「新潟市精神障害者自助グループ ココカラ」は、精神障害当事者による当事者支援のグループです。2018年度の第30回わかば基金の支援金で、書きためていた当事者の実態を描いた漫画を製本し、新潟県内の福祉関係事業所などおよそ200か所に配布しました。
『直接は伝えにくい当事者の“本当の気持ち”を知ってもらえる機会になれば』という思いが、漫画に込められています。

当事者だからこそ伝えられる“生の声”

 配布した実録漫画『ココカラ』は、うつ病や強迫性障害、統合失調症当事者たちの発症までの過程や生活上の困難さ、日々感じていることなど、メンバーそれぞれの実体験を描いています。
作者はココカラの代表を務める内藤織恵さん(43歳)。19歳の大学生のときにうつ病を発症し、いまも服薬をしながら暮らしています。漫画には自身が発症した後にリストカットや大量服薬などで幾度も生死の境をさまよったことなども赤裸々に描かれています。

 内藤さんは漫画を描いた理由をこう説明します。「精神障害といっても様々な疾患があって、しかも同じ疾患でも1人1人症状が違うんです。当事者でさえ分からないことがたくさんあるんです。だから、周囲の人たちに理解はしてほしいけど、簡単なことじゃないんですよね。専門書もありますがハードルは高い。でも漫画だったら手に取ってもらうハードルが下がると思ったんです。しかも当事者が描くからこそ、“当事者の生の声”を届けることができるんじゃないかと考えたんです」。

 手に取った人たちからは、「精神障害を知る第一歩として、とても分かりやすかった」、「私は解離性障害の当事者で様々な体験や症状の違いに驚きもありましたけど、似てるところもあって共感する部分が多いです」といった声が寄せられています。
 また、内藤さんが配布していなかった場所で、この『ココカラ』を見たことも。高校職員の組合事務所でたまたま見つけ、職員に尋ねたところ、「分かりやすいから読んでみて」と持ってきてくれた人がいたということです。

“健常者”とともにつくる当事者活動

 内藤さんが代表を務める「新潟市精神障害者自助グループ ココカラ」は、就労が難しかったり、居場所がなかったりする当事者が、手工芸やレクリエーションなどをしながら日中を過ごす地域活動支援センターの元利用者4人が立ち上げたグループです。4人それぞれ診断名も症状も違いますが、どんな症状があっても誰にも気兼ねなく安心して過ごせる時間を共有したいと集まったのがきっかけです。

 その後、設立メンバー以外の人たちでも集まれるように、毎週火曜日に「ココカラサロン」という居場所を開いたり、当事者の求める福祉について意見交換して要望を行政に訴えたりする活動などを続けてきました。

 現在、メンバーが18人になり、内藤さんは新たな展開として「ピア(仲間)サポート活動」に取り組み始めました。ピアサポートとは、同じ障害や悩みのある人たちが互いの体験を語り合うことで共感したり、自分自身の考えを整理したりしていく活動です。内藤さんはピアサポートの魅力を、「マイナスと思われがちな障害をプラスにできる活動」と力を込めます。

 しかし、ピアサポートの充実には、当事者だけでなく健常者の協力も欠かせないと内藤さん。当事者だけでは活動が行き詰ることもあるそうで、運営会議には家族会の会員や専門職、大学教員などが実際にボランティアで参加しています。内藤さんは「人に頼ることも私たちの力になるんです。漫画をきっかけに私たちのことを知ってもらって、1人でも多くの人たちと頼り合える関係づくりができれば、きっと誰もが生きやすい社会になるんじゃないでしょうか」と話してくれました。
(2019年3月7日記)

 この漫画は配布することが出来ます。ご希望の方は、「新潟市精神障害者自助グループ ココカラ」のFacebook、またはホームページからお申し込みください。


お知らせ

 現在、第31回わかば基金の支援を希望するNPOやボランティアグループの申請を受け付けています。締め切りは3月29日(金曜日)必着です。
 ココカラの皆さんのように、「当事者の活動を充実させたい」、「地域の人々とのつながりを深めたい」などお考えのグループの皆さん、ご応募お待ちしております。

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