鈴木 康幸 HEARTS & ARTS VOL.134
公開日:2025年12月23日

今回ご紹介するのは、鈴木 康幸(すずき やすゆき)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター)です。
キュレーターより 《小林 瑞恵さん》
鈴木 康幸 Yasuyuki SUZUKI
1990年生まれ
鈴木は、油粘土を用いて東京ディズニーランドのアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」のクリスマスバージョン「ベリーメリーホリデー」を再現する制作を行っています。幼い頃からこのアトラクションに親しみ、毎年冬になると必ず訪れ、時には一度の来園で7回ほど繰り返し乗りながら、装飾の配置やキャラクターの動き、空間全体の構成を丹念に観察します。
制作にあたっては、自ら撮影した映像や動画チャンネルを何度も見返し、記憶をたどるように粘土で空間を立ち上げていきます。アトラクションの出口から入口へと遡るように制作を進めるのも、鈴木ならではの方法です。使用するのは、手触りや感覚を大切にして選んだ決まった油粘土。一回の制作時間は30から40分ほどで、建物や装飾、キャラクターを形や量、配置関係のみによって細部まで正確に再現します。色を使わない無彩色の表現は、キラキラとした色彩の情報をそぎ落とし、その分、見る人の想像力をより豊かに広げます。
完成した作品を保存せず、つくってはつぶし、またつくるという制作の循環も、鈴木の大きな特徴です。誰かに見せるためでも、記録として残すためでもなく、自分が好きな世界を何度も自分の手で立ち上げること。その行為そのものが創作の中心にあります。
無彩色の粘土で構成された鈴木の作品は、見る人に色や音、光を想像させ、アトラクションの記憶を呼び起こします。「作品をつくる」というよりも、「好きなものを再現し続ける」こと。その思いつくようで思いつかない独自の創作は、同じものが二度と残らない、一瞬の体験として存在しています。
プロフィール
小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 理事長、アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。
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制作の様子




