2008年5月24日
フォーラム「認知症の人にゆたかな時間を 〜日常生活の工夫と美術活動〜」を実施しました。
NHK認知症キャンペーンの一環として、5月24日(土曜日)、東京の新宿明治安田生命ホールで、NHKハート・フォーラム「認知症の人にゆたかな時間を〜日常生活の工夫と美術活動〜」を実施しました。
講演会を主催したのは、認知症の人と家族の会東京都支部、NHK厚生文化事業団、NHKです。家族の会東京都支部の公開講座も兼ねての実施で、会場には、認知症の人のご家族や医療・福祉の専門職など、340人が参加しました。
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第一部 生活をゆたかにするためのサポート
〜生活指導・心理社会的治療法・アート〜
講師は、国立精神・神経センター武蔵病院元副院長の宇野 正威さんです。
宇野さんはまず、認知症と診断された後、病気の進行を緩やかにするために日常生活をどのように送ったらよいか話しました。大切なのは、身体運動を日常生活の中に取り入れることと、
- 食事の量と質に気をつけること
- 知的な活動を積極的にすること
だということです。
さらに、認知症の人の生活の質を高めるために、デイサービスや介護福祉施設などで実施すると良い方法として、
- 行動療法
- 回想法
- 音楽療法
- 書道
- 美術療法
について説明しました。
宇野さんの勤めるクリニックでは、実際に週に一回、認知症の方の精神活動を高めるアプローチとして、「臨床美術」(美術活動)を行っています。仲間と交流しながら、本人の気持ちを絵や立体に自由に表現してもらうことで、認知機能の維持や生活の質を高めることに役立っている、と報告しました。
宇野さんは、「認知症の方たちが、地域で積極的な知的活動を行う場所というのは、残念ながら非常に少ないです。認知症の人たちがそれぞれにあった知的活動を楽しめる場が、地域にできることが必要です」と語って講演をしめくくりました。
第二部 認知症の人も楽しめる美術活動
〜「臨床美術」の方法〜
第二部では、臨床美術の具体的な方法について、日本臨床美術協会専任講師の蜂谷 和郎さんが講演しました。
「臨床美術」は、誰もが美術活動を楽しめるよう、実物をそっくりに描く力を求めるのではなく、対象物を「見る」「触る」「嗅ぐ」「聴く」「味わう」という五感で感じながら絵を描くと説明しました。「量感画」と言っているそうです。
例えば、りんごを描く時、臨床美術では、次のようにします。
臨床美術では、認知症の人も美術を楽しめるよう、この他にもさまざまな方法を開発しています。 蜂谷さんは、「描いていく過程で大切なのは、絵を完成させることではなく、本人が制作過程をいかに楽しみ、自己表現をどれだけできるかということです。臨床美術を経験することで、本人の意欲が向上し、表情が明るく豊かになっていく」と話しました。
抄録
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出演者
講師:宇野 正威 (国立精神・神経センター武蔵病院元副院長、吉岡リハビリテーションクリニック院長)
1936年生まれ。東京大学医学部卒。同大学精神医学教室、東京都精神医学総合研究所を経て、国立精神・神経センター武蔵病院副院長。2001年、退官。吉岡リハビリテーションクリニック院長となり、現在に至る。日本老年精神医学会評議員。日本臨床美術協会副理事長。
講師:蜂谷和郎(日本臨床美術協会 専任講師)
1958年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒。浦和造形研究所子供造形教室講師のかたわらモザイク壁画制作に携わる。1994年、芸術造形研究所専任講師となり、現在は、同研究所教育事業部部長。彫刻家。日本臨床美術協会専任講師。法政大学兼任講師。
主催
NHK厚生文化事業団、NHK、(社)認知症の人と家族の会東京都支部