山下聖子/小林泰寛 「部屋」と「外」HEARTS & ARTS VOL.84
公開日:2023年12月25日
今回ご紹介するのは、障害福祉サービス事業所「JOY俱楽部・アトリエブラヴォ」(福岡市)に在籍する山下 聖子(やました・せいこ)さんと小林 泰寛(こばやし・やすひろ)さんの作品です。
キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田 文登さんです。
キュレーターより 《松田 文登さん》
「部屋」と「外」
山下聖子/小林泰寛
福岡県の「JOY俱楽部 アート部門 アトリエブラヴォ」に在籍する、山下 聖子さんと小林 泰寛さんの二人展が、ヘラルボニーが岩手に唯一の常設ギャラリーとして拠を構える「HERALBONY GALLERY」のホワイトキューブの空間をやさしく彩っている。
山下 聖子さんは、部屋という空間をテーマに、さまざまなテイストの部屋とその空間を彩るインテリアを細かく描いている。スッキリとした迷いのない線と、均一に塗られた色面が特徴的で、優しい画面の中にも繊細さと複雑さが併さり、作家独自の空間を拡張している。
小林 泰寛さんは、仏像や人物、動物や静物画など、その時々の興味関心によってモチーフはさまざまに変化しながら数多くの作品を制作してきた。最近のテーマは世界の景色や街並み。赤と緑を同じ色に感じる小林さんが描く画面は、統一感を感じさせる配色と、無数の色の階調の美しさが独特の世界観を構築している。
展示タイトル「部屋と外」の通り、部屋という自分だけの空間を描く山下さんと、広大な外の世界を描く小林さん。一見すると対になるテーマだが「絵を描くこと」に傾倒する2人に共通することは、絵画に落ち着いた自分たちの世界をうつし出しているということ。一度彼らのフィルターを通すと、時を止めたような静寂を感じる美しい世界が再表現されていく。絵画を通して、2人の見つめている穏やかな世界と、それらが共鳴し合う展示空間をぜひ会場で体験いただきたい。
「部屋と外」展
会期:2023年11月3日(金曜・祝日)– 2024年1月28日(日曜)
開廊日:土曜、日曜、祝日
時間:11時〜17時
会場:HERALBONY GALLERY
住所:〒020-0026 岩手県盛岡市開運橋通2-38 @HOMEDELUXビル4F
プロフィール
山下 聖子 Seiko Yamashita
1987年生まれ。スッキリとした迷いのない線を引き、洗練されたフォルムの下絵が完成したら、次は薄紙を貼った様に一律の厚さで何度も繰り返し塗込む神業。「時間が掛かっちゃいます。」と本人は少し不満気。リビングや陶磁器、猫などをモチーフに、ピンと張りつめた、透き通るような空間を描き出す。その絵の具にちょうどいい水の量がある、と彼女の仕事は言っている。
小林 泰寛 Yasuhiro Kobayashi
1986年生まれ。またの名を巨匠。ただ無心に、ただ几帳面に、好きな世界遺産や広大な風景の写真を描く。無数の緑色がとくに美しい。赤と緑を同じ色に感じるので、青磁の壷をやさしいピンクに描く。仏像の名前はどれもピタリと言い当て、道端にお地蔵様を見つけては立ち止まり、拝礼。最近の好みは野菜や昆虫、世界の風景やその中に人物が配された絵。薄緑色の顔の人物は、こちらを見透かすように真面目顔。
プロフィール
松田 文登(まつだ・ふみと)
株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコンで被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネージメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。
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