認知症になっても安心して暮らせるまちづくりの取り組みを募集して、表彰する「認知症とともに生きるまち大賞」。このほど選考委員会が開かれ、今年の表彰団体が決まりました。

応募期間

2024年4月1日~8月31日

応募数

20件

選考委員

永田久美子(認知症介護研究・研修東京センター研究部長)
鎌田松代(認知症の人と家族の会 代表理事)
丹野智文(おれんじドア代表、認知症当事者)
町永俊雄(福祉ジャーナリスト)
ほか

受賞団体

<本賞>

 

 

 

 


<選考委員特別賞>

本賞

一人の認知症当事者の声から広がる地域活動
まんまる農園(北海道・北見市)

若年性認知症当事者Sさんの「畑作業をやってみたい」という思いに、地域包括支援センターの職員が応えようと奮闘しました。2021年に、センターの敷地内にある畑を使って始まったこの農園活動は、次第に地域の住民や幼稚園、老人クラブ、JA職員らも活動に参加するようになります。彼らとともに、ジャガイモやトウモロコシを育て、日々の世話や収穫の喜びを共有することで、相互理解と支えあいの地域づくりを目指した取り組みです。
【選考委員講評】
一人の認知症当事者の声に応えようと、この活動はまずは小さく始まりました。そして、地域包括支援センターの農園を舞台に、地域の幼稚園児や高齢者などいろいろな人につながっていく様子は、まるでバトンリレーのようです。みんなの弾けるような笑顔が、まさにこの地域ならではの「共生社会」を体現しています。全てのまちに地域包括支援センターがあります。小さな声からともにつながり合い、自然体で広がっていくまちづくりの取り組みとして、全国に広がることを期待します。トップに戻る

夜でも安心して楽しく交流できる場
あざみ野オレンジバル(神奈川・横浜市)

「あざみ野オレンジバル」は、ある軽度認知障害の男性の「家族から24時間監視されて、晩酌も禁止されてしまった」という嘆きをきっかけに2019年に始まりました。横浜総合病院が企画立案、あざみ野商店会協同組合が協力をして、月に1度、認知症当事者や家族、医療・介護・福祉職、行政職など様々な立場の方が、駅前のそば屋に集まり、おいしい料理やお酒を楽しみながらにぎやかに交流する場がスタート。これまで、すでに50回以上続いています。認知症の当事者やその家族が、夜、気軽に出かけられ、集える場となっています。
【選考委員講評】
認知症の人だけの限定でないところがポイント。誰が参加してもよく、誰が認知症なのかもわからないけれども、そこには専門職や地域包括支援センターの人もいて安心して参加できている、という場づくりはとても参考になります。駅前なので誰でも気軽に立ち寄れ、食べたり飲んだり、しゃべったり、唄ったり・・・。よろいを脱いでみんながいっしょに楽しめる場所があることは、認知症の人や家族の人にとってどれだけ大きな安らぎと励みになっていることでしょう。この取り組みをヒントにした活動は、すでに他地域にも広がり始めていています。今後、それぞれのまちならではの「夜の楽しい集いの場」が広がってほしいな、と願います。トップに戻る

離れた病院と手作り「ギフト」で交流
Roles晴耕雨読舎 南平台(大阪・高槻市)

30坪の庭を活用した、「役割=Role」をキーワードにしたデイサービスです。ここでは、季節の花を植えたり、大根などの野菜作りをしたり、花を使ったフラワーアレンジメントや押し花づくりをしたりしています。これらの一部は、香川県にある「四国こどもとおとなの医療センター」に贈られ、不安を抱えている患者や、昼夜を問わず人命と向き合っている職員たちへの「ギフト」として、多くの人たちの心の癒しになっています。デイサービスに通う人たちも「誰かのためにやってあげられることがうれしい」と日々、ギフト作りに精を出しています。
【選考委員講評】
大阪と香川・・・。遠く離れた病院との交流に活動の広がりを感じます。施設の中、同じ地域の中、・・・だけでなく、この取り組みのように、出会いや支え合いを求めている遠く離れた地域とつながっていくことは、共生社会の実現に向けた1つの手掛かりになるのではないでしょうか。離れていても、ギフトを喜んでくれる人たちの姿を思い浮かべて創作活動を続けることは、当事者本人たちにとっても、大きな張り合いとなっていることでしょう。この活動をモデルに、他の地域でも、今まで以上に発想を広げて活動をデザインしていくことが期待できます。トップに戻る

過疎の地で、地域共生社会の進化・深化形を創り続ける
“ごちゃまぜ・えがお”プロジェクト(大分・佐伯市)

