NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

NHK厚生文化事業団


現在位置:ホーム > このページ


活動リポート

2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年  

2013年12月14日

フォーラム「発達障害と就労」を札幌で行いました

前日の大雪もやみ、澄みきった空が広がった12月14日の札幌市。NHKハートフォーラム「発達障害と就労--企業の思い・当事者の思い--」をサッポロファクトリーホールで、開催しました。発達障害のある人が就労する際、何が必要かを当事者・企業それぞれの立場から語っていただきました。
会場には発達障害のある当事者やそのご家族、支援関係者、企業関係者など様々な立場の432人の方が来場しました。

発達障害のある人の就労の現状は…

第一部は「発達障害と就労の現在」をテーマに、精神科医、障害者就労の専門家、実際に発達障害のある人を雇用している企業の方2人に話を伺いました。

初めに札幌市内で開業している精神科医・中野 育子さんから、発達障害とはどういう障害かを説明していただきました。たとえば発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害は、コミュニケーションが苦手だったり、こだわりが強かったりといった特性があります。ただ、そういった特性も、周囲の理解や対応によって軽減されるといいます。

続いて、NPO法人障がい者就業・雇用支援センター理事長の秦 政さんが障害者雇用の現状について話しました。障害者雇用義務のある企業の雇用数は、法定雇用率の上昇とともに、徐々に増えてきています。しかし、雇用義務のない小規模の会社などを含めた全体の数は、平成10年の調査(5年ごとの調査)をピークに減少しているといいます。これまでは雇用の中心は身体障害や知的障害のある人たちでしたが、法定雇用率が2.0%と上昇したことで今後、発達障害を含む精神障害のある人の雇用が、企業にとってますます重要になってくると語りました。

企業の取り組み

第一部後半は、実際に発達障害のある人を雇用している企業の方が登壇し、それぞれの取り組みを紹介しました。

東京・新宿に本社をおく製薬会社・サノフィ株式会社は2009年から、発達障害のある人の雇用をはじめました。社内にラ・メゾンビジネスサポートセンター(LMBC)という部署を立ち上げ、今は13人の発達障害のある人が働いています。LMBC事務長の尾上 昭隆さんが取り組みを紹介しました。

約3000人いる社員の名刺づくりや、コピー用紙の補充、郵便物の社内配達といった各部署の業務サポートを主に51の業務を引き受けて、4000万円の経費削減に寄与しているといいます。

一方、札幌市にあるNTTデータ北海道の人事総務部長・鶴田 潤さんは、同社で雇用した一人の社員の事例について話しました。

最初はNTTデータの特例子会社の面接に来たところ、鶴田さんがパソコンの腕を見込んで、NTTデータ北海道での採用を決めたといいます。
入社前に鶴田さんと本人と支援者の三者で話し合った結果、他の社員に障害について、スライドを使って話をする機会を設けました。それによって、社内の理解が進み、「業務の優先順位をつける」「指示は決まった人から出す」といったことを配慮することによって、本人にとって仕事のしやすい環境を作っているといいます。

当事者たちが体験を語る

第二部では、札幌市内で実際に働いている当事者3人が実体験を語りました。

高校卒業後、一時ひきこもっていたが、そこから抜け出し、現在はパン工房で職人として働く30代の男性。
趣味の粘土細工で個展を開くことを目標にしながら、物流関係の仕事に就いている20代の男性。
これまで仕事が長続きせず、様々な職業を経験してきた40代の女性は二児の母。数年前に診断を受け、今では英語塾を運営しています。

3人がこれまで職場でうまくいかなかった経験や、失敗や成功の中で学んだ自分なりの工夫について話しました。

希望をもてる内容だった

終了後、来場者からアンケートをとったところ、9割以上の方に満足していただきました。「企業の方の思いと当事者の思いを一つの場で聞ける機会はこれまでになく、大変有意義でした」「企業の理解が予想以上に進んでおり、障害のある人も貴重な戦力と考えていることが分かり、将来に希望をもてる内容であった」といった感想が寄せられました。  

活動リポート目次