウム」の作者、松隈 浩之さん(九州大学 大学院芸術工学研究院 准教授)。
キュレーターは中谷 日出さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者紹介……松隈 浩之(まつくま・ひろゆき)さん

幼少期から絵を描くことが好きだったという松隈さん。今は、芸術工学という「技術の人間化」を理念としたデザインを専門とする分野で研究をすすめています。「やりだすとやめられない」というゲームの特性を、治療や教育に役立てる九州大学の産学官連携「シリアスゲームプロジェクト」の代表。キャッチフレーズは「ゲームで世界を救う!」。医療や教育の分野でリハビリや学習を行う場合、「シリアスゲーム」の特性を生かせば、単調で飽きやすく、辛さを伴いがちなノルマを楽しく、継続的に行ってもらうことができます。「樹立(きりつ)の森 リハビリウム」の「きりつ」は、高齢者や足腰の弱った人が病院や介護施設などで行う起立訓練のこと。「椅子に座っては立つ」を繰り返すだけの単調な動作でも、効果を得るには回数が必要。そこで、訓練を支援するソフトの開発に乗り出しました。ディスプレーの上には訓練者の動作を認識するセンサー等があり、ソフトはそのデータから回数をカウントします。スピーカーからは応援するかわいい子どもの声が聞こえてきます。臨床検証も行われ、一人でゲームを使った場合とセラピストが支援する場合とでも効果はあまり変わらなく、人によるアシストが減ることで、セラピストの負担軽減になるというメリットも確認されました。コロナ禍の今、外出の自粛が広がったり、施設内での身体接触が制限されたりする中、高齢者の運動不足を補うための解決の方策のひとつ、とも注目されています。この起立訓練支援ゲームのほかにも、ロコモティブシンドローム対策バランスゲーム『ロコモでバラミンゴ』、半側空間無視訓練支援ゲーム『たたけ!バンバン職人』、足踏み運動支援ゲーム『リハビリウム アシブミジョーズ』などを開発。まさに「ゲームで世界を救う!」。
<参考情報>
http://macma-lab.heteml.jp/html/game/game.html#rihabirium

 

キュレーターより 《中谷 日出さん》

今やゲームはメディア芸術といってアートのいち分野になり、さらにアートに限らず「ゲーミフィケーション」という言葉が社会のあらゆるシーンに現れてきています。何にでもゲーム的な要素を加えることによって、より有効かつ楽しくすることができるという意味です。 そんな時代にゲームを介護の現場に応用し、お年寄りが楽しみながらリハビリできてしまう「シリアスゲーム」というジャンルの日本の先駆者であるのが松隈浩之さんです。松隈さんは、ゲームというインタラクティブアートな視点で介護の世界を変えようとするアーティスト。代表作「リハビリウム」は多くのリハビリの現場で繰り返し行うことを強く勧められている起立運動に着目し、立ち座りの動きで木を伸ばしていくシンプルなゲームです。 木が自分の立ち座りに連動して伸びていく気持ちよさ、楽しい音楽や応援、ランキングシステムなど高齢者にもわかりやすいゲームシステムに加え、導入する側のスタッフが現場で本当に使ってくれるオペレーションを考え、誰もが使いやすい作品に仕上がりました。アート(ゲーム)が変える介護の世界、今後の広がりが楽しみです。


プロフィール

写真:なかや ひで中谷 日出(なかや・ひで)
東京国際工科専門職大学教授、京都大学大学院特任教授。東京芸術大学大学院美術研究科修了。元NHK解説委員でIT、芸術、メディア分野を担当した。大学では「企画発想法」や「コミュニケーションと記号論」などを担当。アイデアのつくり方やイメージの伝え方の最先端を探究することをライフワークとする。ウェブTV「木曜新美術館」を主宰。介護や支援にかかわる人に向けた専門誌のスーパーバイザーも務める。

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