福祉ビデオライブラリー『ひきこもりからの回復』(教材ビデオDVD全3巻)の完成を記念して、5月21日(土曜日)にNHKハートフォーラムを開催しました。「《ひきこもり》というテーマについて、オープンな雰囲気で語り合ってほしい」という狙いから、日本の若者文化の中心地・渋谷のど真ん中を会場に選びました。
嬉しいことに当日は満員御礼。参加者を対象としたアンケートによると「ひきこもりの当事者・経験者の割合」が34%、「ご家族」が24%とこのテーマへの関心の高さ、切実さを感じました。

 

見過ごされてきた”女性のひきこもり”

第1部は講演形式で「見過ごされてきた”女性のひきこもり”」、「ひきこもりの”高年齢化”と向き合う」という2つのテーマを福祉ビデオの映像を交えて、パネリストのクロストークでお伝えしました。

【パネリスト】
斎藤 環さん(精神科医 / 筑波大学・教授)
菊池 まゆみさん(藤里町社会福祉協議会・会長)
林 恭子さん(「ひきこもり女子会」主催 / 不登校・ひきこもりの経験者)
川初 真吾さん(ひきこもりフューチャーセッション[庵 -IORI-] ディレクター)
【MC】
サヘル・ローズさん(女優・タレント)
町永俊雄さん(福祉ジャーナリスト・元NHKアナウンサー)

近年関心が高まっている「女性のひきこもり」について、経験者の林 恭子さんが《母親との関係》がひきこもりに及ぼした影響や信頼できる医師との対話によって回復するまでを語りました。斎藤環さんは精神科医の立場から「父と息子の関係」に比べて、「母と娘の関係」を乗り越えて自立することの難しさについて解説しました。

 

ひきこもりの“高年齢化”と向き合う

「ひきこもりの”高年齢化”」については、町ぐるみの支援で全国から注目を集める秋田県藤里町の菊池 まゆみさんが語りました。藤里町では10年前からひきこもりの支援を行っています。支援を始めるにあたってまず行ったのは、地道な実態調査でした。調査からは、人口3500人の町でなんと113人もの人がひきこもっていることが分かりました。40歳以上の人が全体の「4割」に及び、ひきこもりの”高年齢化”の実態も浮きぼりになりました。菊池さんは「ひきこもっている人たちが外へ出てきたい」と思える場を作ろうと、2010年に就労支援施設『こみっと』を設立しました。今年で8年目になります。地道な支援の結果、現在は地元でひきこもっている人が少なくなったため、全国からひきこもりの人たちを募集して「田舎体験」や「就労体験」をしてもらっているそうです。

当事者発!『ひきこもり大学』オープンキャンパス@渋谷

第2部は、ちょっと変わった試みを行いました。ひきこもりの経験者が考えた『ひきこもり大学』を開催。『ひきこもり大学』は、ひきこもりの経験者や当事者が「先生」となって、参加者にひきこもっていた中で得た”経験”や”知恵”を講義するというもの。講義テーマも、下記のようにユニークです! 講義の途中には、参加者同士が《対話》をする時間が設けられ、盛り上がりました。

★「人間不信学部トラウマ学科」先生:トラさん、乃浬子さん
★「人間関係学部人助けのワナ学科」先生:宇野 佑美子さん

 

ひきこもり大学「先生」へのQ&Aコーナー

ひきこもり大学では、会場参加者から各先生への質問を付箋に書いて渡し、回答してもらいました。時間の関係上、フォーラムの当日に回答しきれなかったQ&Aの一部をこのホームページでご紹介します。

【乃浬子先生へのQ&A】

Q.自分に似合う服の選び方について、乃浬子先生の「正解はなくて、可能性は無限大である」という言葉を聞き、外出時に憂うつだった服選びの考え方を変えてみようと思いました。お金をかけないでもできるおしゃれを教えて下さい。

A.お洋服選びの考え方が変わるきっかけになれてとても嬉しいです。
私も心掛けているお金をかけないオシャレのポイントは まず自分に似合うものを知ること。自分の個性を客観すると創意工夫が出来るので、あなたに似合うオシャレな服が量販店や古着屋さんなどでも見つけられるようになってきます。まずはゆったりと深呼吸して「私はオシャレをしてもいいんだ!」という気持ちを育んでいきましょう。きっとあなたをステキに見せてくれる洋服たちに出逢えますよ。

【宇野先生へのQ&A】

Q.近所のひきこもりの人にどう接したらいいですか?
ひきこもりの人に「家事」を手伝ってもらことで自信を持たせることについてどう思いますか?

A.家事を手伝わせる案はとてもよいことだと思います。私の知り合いに、そうして自尊心を回復させてまた外に出られるようになった人もいます。しかし人間は千差万別であることをどうか忘れないでいただければと思います。何らかの理由で「そもそも会話が成立しない」等の難しいケースも中にはあります。「こうすればこうなるはずだ 」と結果に期待しすぎないことが、自分も相手もこれ以上傷つけずに済むコツかもしれません。
《ひきこもった理由》、《ひきこもり続ける理由》は人それぞれですし、私は専門家でもないので「ひきこもりの人にこうするべき」というのは、私の方からは明言しないことにします。
ただ私の体験をお話しするなら、私は「道で挨拶をした時に笑顔で返してもらえたこと」がとても嬉しかったです。私が一人悲しい気持ちで道を歩いていた時、あるお婆さんとすれ違い、「こんにちは」と挨拶をしました。そのお婆さんは私に「寒いですねー」 と笑顔で返して下さいました。「それだけ?」と思うかもしれませんが、私には本当に嬉しい出来事で「 外に出て良かった。優しい人に会えて幸せだ…」と、その日の残りをとても幸せな気分で過ごすことができました。今も思い出すと幸せな気持ちになります。
知り合いのひきこもりに外に出た時ちょっとしたアクシデントで人に舌打ちされたり、「お前がいると気持ち悪いんだよ!」と言われたりして、ますます傷ついてしまった方がいます。失礼があったら礼儀正しく謝る、笑顔で接する、声をかけられたら応じる…。一見当たり前の「その人を人として接する」ということをどうかおろそかにしないでいただければと思います。「こうしようこうしよう」と不自然に優しく接せられても、“される側”は「気を遣わせてるな…」 と重荷に感じることがあります。
当たり前のことをまず皆さんが失わずにいて下さるなら、心ある人達はそれを糧に十分生きていけると私は思います。どうもありがとうございました。


福祉ビデオライブラリー『ひきこもりからの回復』の貸出しについて

フォーラムで使用した福祉ビデオライブラリー『ひきこもりからの回復』(DVD全3巻)の無償貸し出しについては、下記のサイトをご覧ください。 https://www.npwo.or.jp/video/3454

開催リンク

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