今回ご紹介するのは、澤田 真一(さわだ・しんいち)さんの作品です。
キュレーターは小林 瑞恵さん(社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター)です。

キュレーターより 《小林 瑞恵さん》

澤田 真一 さわだ・しんいち
1982年生まれ

2013年、澤田の作品は、日本だけではなく、世界の人々を驚かせた。
縄文土器をほうふつとさせながらも、それまでに誰もみたこともないトゲトゲをまとった独創的な澤田の陶器作品が、120年以上の歴史を誇る世界三大美術祭典と評される第55回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展に招へい展示されたのだ。世界の名だたるアーティストが目指す最高峰でもあるこの国際舞台に無名だった澤田が選ばれたことは、今でも語り継がれる歴史的な快挙である。

澤田が粘土による創作を始めたのは通所施設に通い始めた2000年頃からである。創作は春から秋の期間に週2~3回、山奥にある窯場(アトリエ)で行われていた。澤田は、作品の完成形が見えているかのように、止まることも迷うこともなく、細く長い指で淡々とトゲを一つ一つ付けていく。一つの作品は、大きいもので3~4日で仕上げてしまうという。モチーフには鬼、龍、にわとり、ふくろう、たぬき、カエル、招き猫、お面、壷などがある。

初期の頃の作品は、トゲが鋭く、また形も大きく、配置もバラバラであった。創作が進むにつれて、澤田の作品も変化していき、トゲは段々と密集し、規則性をもって整列するようになっていった。澤田がなぜここまでトゲにこだわるのかはわからないが、澤田の創作を長年見つめてきた職員によると、創作の時間を共にする仲間の作品に影響され、次第に今のような独自の制作へと転換していったそうだ。

この春、東京にある中野区役所がリニューアルし、1階にある「ナカノのナカニワ」では、澤田の作品が1点、常設展示されている。


プロフィール

小林 瑞恵(こばやし・みずえ)
社会福祉法人愛成会 アートディレクター、キュレーター。アール・ブリュット関連の展覧会をフランスやイギリス、オランダ等の海外や日本国内にて数多く手がける。2004年に障害の有無、年齢などに関わらず誰でも参加できる創作活動の場 「アトリエpangaea」(東京都)を立ち上げる。近年はアートや音楽、ダンスも入れたインクルーシブなワークショップを企画、開催している。2010年から東京・中野区で毎年開催されている「NAKANO街中まるごと美術館」の立ち上げから、現在も企画・運営等に携わる。


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