超高齢化と人口減少、人材不足などが深刻化するまちで、誰もが安心し、役割や生きがいを感じられる「ハートフルな地域づくり」を目標にした活動です。商店街の一角にある誰でも集える居場所「とんとんとん」と「とんとん食堂」、認知症カフェから進展した「ごちゃまぜカフェさいき」と「子育て支援室 来よ!来よ!」、空き家を活用し、暮らしづらさがある人、地域住民、移住者、多様な専門職、学生などが協働して活動する「ささえ“愛”ホーム」プロジェクトなどなど・・・。1つの活動にとどめず、多彩な活動を次々と展開してきました。在宅支援クリニックの医師が要になり、官民協働で取り組んでいます。
【選考委員講評】
認知症の人や暮らしづらさがある人たちが切実に求めていること・・・。それを放置せず、1つひとつ、当事者と地域の多様な人たちが知恵と力を寄せ合いながら、実現に向かって突き進んでいる点にパワーを感じます。空き家を社会資源としてとらえてスタートさせたシェアハウスプロジェクト「ささえ“愛”ホーム」では、「お出かけ・入浴支援」「ちょこっとお泊り」「帰省した家族が施設入所中の親と一緒に寝泊まり」「台風時に独居の高齢者のお泊り」などを実現させています。既存制度では対応しきれていない活動であり、地域全体の存続のための希望となる、他地域も学ぶべきことが詰まった取り組みと言えるでしょう。トップに戻る

「安心して認知症になれるまち」をめざして
認知症フレンドリーな錦江町づくりプロジェクト(鹿児島・錦江町)

「安心して認知症になれるまち」を目指し、「普及啓発」「認知症カフェ」「まちづくり」を三本柱にした取り組みです。「まちづくり」では、認知症関連の本をトランクに詰め、病院や郵便局など人の集まるところを巡回する「トランクライブラリー」を実施。また、当事者の声を出発点として、無人販売所などを活用した「交流拠点づくり」や、「外出手段の開発」「多世代交流」といった6つのテーマを設定して活動していく「Our Project」などにも取り組んでいます。当事者、住民、企業、学生、専門職などが一体となり、町をあげての取り組みとして進めています。
【選考委員講評】
高い高齢化率や過疎という厳しい状況の中で、町行政がイニシアチブを発揮しながら、年々、一歩一歩活動を拡充させています。何をするにも当事者の声を聴き、当事者たちが選んだ内容やネーミングなどを採用しながら活動を進めることで、当事者の社会参画や当事者への理解が自然と地域に広がっている点も見逃せません。先進自治体を視察したり、全国で活躍している当事者や事業者とつながったりしながら、それらの人々の知恵や工夫を積極的に取り入れ、町の将来を見据えたユニークな取り組みを進めています。全国の自治体で、その応用が期待されます。
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選考委員特別賞

能登半島地震被災地の人々とともに
「輪島・ごちゃまるクリニック」「石川県地域密着ケア連絡協議会」

2024年1月1日の大地震、9月の大雨と、2度にわたって甚大な被害を受けた能登半島。それでも、高齢者や子どもたちとともに地域医療、地域活動に取り組んできた人々が、葛藤しながらも被災から立ち上がろうとしています。ここには、「認知症とともに生きるまち大賞」が目指してきた「当事者たちの思いを語り合いながら、ぶつけ合いながら、共生の地域を再び作り上げよう」とする、進行形のまちづくりがあります。

—-奥能登の「ごちゃまるクリニック」
震災前から、医療だけでなく、介護や福祉と一体となり、高齢者、子どもたちなど、誰もが安心できる居場所として機能してきました。そして、1月の震災以降、「創造的復興」とする地域主体のまちづくりの議論を起こしていきます。地域の「いとなみとなりわい」を取り戻したいという思いは、能登半島の夏の祭り“キリコ祭り”復活という形で結実しました。

—-「石川県地域密着ケア連絡協議会」
発災直後から能登入りし、避難所やグループホームなどで、被災者の生命と生活を守る活動を粘り強く続けています。居場所を失った認知症の人たちを、県内のグループホームが受け入れるシステムづくりや、本人たちの声を聴きながら地域の人たちや医療・介護職とともに地域ぐるみで取り組む活動。いずれ能登に帰ることを望む当事者本人や家族らの願いが実現するよう、行政などへの働きかけも続けています。

能登半島では、この2つの活動に限らず、復興に向けた地域づくりの活動がいくつも行われています。「認知症とともに生きるまち大賞」選考委員の総意により、地震と豪雨の二重被災の困難とつらさの中にいる、能登半島の人々と「ともに生きる、ともにある」ために、ここに「認知症とともに生きるまち大賞」選考委員特別賞を贈るものです。

これまでの受賞団体

これまでの受賞団体は、「認知症とともに生きるまち大賞」特設ページでご確認いただけます。

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