NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

NHK厚生文化事業団


現在位置:ホーム > このページ


活動リポート

2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年  

2016年2月 5日

「パラリンピアンがやってきた」を東京・伊豆大島で開催しました

障害者スポーツのトップアスリートが小学校や特別支援学校を訪問する「パラリンピアンがやってきた」、今回は伊豆大島へ。2月5日、東京都大島町立さくら小学校で開催しました。
今回のパラリンピアンは、陸上競技と自転車競技のメダリストで、ブラインドサッカー日本代表としても活躍した葭原 滋男(よしはら・しげお)選手です。
葭原選手が所属する東京のブラインドサッカーチーム「乃木坂ナイツ」の藤井 彬選手、瀧澤 大作監督も参加しました。

選手のプロフィール、ブラインドサッカーについてはこちらをご覧ください。

さくら小学校は大島の北側に位置する、木造のきれいな小学校です。当日は朝11時半から、3・4年生36人が選手たちと交流し、給食を一緒に食べました。
午後は約130人の全校児童が葭原選手の講演を聞いた後、再び3・4年生が集まってブラインドサッカーを体験しました。

見えない世界を解説

まず、校舎中央のホールに3,4年生が集まり、葭原選手の話を聞きました。
葭原選手は「目の前の人の輪郭がわかる位」という自身の目の見え方や、白い杖を使って生活していることなど、目の障害について語りました。またブラインドサッカーの歴史やルールについて、映像や用具を見せて説明しました。
目を閉じて周りの様子を想像する練習をすると、子どもたちは友達に触って距離感を確かめたり、窓の方を見て「すこし明かりが見える!」と見えない世界を実感しました。
その後、「試合でケガはしますか?」「食べものはどうやって食べますか?」など質問があがり、葭原選手は「見えない状態で思いっきり走るので、鼻を折ったりする」、「最初にどこに何があるか確認し、においをかいで口に入れてみる。わさびを思いっきり食べてしまったこともある」とざっくばらんに話し、子どもたちは興味津々の様子で聞いていました。

分けあいながら昼食

その後、ホールにテーブルを並べ、選手と監督も一緒に昼食を取りました。子どもたちは選手とおかずを交換したり、習いごとやスポーツなどで忙しい放課後について話したりしました。

全校児童の前で講演

昼休みのあとは、体育館で約130人の全校児童を前に講演を行いました。 葭原選手は、パラリンピックのメダルを取った時の映像を見せながら「障害があることを『かわいそう』と思うかもしれませんが、こうした大会に出て、いろんな人と関わるなど、目が見えないからこそできることを楽しんでいます。」と語りました。

目隠しをつけてドリブル・シュートに挑戦!

その後は3.4年生が体育館に残りブラインドサッカーを体験。 まず葭原選手が目隠しを着け、お手本を見せました。 ボールがわからなくならないよう小刻みにドリブルをするなどポイントを伝えながら、 スムーズにパスをしたり、ゴールに背を向けてかかとでシュートを決めたりと、アクロバティックなプレーを披露し、子どもたちを驚かせました。

続いて子どもたちも目隠しを着けて挑戦です。

まずは10メートル程離れた友達の方にパスやドリブルの練習。 「まっすぐまっすぐ!」と呼ぶ声や、中に入っている鈴の音を頼りにボールをけりました。

ドリブルに慣れた後は、シュートをする「フィールドプレイヤー」役と、コートの外からゴールの場所を教える「コーラー」役に分かれ、順番にドリブルシュートにチャレンジ!
ボールを持った子どもは「周りのようすをイメージするのが難しい」と苦戦しながらも、慎重にドリブルしたり、全力でシュートしたりと一生懸命プレーしました。ゴールネットが揺れると、見ていた友達も一緒に大喜びでした。
競技が終わり、葭原選手は「みんなの楽しそうな声が聞こえ、僕も非常に楽しかった。ぜひ休み時間にもやってみて」と話し、体験をしめくくりました。
担任の綿引先生は、「子どもたちにとって貴重な体験ができました。今回の学習を通して子どもたちには、困難にぶつかっても、諦めることなく工夫して乗り越えられるようになってもらいたいです」と振り返りました。

子どもたちのアンケートから

「頭の中で想像して、ドリブルとかシュートをしてすごい」(3年生・男子)
「死ぬと思うまでれんしゅうしたといっていて、すごくがんばったというきもちが伝わりました」(4年生・男子)
「今は目が見えなくて楽しいというくらい、障がいをいい方にもっていこうとするところがすごいと思いました」(4年生・女子)

葭原選手のあきらめない姿勢が、子どもたちに伝わったようです。

選手プロフィール

葭原 滋男選手

 

1962年生まれ、53歳。 東京都出身
1992年  バルセロナパラリンピック 走り高跳び(視覚障害者F10-11)4位
1996年  アトランタパラリンピック 走り高跳び銅メダル
2000年  シドニーパラリンピック自転車1kmタイムトライアル金メダル(世界記録)、 スプリント銀メダル
2004年  アテネパラリンピック 自転車スプリント銀メダル
2007年〜 ブラインドサッカー日本代表 「PK職人」と呼ばれる
2011年  ブラインドサッカーチーム「乃木坂ナイツ」創立 

藤井 彬選手

 

1984年生まれ、31歳。乃木坂ナイツ所属、ゴールキーパーを担当

瀧澤 大作監督

 

1969年生まれ、46歳。乃木坂ナイツ監督

ブラインドサッカーは、視覚障害者のために考案された5人制サッカー。 全盲のB1と弱視のB2、B3に分かれ、B1はゴールキーパー以外がアイマスクを着用してプレーする。ゴールキーパーは晴眼者か弱視者が担当する。 おおまかなルールはフットサルと同じだが、ボールは転がると音が出る特殊な鈴入りのボールを使用。全盲の選手たちもボールの位置や転がりがわかるようになっている。 危険な衝突を避けるため、フィールドプレーヤーはヘッドギアを着用し、ボールを持った相手に向かって行く時には、「ボイ!」と声を出さなければならない。 また、監督と「コーラー」とよばれるガイド役の2名がコートの外におり、声をだして状況を伝えたり指示を出したりする。  

活動リポート目次