2016年1月28日
ハートカフェ「今こそ知ってほしい!摂食障害」を開催しました
お茶を片手にさまざまな福祉について学ぶ「ハートカフェ@渋谷」。
2016年1月は「今こそ知ってほしい!摂食障害」をテーマに開催しました。
いま摂食障害にお悩みの方や、そのご家族を中心に、教育関係・福祉関係の方など、毎回満席のお申込みをいただきました。
第1回(1月7日)摂食障害、最新情報まるごと教えます
講師:鈴木眞理さん(政策研究大学院大学教授、医学博士)
初回は、ハートカフェで過去最多の63人の方が集まりました。
摂食障害は「人生障害」という鈴木眞理さん。拒食や過食といった症状は、「普段の生活でストレスがかかっていることに気付かず、うまく対処できなくなったときに現れる」といいます。
また拒食について「ファッション性の追求でやせているのでは」というありがちな誤解を指摘し、「本人は極度にやせることで、辛いことを考える余裕がなくなったり、人から心配されるといった『いいこと』のためにやせている」のであり、「やせていなかったら自殺したかもしれない」という患者の声もあった程だと話しました。
講演後は、「『いいこと』を無くしたくないので治りたくないが、どうすればよいか」という本人からの声や、「摂食障害を持つ子への接し方」など20近く寄せられた質問に対し、全てお答えいただきました。
「無理に治らなくても、自分の社会生活に支障が出ないようにできれば100点、酔い潰れて路上で寝ているサラリーマンよりましだって思ってください」などユーモアを交えて回答し、会場から笑いがこぼれる場面も。
第2回(1月14日)摂食障害からの「回復」・「成長」とは?〜経験者の声〜
講師:鶴田桃エさん(自助グループNABA代表)
第二回は、摂食障害本人の方を中心に45人が参加しました。
鶴田さんは10代半ばから過食が始まり、20代後半から摂食障害本人の会である「NABA」に参加。1994年に会の代表となり、東京都世田谷区を中心に活動しています。
摂食障害に悩むひとは自己評価が低く、「このままの自分ではいけない」という思いが強い傾向にあり、その生き方に限界がきたとき、症状が出るのだそうです。そうした無理な生き方が変わっていないと、症状がいったん無くなってもぶり返したり、他の問題に移行していくことがあるといいます。
「単に症状が無くなる『回復』を目指すのではなく、摂食障害があってもなくても、自分の感情を大事に、いまの自分をよしと思えるようになる『成長』を大事にしている」と語りました。
鶴田さんは「過食はとてもつらい一方で、食べている瞬間だけはホッとしたり、不安から解放される」など、経験者にしか分からない感覚を話し、会場の皆さんも頷きながら聞いていました。
Q&Aでは、鶴田さんから「私だけじゃなく、他の仲間の声も聞いてほしい」と会場にマイクが渡され、参加していた「NABA」メンバーをはじめ数名のご本人が、「仲間に助けを求められるようになった」ことなど、摂食障害を経験して「成長」したことを話しました。
第3回(1月21日)家族ができること〜摂食障害の子どもに寄り添う〜
講師:鈴木高男さん(家族会ポコ・ア・ポコ代表)
3回目の参加者は摂食障害の子どもを持つ家族を中心に41人。
講師の鈴木高男さんは約20年前に、娘の摂食障害をきっかけに家族会を立ち上げ、以来千葉市を中心に活動しています。当日は会場に質問を投げかけながら分かりやすく話しました。
家族の対応のコツは、段階ごとに「受け入れる」・「共感する」・「寄り添う」・「見守る」・「支える」・「ほめる」というキーワードがあるそうです。
特に「寄り添う」・「見守る」・「支える」については、子どもが一人で自転車に乗れるようになるまで、後ろで支えながら次第に離れ、見守っていくイメージだと教えてくれました。
また本人が自己評価を上げられるよう、行動による「結果」だけをほめるのではなく、行動に至った「考え方」や「気付き」をほめるのが良いと話しました。
講演のあとは質問に答え、鈴木さん自身の子どもとの関わりについて話したり、
家族がいない間に過食をする子どもを、責めてしまうという親の方に、「食べる前に一言、言ってもらうようにしては」と、抑止力となるルール作りを勧めました。
第4回(1月28日)経験者に聞こう〜悩みも希望も語ろう・分かち合おう〜
講師:高橋 直樹さん (自助グループNABAメンバー)
鶴田 桃エさん (自助グループNABA代表)
最終回は、摂食障害経験者の高橋さんからこれまでの経験を聞いた後、会場に集まった25人が悩みや疑問を話し合いました。
高橋さんは10代のころ、人間関係のストレスをきっかけに過食・嘔吐が始まったそうです。入院を経ていったんは体重が戻ったものの、根本的な心の問題は解決せず、「気づいたら症状がぶり返していた」といいます。その後自助グループにつながってから、同じ悩みを持つひととの交流を通し、次第に症状は治まっていったといいます。
これまでの経験を振り返り、「摂食障害は悪い面だけではない。風邪を引いて生活習慣の乱れに気づくように、自分の考え方の偏りや、常に自分の気持ちを抑えこむような無理のある生き方を、症状が教えてくれている。それに気づくことができれば、病気を経たことで前より生きやすくなる」と話しました。
後半は分かち合いの時間となり、就労の悩みや、親から子どもへの声のかけ方、親の疲弊についてなど、いま困っていることを共有しました。
鶴田さんと高橋さんは「仕事と自己実現を両立しようとして苦しいなら、仕事はお金を稼ぐ手段と割り切るのも手」と新たな考え方を示したり、「子どもの対応に追われ限界が来る前に、まずは親自身が話し相手を見つけるなど、精神的に余裕を持って欲しい」と無理のない支援を呼びかけたりました。
また本人の立場の方から、自身が両親との関係を改善したきっかけをお話しいただくなど、異なる立場間の交流も見られました。
アンケートからは、
「講演を聴いている中で何度も、私自身を見た思いがしました。『多少の症状があっても自分を許していいじゃないか』という考え方には、完全に症状を無くすことばかり目指していた自分に気付かされました。」(50代・本人)
「高橋さんの言葉一つ一つに重みがあり、共感できたと同時に自分の考えがまとまってきました。内容が実践的で充実していました。」(20代・本人)
「鈴木高男さんによる親の立場からの体験談は説得力があり、とても参考になりました。」(40代・家族)
「自己肯定感の低さや罪悪感といった特徴は「摂食障害」の人に限るものではなく、当事者の方の気持ちが近くに感じられました。」(30代・福祉関係)
といった声をいただきました。