2009年2月13日
認知症フォーラム「寄りそう心 支える社会」を開催しました
NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「寄りそう心 支える社会」を、2月13日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで開催しました。720人の来場者が認知症への理解を深めました。
出演は、遠藤 英俊さん(国立長寿医療センター 包括診療部長)、長谷川 侑香さん(医療法人社団博淳会 居宅介護支援事業所 イエナケアサプライ)、高橋 智さん(岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野准教授)、植松 多恵子さん(認知症の人と家族の会 千葉県支部代表)、司会は福祉ネットワークなどでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールはこちらをご覧ください
第一部 認知症にどう向き合えばよいのか
遠藤さんは、認知症の専門医として長年、臨床にあたりながら、認知症の予防プログラムの開発、研究に取り組んでいます。
「認知症は早期に発見し、早期に治療を開始すれば、病気の進行を効果的に抑えることができる」といいます。
そこで、知っておきたいのが、認知症の早期発見のポイントです。
- 何度も同じことを言ったり聞いたりする。
- 買い物でお金を払おうとしても、計算ができないことがある。
- 慣れた道で迷ってしまうことがある。
- 下着を替えずに、身だしなみを構わなくなる。
- 財布や通帳を盗まれた!と人を疑う。
年のせいにせずに、「おかしいな?」と思ったら、すぐに病院に行くことが大切です、と話しました。
また、認知症の症状の進行を抑える薬は現在1種類しかありませんが、「近々、2つの薬が認可される予定です」と、最新情報を説明しました。
第二部 認知症を地域で支えるために
長谷川さんは、ケアマネジャーとして、連日、認知症の人を介護している家庭を訪問し、医師と連携しながら患者さんの生活を支えています。
家族が在宅で介護する場合、一生懸命すぎて家族の方が倒れてしまう危険があると言います。「家族だけで抱え込まず、外部のサポートをうまく利用して精神的余裕を持つことで、初めて本人の意思を尊重した介護が出来ることが多い」と話しました。
高橋さんは、地域住民や小中学生に認知症を理解してもらうための講演活動を行うほか、かかりつけ医と介護職の連携に取り組むなど、認知症の人と家族を地域で支える活動に取り組んでいます。
高橋さんの地元、盛岡市では、市の医師会が早くから認知症の啓発に取り組み、かかりつけ医の認知症教育が進められています。「高齢になれば、認知症以外の病気を持つ方も多くなるので、患者さんを継続的に総合的に見る立場にあるかかりつけ医が認知症を診ていくことが望まれる」と話しました。
また、「地域住民に認知症を理解してもらうことで、ご近所の人と囲碁を打ったり茶飲み話をしたり、居場所が出来る。そのことが本人の支えになる」と話しました。
植松さんは、認知症の実母を6年間在宅で介護しました。特別養護老人ホームに入所してからも102歳で亡くなるまで見守りを続け、現在、その介護の経験を活かし、認知症の人と家族の会千葉県支部で認知症の人を介護する家族の相談業務や認知症の啓発活動に携わっています。
介護する家族の心得として、「徘徊など、周囲にとって意味不明な行動でも、本人にとっては必ず理由がある。否定したり責めたりせず、本人の立場になって考え、何がしたいのか気づくことが大事です」と話しました。
主催
NHK厚生文化事業団、NHKエンタープライズ
後援
厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
日本認知症学会、日本認知症ケア学会、日本老年精神医学会
協賛
エーザイ株式会社、ファイザー株式会社
今後も認知症フォーラムを開催します
NHK厚生文化事業団では、2009年度も、認知症に関するフォーラムを開催していきます。日時や場所が決まりましたら、このホームページ等でお知らせします。
出演者プロフィール
遠藤 英俊 (国立長寿医療センター 包括診療部長)
1982年、滋賀医科大学卒業。1987年、名古屋大学医学部大学院修了。その後、市立中津川総合病院内科部長、国立療養所中部病院内科医長などを経て、現在に至る。老年病専門医。 著者に『認知症・アルツハイマー病がよくわかる本』(主婦の友社)、『地域回想法ハンドブック』(河出書房新社)、『いつでもどこでも「回想法」』(ごま書房)など多数。
長谷川 侑香 (医療法人社団博淳会 居宅介護支援事業所 イエナ・ケアサプライ)
甲南女子大学文学部卒。認知症ケア専門士、認定ケアマネジャー、主任ケアマネジャー。これまで、東京都内や神奈川県内の在宅介護支援センター、介護付有料老人ホームなどでケアマネジャー、管理者、ケアマネジャー教育研修担当などに従事。日本認知症ケア学会、日本ケアマネジメント学会等での発表など幅広く活動。現在は、主として目黒区内で医療と連携した居宅介護支援事業に従事しつつ、世田谷区介護認定審査会委員、在宅認知症ケア連絡会世話人も務める。
高橋 智 (岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野 准教授)
岩手県盛岡市出身、岩手医科大学医学部卒業。2005年から現職。盛岡市医師会が育んできた「かかりつけ医主導の認知症地域連携」のノウハウを、岩手県全域に浸透することを目指している。地域の中学生や住民に身近な問題として認知症の理解を促す講演を行うほか、かかりつけ医とケアスタッフに、認知症の早期診断と周辺症状への早期対応を普及させるための講演活動を行っている。
植松 多恵子 (認知症の人と家族の会 千葉県支部代表)
20年間にわたり舅と姑を介護し、看取り終えた翌年(1992年)に、86歳の実母が認知症を発症した。6年間の実母の在宅介護ののち、特養に入所。102歳で他界するまで実母を見守り続けた。1995年に認知症の人と家族の会に入会。みずからの介護経験を生かし相談業務に携わる。現在、支部代表として、認知症の人の心の叫びや、介護の喜びを多くの人に伝えようと、相談や啓発活動を行っている。