2012年6月16日
フォーラム認知症新時代「いきいきと暮らすために」開催(新潟)
医療、介護、地域の支え合いにより、認知症の人を取り巻く、新しい時代が始まっています。そこで、認知症新時代と題し、各分野の専門家、家族の会の方をパネリストに迎え、6月16日、新潟市の新潟県民会館でフォーラムを実施いたしました。
認知症の人だけでなく、地域のみんなが支えあうことで、いきいきと暮らすための新たな社会の形を、会館に集まった約700人の皆さんと共に考えました。
出演者のプロフィールはこちらをご覧ください。
認知症フォーラムは各地で開催しています。
第一部「認知症の医療情報」
認知症とはどんな病気なのか、脳の中では何が起こっているのか、どのような検査を行い、診断をするのか、早期発見のメリットなどについて、宮永 和夫さんから話がありました。そして、新潟県西蒲原郡弥彦村のアルツハイマー病と診断された77歳の女性のVTRを映し、ご本人が意思表示できる早期の段階で治療、ケアの環境を整えたことにより、家に閉じこもることなく、日々を過ごすことができるようになった事例を紹介しました。
また、アルツハイマー型認知機能の低下の進行を遅らせる薬や、新しく認可された薬について、それぞれの特徴や副作用の説明がありました。宮永さんは「薬による認知症治療の選択肢が広がった」と話しました。
第二部「認知症ケア・なじみの地域で生きる」
本人の想いに寄り添うケア
妙高市のグループホームに住む89歳の女性が、数か月前から「職員にものを盗られた」と訴えることが多くなりました。グループホームのスタッフが話しあい、「パーソンセンタードケア」を行っている様子を映像で紹介しました。寄り添うように隣りに腰かけて、じっくりと話を聞きとり、また日常生活の作業を一緒に行うなどをして、その女性はスタッフを信頼するようになり、次第に落ち着いて行きました。
ケアの専門家として、佐々木 勝則さんは、「普段の本人の訴えていることばをそのまま記録している『介護記録』を見直し、スタッフの皆さんが認知症だからとあきらめずに、本人の訴えている気持ちや理由を探していったことが、BPSD(認知症の行動・心理症状)の改善につながり良かったと思います」と話しました。
佐々木さんの考える認知症ケアのポイントです。
- その人らしさを尊重する
- 否定せず、それでいいことを伝える
- 会話はゆっくりと、話題は一つ
- きちんと本人に伝え、本人のことばに耳をかたむける
- 生活の中で、力が発揮できるようにする
家族の会新潟県支部世話人の川原さん
川原 佳代子さんからはご自身の16年間の介護体験の話がありました。
「小さい子どもを抱えながら、認知症の舅と姑のふたりの在宅介護をしました。2年前に看取りましたが、今でも一緒に暮らしていた部屋で過ごしています。もっと気持ちを聞いてあげればよかったと思うと、涙が出ます。大変つらかったですが、今考えれば、本人の気持ちがわかります。介護しながらいろいろと勉強させてもらったと思います。今日のフォーラムで紹介された実例を、介護するご家族にぜひ話してあげたいと思います。そして、お互いに励ましあいながら、保険制度や地域の利用できる手立てを活用し、乗り切っていただきたいと思います」
出演者
宮永 和夫 (新潟県南魚沼医療福祉センター長 南魚沼市立ゆきぐに大和病院 院長)
群馬大学医学部卒業。国立群馬大学医学部精神科在籍時より認知症や高次脳機能障害
などの器質精神障害の臨床に関わる。早くから若年認知症家族会の設立に携わり、現在NPO法人若年認知症サポートセンター理事長。多職種の医療チームが本人と家族へ
の身体的精神的社会的支援を行うことで、地域の原点である全人的医療の実践を実現
したいと考えている。日本老年精神医学会専門医。
佐々木 勝則 (社会福祉法人桜井の里福祉会 理事)
特別養護老人ホームをはじめ、認知症グループホームなどを運営する法人事務局長。
介護サービスは、利用者本人のもの、本人が使いたいと思うものでなければならな
い。また、認知症の人や障害を持った人が、「社会で主体的な生活を送っていく」た
めの支援のあり方、地域づくり、介護サービスづくりを日々考えて活動している。社
会福祉士。介護支援専門員。認知症介護指導者。日本認知症グループホーム協会常務
理事・新潟県支部支部長。
川原 佳代子 (認知症の人と家族の会 新潟県支部世話人)
佐渡市出身。認知症の舅と姑、ふたりの在宅介護を16年間続け、2年前に看取る。当 時は認知症について理解する人が少なく、苦しい日々を送った。在宅介護をするため には、家族と地域の理解がとても大切だと考えている。介護経験を語ることで認知症 の正しい知識を知ってもらうよう講演活動などを行っている。