【わかばなかま】高齢者の声を聴き、気持ちに寄り添う 〜傾聴ボランティア「心の倉庫」〜
公開日:2022年12月1日
NHK HEARTSには、地域に根ざした福祉活動をしているグループに支援金やリサイクルパソコンを贈呈して、その活動を応援する「わかば基金」という支援事業があります。
その活動をリポートするのが「わかばなかま」。
今回は、大阪・池田市で高齢者施設に暮らす人々の声を聴き、気持ちに寄り添う活動を行っている傾聴ボランティア「心の倉庫」をご紹介します。
「わかば基金」は、地域に根ざした福祉活動を進めているグループを支援し、その活動を支えています。申請受け付けは毎年2月~3月頃に行っています。詳しくはこちらをご覧ください。
相手に寄り添う傾聴
皆さん、「傾聴」という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
傾聴とは相手の話を聴くこと。心得として、話をさえぎらず、否定せず、すべてを肯定的に受け止めていくことが挙げられます。この傾聴を意識した「傾聴活動」は、高齢者施設や病院、災害時の仮設住宅や復興住宅などで行われることが多く、他者と話す機会をなかなか持てない人が、何気ない日常のことを話したり、不安や悩みを打ち明けたりできるきっかけとなっています。
そのような活動を2016年から大阪・池田市で展開しているのが、傾聴ボランティア「心の倉庫」の皆さんです。20人ほどのメンバーが、市内の高齢者施設を訪問して、利用者の皆さんに寄り添い続けてきました。メンバーをまとめるのは代表を務める竹内 詔夫さん。竹内さんは活動の意義をこう話します。
「傾聴活動は利用者の皆さんが心を穏やかにして、生き生きと過ごせるきっかけの1つだと思っています。1つの施設に月に1~2度ほどの訪問で、1人1時間ほどの会話ではあるのですが、会ううちに信頼関係が築かれていくんです。そうしていくと、だんだん安心していろんなことを話されるようになって、次に会うことを楽しみにしてくださるようになるんです」
訪問からリモートへ
「心の倉庫」の傾聴活動は評判で、市内の高齢者施設7か所ほどで受け入れられるほどになっていきました。ところが、傾聴活動で知り合った施設利用者の皆さんとの信頼関係も深まっていた2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、施設では面会禁止の措置が・・・。「心の倉庫」も活動を休止せざるを得なくなったのです。面会禁止は利用者の皆さんにとってもストレスのたまる日々。外出もままならず、部屋にこもりがちになってしまい、会話も減る一方で、気持ちも塞ぎがちになってしまいました。
先の見えない中、活動休止が続くこと1年。状況を少しでも変えたいと動き出す人が現れます。高齢者施設「ほほえみの園」のコーディネーター・西井 美月さんです。西井さんはリモートで傾聴ができないかと竹内さんに相談。竹内さんも状況を打開したいと考えていたこともあり、リモート傾聴に取り組むことを決意します。そのためにパソコンが必要となり、「わかば基金」に申請し、2台のパソコンをそろえることができました。1台はグループで持ち、もう1台を施設に貸し出すことで、リモートでの傾聴をいつでも開始できる準備を整えられたのです。
新たな傾聴のひとつとして
こうして始まったリモートでの傾聴ですが、初めは戸惑いの連続だったそうです。利用者の皆さんがパソコンの画面越しの会話に慣れずに黙ってしまう場面が続出。対面の傾聴であれば、沈黙も相手の表現として受け止められます。一緒の空間にいることで表情やしぐさなど、会話以外からも相手の気持ちを推し量ることができるからです。しかし画面越しの場合は、どうしても会話頼みになってしまうため、黙っているのが画面に慣れていないのか、考えを巡らせているのか、話したくないのか、などをうかがい知ることが難しく、「傾聴」の掟に反して、話しかけることが多くなってしまったそうです。
本来の傾聴活動とは違う部分も多い「リモート傾聴」ですが、今では利用者の皆さんも画面越しの会話を楽しんでいます。「ほほえみの園」の西井さんは、リモートでも傾聴を再開できて本当に良かったと言います。「利用者さんは毎回楽しみにしているんです。まだまだ外に出ることが少なくて、部屋で一人過ごすことが多い日々に、ボランティアの皆さんと話す機会があることが、どんなに大切なことか。その証拠に、話しているとき、利用者の皆さんは普段にも増して顔をほころばせます。話すことで心の健康を保つことができているんだと思うんです」
竹内さんもリモートでの傾聴を、今後の活動のひとつとして期待を寄せます。
「本音を言えば、早く訪問の傾聴を再開したいです。でも、コロナだけでなく、インフルエンザの流行期など訪問できないこともあります。そのようなときに、リモート形式は、施設で暮らす皆さんにとっても外部の人と話す有効なツールとなります。訪問できない状況になっても、リモートがあることは私たちにとっても心強い。人は話すことで生活のメリハリがつきますし、気晴らしもできます。様々な方法で、私たちがその一助になれたらと思っています」
傾聴ボランティア「心の倉庫」では、傾聴について知る公開講座などを開催するなど、ボランティアの養成にも力を入れています。詳しくは池田市社会福祉協議会のホームページからご確認ください。(※NHK HEARTSのサイトを離れます)
(このリポートは2022年12月に作成しました。)