2012年9月 1日
NHKハートフォーラム「おもちゃと遊びが地域のみんなを元気にする」開催
9月1日(土曜日)、東京都国立市のくにたち市民芸術小ホールで、NHKハートフォーラム「おもちゃと遊びが地域のみんなを元気にする」を開催しました。
おもちゃは、単に子どもの遊び道具だと思いこんでいませんか?
おもちゃは人の心を解きほぐす力を秘めていて、子どもだけでなく、高齢者や障害者とのコミュニケーション作りにも力を発揮します。
今回のフォーラムでは、「東京おもちゃ美術館」館長で、高齢者アクティビティ開発センター所長の多田 千尋さんに、高齢者施設や東日本大震災の被災地でのおもちゃを活用した事例や、おもちゃや遊びが人にもたらす効用についてお話しいただきました。
出演者のプロフィールはこちらをご覧ください。
講演:おもちゃと遊びが地域のみんなを元気にする
おもちゃはコミュニケーションのツール
多田さんが館長をつとめる「東京おもちゃ美術館」は、東京・四谷の廃校になった小学校の校舎を利用しています。地元住民の要請をうけ、2008年に中野から移転しました。
美術館のおもちゃは展示だけでなく実際に遊べるものが多くあります。来館者を案内したり、おもちゃの説明をするのはボランティアで、年配の方が多く活躍されています。遊び方を教えたり遊び相手をするうちに、来館者との“世代間交流”にもなっているのだそうです。
おもちゃと遊びの効用
おもちゃは子どものものというイメージがありますが、おもちゃが力を発揮する場は子育て以外にもあります。
精神病院に石の風車のオブジェやミニおもちゃ美術館を設けたところ地域住民が集まってくるようになって患者と住民が交流する機会が増えたという話や、アルツハイマーの男性がおもちゃの犬と過ごし始めたところ日中の活動量が増えて夜間の徘徊が減り、世話をする対象ができたことで生きる意欲を取り戻した話が紹介されました。
また、さまざまなおもちゃを老人ホームに持ち込んでその効用を検証しているそうで、適当に叩いても何となく琉球民謡のように聞こえるレとラの音階のない木琴の音に、手の挙がらない人が琉球民謡を踊り出したり、汽笛に似た木の笛の音色を聞いて、寡黙な人が昔を思い出して話したりしたという事例も紹介されました。
実際にその音色を聞きながらの事例紹介に、参加者からは驚きの声や笑いがあがっていました。
人がいてこそおもちゃはいきる
多田さんたちは、東日本大震災から約1か月後、多くの人やメーカーの協力で集まったおもちゃを持参して支援活動を始めました。活動の様子がVTRで紹介されました。
被災者が生活する避難所で活動することに最初はためらいがあったものの、夢中になって遊ぶ子、その様子を見て笑顔になるお母さん、サポートするはずが一緒になって遊ぶ大人の様子を見て、人間には、遊びやおもちゃといった“心の栄養”も大切だということを実感したそうです。
多田さんは最後に、おもちゃはガラクタやまやかしの例えに使われたりもするけれど、第一級の文化財であり生活に根差した道具でもあること、ただ、おもちゃがあればいいのではなくてそこに人がいることが大切だと仰っていました。
プレイゾーン:みて、ふれて、遊べる移動おもちゃ美術館(おもちゃキャラバン)
当日、会場ロビーには、おもちゃ美術館からたくさんの木のおもちゃが届けられました。
これを楽しみに来場された親子も多かったようで、積み木を真剣に積み上げたり、いろんなおもちゃに挑戦する子、ボランティアさんとおしゃべりを楽しんだりと、終了時間まで多くの親子連れでにぎわっていました。
出演者
多田 千尋 ただ ちひろ (東京おもちゃ美術館館長、認定NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長、高齢者アクティビティ開発センター所長)
1961年東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、ロシア科学アカデミー就学前教育研究所、国立玩具博物館の研究生として、幼児教育・児童文化などを学ぶ。専門は児童文化論と高齢者福祉文化論、アクティビティケア論。早稲田大学では「福祉文化論」、お茶の水女子大学では「コミュニティ保育資源の活用」、明治大学では「NPOの経営学」などの教鞭をとる。その他、文部科学省中学校家庭科学習指導要領策定委員、TBSラジオ「子ども電話相談室」元回答者、文化庁芸術選奨平成15〜17年度推進審査委員、国際長寿センター「子どもと高齢者の統合ケア研究部会」研究委員、「環境福祉研究部会」研究委員、長寿社会文化協会「在宅子育て支援活動を通して高齢者の生きがいづくりモデル事業」研究員など。
主催
NHK、NHK学園、NHK厚生文化事業団、国立市
後援
国立市社会福祉協議会、NHK学園CSネットワーク
協力
東京おもちゃ美術館、認定NPO法人日本グッド・トイ委員会