2009年2月21日
うつ病と自殺予防についてのフォーラムを開きました(大阪)
NHK厚生文化事業団近畿支局では、NHK大阪放送局、社会福祉法人関西いのちの電話とともに、ハート・フォーラム「うつ病と自殺---あなたの大切な人のために何ができるか---」を、大阪市のドーンセンター(府立女性総合センター)で開催しました。うつ病とは何か、うつ病などの精神疾患と自殺との関係や自殺をする人の心理といった医学的な解説にはじまり、どうすれば自殺を防げるかという点について、身近に自殺をほのめかす人がいた場合の対応のしかた、医療機関や地域での取り組みなど、お二人の専門家からお話をうかがいました。
講師は、渡辺 洋一郎さん(社団法人大阪精神科診療所協会会長、医療法人渡辺クリニック院長)、河西 千秋さん(横浜市立大学医学部精神医学教室准教授、横浜自殺予防研究センター代表)。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください。
講演 うつ病と自殺予防
最初の講演者は、渡辺 洋一郎さんです。
内閣府「自殺対策推進会議」の委員も務める渡辺さんは、一般の精神的な落ち込みとの違い、脳内の神経伝達物質の働きの異常であること、早期発見のサインなど、うつ病の様々な特徴を解説。続けて、自殺の心理と原因について、うつ病になり正常な判断ができなくなった結果、本人の意思ではなく追い込まれての死であると、自殺は、うつ病による「病死」としてとらえることができると述べました。
そのうえで、うつ病など心の病にならないために必要なこととして、
- 自分を知る
- いつも全力疾走ではなく少し余裕を持つ
- すべてに完璧を求めない
- 一人でかかえこまない
- 身体のコンディションに注意する
- おかしいと思ったらr早めに医者を受信する
といった点をあげました。
講演 自殺に傾く人はどのような状態にあるのか、何が必要なのか
続いては、河西 千秋さんの講演です。
自殺予防に関する多くの著書を執筆する一方、各地で自殺予防の活動を支援している河西さんは、まず、年代別の自殺率や、動機、地域差など、日本における自殺の傾向を解説。自殺報道にふれることや手段が身近にあり簡単に手に入ること、本人や周囲に精神疾患への無理解や偏見があることなど、自殺をうながしてしまう様々な条件についても指摘しました。
そして、自殺を減らすための具体的取り組みとして、救命救急センターでの精神科カンファレンス、自殺未遂者への地域や専門家の介入、自殺予防教育など、各地での実践を紹介。自殺未遂者や家族、遺族を中心にすえて医療・教育・福祉・行政・消防や警察・マスメディアなどが連携することで、自殺に傾く人にいち早く気づき、対応ができるような環境を作ることが大切だと述べました。
この日の来場者は325人。たいへん重いテーマを掲げたフォーラムでしたが、お二人の講師の「いのちを失わせない」という思いのこもった熱いお話に、客席のみなさんも3時間半の講演が終わるまでじっと耳を傾け、あちらこちらで熱心にメモを取る姿が見られました。
主催・協力
主催:NHK厚生文化事業団、NHK大阪放送局、社会福祉法人 関西いのちの電話
協力:社会福祉法人 大阪府共同募金会
出演者プロフィール
渡辺 洋一郎
〔わたなべ よういちろう〕
略歴:川崎医科大学卒。昭和63年に渡辺クリニックを開設。その後、厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策のあり方検討委員会」委員、同「メンタルヘルス教育トレーナー養成研修カリキュラム作成委員会」委員などを歴任。
現在:社団法人大阪精神科診療所協会会長のほか NPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター理事、NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク理事、内閣府「自殺対策推進会議」委員などを務める。
河西 千秋
〔かわにし ちあき〕
略歴:横浜市立大学医学部病院臨床研修医、清心会藤沢病院、カロリンスカ研究所臨床薬理学客員研究員。
現在:横浜市立大学医学部精神医学教室准教授 横浜自殺予防研究センター代表、自殺対策のための戦略研究ACTION-J研究班事務局長、神奈川県精神医学会事務局長などを務める。