2008年9月13日
認知症フォーラム「あきらめない ---最新医療と社会の支え---」を開催しました(宮崎)
NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「あきらめない --最新医療と社会の支え--」を、9月13日、宮崎県の宮崎市民プラザ オルブライトホールで開催しました。444人の来場者が認知症への理解を深めました。
フォーラムに出演されたのは、二宮 嘉正さん(医療法人向洋会 協和病院院長)、関本 洋子さん(介護支援ホームれんげ荘 代表取締役)、河野 一郎さん(社団法人認知症の人と家族の会 宮崎県支部)、司会は教育テレビの番組「福祉ネットワーク」などでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください。
第一部 認知症の最新医療
医師の二宮さんは、まず、認知症の症状は中核症状と周辺症状の二種類がある、と説明しました。中核症状は、記憶障害など誰にでも起こる症状です。周辺症状は、妄想、徘徊、興奮など、人によって起こったり起こらなかったりする症状です。
次に、二宮さんは、認知症の治療薬の最新情報を話しました。アルツハイマー病(認知症の原因疾患のひとつ)の中核症状の進行を抑える薬については、「現在日本で使用できる薬は飲み薬だけですが、早ければ来年の後半には、皮膚に貼るタイプの薬が出てくる可能性があります。この薬であれば、消化器が弱く薬の服用によって胃腸障害を起こしていた方にも効果が期待できます」と話しました。また、周辺症状の治療にはさまざまな薬が使われることを説明し、「治療には漢方薬も使われます。抑肝散は眠気などの副作用がなく、イライラや焦燥感などの症状に効果的です」と話しました。
第ニ部 認知症の介護と地域の支え
介護支援ホーム「れんげ荘」で、日頃から認知症の方と接している関本さんは、認知症介護研究・研修センターが開発したセンター方式による介護の取り組みを通して、認知症ケアの大切なポイントが見えてきた、と言います。それは、次の3つポイントだそうです。
そして、介護している家族に向けて、「家族は余裕を持つことが大切。余裕を持って本人に愛情を注げば、それがプロには真似できない一番のケアになる」と伝えました。
また、「認知症の人は記憶力や考える力は低下するが、身体は健康。イキイキと身体を動かしたり、本人の出来る部分を伸ばして、これからの人生を堂々と笑顔で暮らしていけるようサポートしてあげて欲しい」と伝えました。
河野さんは、妻を自宅で介護して8年になります。「楽しい介護」をモットーに毎日を過ごしているそうですが、「最初から楽しい介護を実践できたわけではありません」と話しました。「はじめは、毎日、妻を急がせたり、言い争いをしたりで、大変苦労しました」と言います。その後、手探りで調べて行った専門病院で、「優しい介護をすれば、ご本人も落ちついてきますよ」と言われ、それから心を入れ替えて介護するようになったそうです。「今では、普通に妻と手をつないで歩いたり、毎年のように2人で海外旅行に行ったりしています。自分が怒りっぽくなっては駄目。こちらが落ち着いて介護すれば、妻は落ち着きを取り戻し、いつも笑顔でいてくれます」と語りました。
また、介護している家族に向けて、「家族の人は本当に大変だと思う。そんなときは「認知症の人と家族の会」に相談して欲しい。良い意味で力の抜きどころを教えます」と伝えました。
主催・後援・協賛
主催:NHK宮崎放送局、NHK厚生文化事業団、読売新聞社
後援:厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
協賛:株式会社ツムラ
今年度の開催予定
認知症フォーラム「あきらめない」は、今年度は全国5会場で開催します。
出演者プロフィール
二宮 嘉正 〔医療法人向洋会 協和病院院長〕
1981年宮崎大学医学部卒業。1992年より現職。病院に併設した認知症疾患センターや認知症治療病棟で家族や地域の専門職と連携をとりながら診断、治療に従事。医療の中で認知症の当事者にいかに安心感を与えるかが、最も大事なことだと考えている。
関本 洋子 〔(有)介護支援ホームれんげ荘 代表取締役〕
看護専門学校卒業後、社会保険病院および、介護老人保健施設に20年間勤務。その間、介護支援専門員免許を取得し、(有)介護支援ホームれんげ荘を開設。「誰でもおいでよ!」をキャッチフレーズに、「利用者本位」、「あきらめないチームケア」等を理想と考える。
河野 一郎 (社団法人認知症の人と家族の会 宮崎県支部)
認知症重度の妻を介護して8年。家族の会の介護の先輩や経験者にアドバイスをもらいながら、楽しく出来る介護を目指している。毎年ふたりで、国内や海外の旅行をしている。妻の笑顔が一番だと思っている。