本田 友和「ビーズ」 HEARTS & ARTS VOL.140
公開日:2026年3月13日

今回ご紹介するのは、「アトリエペンライズ」(大阪市)の本田 友和さんの作品です。
キュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。
作者紹介……本田 友和(ほんだ ともかず)
まずは、本田さんの所属する「アトリエペンライズ」施設長の松田さんからのメッセージをご紹介します。
本田さんとの出会いは、ある学園の担当者からの紹介で20年以上前になる。
散歩などをしながら短時間から始め、何が出来るだろうと考えながら、とりあえず絵から始めてみることにする。
扱いやすく少々緊張があっても描けるクレヨンを選び、マンツーマンで1色1色手渡しをして、力強くグルグルと画用紙に色を乗せて密度の濃い作品が完成する。
そして数か月が経ち、いろんな人とも緊張なく過ごせるように、制作パートナーを他の支援者と交代し様子を見ることにした。
すると今まで描いてきた作品と全く違う色使いになり、あっさりとした「別の作品」になっていた。
つまり支援者により作品の良し悪しが変わり、支援者の意向が反映された、支援者の思うような「理想の作品?」をそれぞれ望んでいて、「本当の本田さん」の作品でないことに気づく。
そこで「一人で楽しく続けて作業出来ること」はなんだろうか?といろんな作業を試した結果、ビーズにたどりつき、今では朝一番に「ビーズ!」と言って楽しそうに笑顔で始めています。
(アトリエペンライズ施設長 松田博之)
キュレーターより 《中津川 浩章さん》
本田友和「ビーズ」
6年前にキュレーションした展覧会「about me 3~”わたし”を知って~stories」で、本田友和の作品を展示した。あれからずっと気になっていた作家だが、どう紹介していいものかわからなくて6年も経ってしまった。まずは、彼の活動拠点である大阪、東住吉区にある「アトリエペンライズ」のことから書こう。
アトリエペンライズは生活介護の障害者福祉作業所。リラックスした雰囲気のなか、みんな家族のように時間を過ごしている。実際、ペンライズを運営する松田夫妻の住まいが2階にあって、まさしくアットホームなのだ。松田夫妻はアーティストでもある。メンバーへの表現活動のアプローチも柔軟で決まり切っていない。一人ひとりの特性に合わせてキャンバスに絵具でも、紙に鉛筆でも、書道や時には歌を唄うなどなんでもあり。みんなで散歩に出かけたり、それぞれがやりたいことをしたりして、日々の幸せをつくっていく。そうした活動の中から生まれて発展したのが、本田友和の「ビーズ」である。
ビーズの作品は基本的には毎日一つ制作する。2018年からやり続けて9年目。1年で250以上作る。昨年は277作品だった。松田さんたちが毎日撮影して記録している。撮影が終わると、本田はビーズを缶に戻すため自分でばらしてしまうのだ。作ったら、終わり。本田は残すことに興味がない。ビーズを並べてその日の自分の世界を表しておしまい。その潔さに表現の本質を見る思いがする。
同じ型でもビーズの色や配置は毎日違う。ピンクがベースの時が多いが、白とグレーの時期もある。色彩感覚は豊かで色に対するこだわりを感じるが、どんな要因で色が決まっていくのかはわからない。ビーズの配置に意図があるようにも感じられるが、それが何かのイメージなのか記憶によるものなのか、まったく作品については話さないのでわからない。
たまたま松田さんのうちにビーズがたくさんあって、やってみたら本田が一人でもスムーズにできてしまったのだという。身体に緊張があるので、歯磨きしても血だらけになるくらいコントロールがむずかしい。以前は調子が悪いと服を破くようなこともあったが、それもなくなってきている。「ビーズをする」と言って制作しているときの楽しげな顔。血圧が高めの本田がビーズをすると血圧が下がるらしい。本田にとって「ビーズ」は、穏やかに落ち着いて生きるために必要な行為そのもの。作品を残すためではない、まさに生きるための表現として、障害がある人たちの表現活動の意味が伝わってくる。
プロフィール
中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき)
記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートワークショップや講演活動を全国で行っている。
これまでのHEARTS & ARTSは、こちらのページでご覧いただけます。

創作活動に取り組む本田友和さん
レクリエーションを楽しむ本田さん
「ビーズ」
「松田さんたちが撮影した本田さんの作品の数々」
「ビーズ」
「ビーズ」
「ビーズ」
「ビーズ」
「ビーズ」
