2011年10月 1日
フォーラム「発達障害者の就労」を東京で開催しました
10月1日、東京都港区の発明会館ホールで、NHKハートフォーラム「発達障害者の就労--今できること--」を開催しました。
このフォーラムでは、発達障害者就労の最前線で活躍する3人の講師を迎え、就労を成功させるための見通しとノウハウを伝えました。
第1部「発達障害者就労の現状」
就労に必要な三つのスキル
宇都宮大学教授の梅永雄二さんは、発達障害のある人が働く上で必要なスキルとして「ハードスキル」「ソフトスキル」「ライフスキル」の三つをあげました。
ハードスキルとは、パソコンの技術など、仕事を進める上で直接必要となるスキルです。ソフトスキルとは、業務には直接関係しないものの、職場の人間関係を円滑に進める上で必要なコミュニケーション上のスキルです。発達障害のある人は、ハードスキルよりもソフトスキルの面で困難が多く、上司や同僚との関係が悪くなって退職してしまうケースが多いといいます。
「ライフスキル」とは「朝決まった時間に起きる」「身だしなみを整える」「洗濯・ゴミ出しをする」など、生きていく上での基本となるスキルのことです。発達障害のある人の場合、こういったスキルが確立していないことが多く、仕事を続けることが難しくなってしまう場合があります。梅永さんは学齢期からの家庭でのサポートが必要だと強調しました。
第2部:パネルディスカッション「今、求められること」
第2部では、現場の最前線で活躍する講師を招き、就労の現状を具体的に語っていただきました。
増加する就労相談
就労支援会社テスコ・プレミアムサーチの石井京子さんは、障害のある人を対象に履歴書作成や面接練習、企業への推薦状作成、採用面接への同行など、様々な支援を行っています。石井さんの会社には2008年のリーマンショック以来、発達障害のある人の相談が急増しているそうです。
「特に新卒で初めて社会に出る場合が難しい」と石井さんは言います。新卒の場合、働いた経験がないので、自分にあった職業がわからなかったり、働くイメージを持ちにくいことがあります。また学業と就職活動の両立しなければならないのも難しいと言います。
新卒で就労を成功させるためには、専門家の意見を積極的に採り入れること、早めに学校の単位を取って就職に専念できる態勢を作ることの二つが重要だと言います。
発達障害のある人を積極的に採用
成澤さんの所属する株式会社良品計画では2000年度から障害者雇用をスタートさせ、発達障害のある人を積極的に採用しています。これまで13人採用し、現在に至るまで退職した人は1人もいないそうです。
発達障害のある人たちは、全国に展開する小売店舗で働いています。仕事の内容は、商品の棚卸しや梱包、賞味期限のチェック、値札の貼り替えなど様々ですが、個々人の適性に合わせて仕事内容をきめ細かく設定しているそうです。
また、勤務形態についても、「一週間のうち3日の勤務」「1日に4時間の勤務」といったように、それぞれの人にあったペースを設定しています。
「発達障害のある人を採用するときどんなことを重視しているのでしょうか?」という質問に対し、成澤さんは「自社製品の好きな人」と答えました。長く働き続けてもらうためには、会社が好きで本当に働きたいと思っている人を採用する必要があると言います。あわせて、問題が生じたときに、どうやったらそれを解決できるのか、または誰に相談をすれば良いのかを、自分で考えられる人を採用したいと話されました。
今後の課題
フォーラムの終わりに、3人の講師から今後の課題を語ってもらいました。
石井さんは、雇用する側の企業の理解がさらに広がっていく必要があるとし、人事部だけでなく会社全体で雇用に取り組む姿勢が必要だと話しました。
成澤さんは、本人が自分の障害についてよく理解し、そこを周りがサポートしていく形を作り上げることが重要だと指摘しました。
最後に梅永さんが、発達障害のある人の状況は一人一人違っていることを改めて強調した上で、その人にあった支援の行うことが必要だと話しました。