2014年11月25日
ハートカフェ@渋谷「『カミングアウト』という壁〜当事者とその家族をめぐって」を開催しました。
11月13日午後6時半、渋谷区勤労福祉会館で「ハートカフェ@渋谷」を開催しました。
11月のテーマは「知っていますか?LGBT〜虹の世界への鍵あります〜」。
第2回目のこの日は、性同一性障害当事者の杉山 文野さん(ハートをつなごう学校代表)と、性同一性障害のある子どもからカミングアウトされた経験のある小林 りょう子さん(LGBTの家族と友人をつなぐ会・東京世話人)にお話しいただきました。
杉山さんは「カミングアウトは点ではなく、線」といいます。
杉山さん自身の最初の家族へのカミングアウトは、自分から伝えたというよりも、親に知られてしまったものだったそうです。中学生のとき、同級生の女子と仲良くしているところ、母親に見られてしまったのです。これが結果として最初の「カミングアウト」になったそうです。
その時から、杉山さんと家族との間には見えない壁ができてしまい、お互い気まずい思いを抱きながら月日は流れていったそうです。もともと仲の良い家族だったのにどうしてこんなことになってしまったのか。杉山さんは悩み、このままではいけないと、高校3年生のとき、意を決して家族に言葉で伝えました。しかし、家族からはまったく理解してもらえなかったそうです。
親には自分のことを理解してもらいたいと願っていた杉山さんは、まず「分からないことを分かろう」と考えたそうです。
「カミングアウトする側はこれまで生きてきた中で、ずっと自分と向きあって考えぬいてきたこと。でも伝えられる側は初めてのことでゼロからのスタート。1回伝えただけで分かってもらうのは無理なんです。僕自身、父親のことを分かっているのかと思ったとき、全然分かってなかったんです。だから、辛くても時間をかけて何度も伝え、少しずつ分かってもらうしかないと思ったんです」。
そして、杉山さんは折を見て何度も伝えていったそうです。すると、家族も性同一性障害に関して書かれた本を読んだり、少しずつ理解しようとしてくれ、いまでは、以前以上に仲の良い家族に戻ったそうです。
一方、カミングアウトをされた小林さんの場合はどうだったのでしょうか。
小林さんはカミングアウトされたとき、「分かった」といったそうです。でも本当に「分かった」訳ではなく、頭の中は???だらけ。まったく訳が分からなかったそうです。でも次にはこう伝えたそうです。「あなたは家族みんなが大切に思い、愛情いっぱいに育てた私たちの子どもに変わりはない。昨日まで女だったのに、今日男になったとしたって、私の子どもには変わりないから大丈夫」と。
受け入れられたのは、家族同士の関係性を深めていたからだともいいます。
「つなぐ会の活動でもカミングアウトの相談をよく受けるんです。そういうときにはいつも家族との良好な関係性を深めてと伝えています。家族との関係が悪かったら、いきなり『分かってくれよ』と言われたって、受け入れられないのは当然じゃないですか。だからこそ家族との日ごろからのコミュニケーションが大事なんです」。
杉山さんも小林さんも、カミングアウトは当事者だけの問題ではなく、受け止める側の問題でもあり、お互いの歩み寄りが不可欠だといいます。
杉山さんから周囲のできることとして、「ウエルカミングアウト」という提案がありました。
「これは周囲がLGBTに対して『ウエルカムなんですよ』って伝えることです。これがすごく大事だと思うんです。例えば『今日LGBTについての話を聞いた』とか『テレビで同性婚の話をやっていた』とかいう話題を肯定的に、職場や友だち、家族なんかに言ってみる。すると、すぐ隣にいるであろう、でもまだカミングアウトしていない当事者たちが、『この人にだったら言えるかもしれない』と思うきっかけになるんです。ぜひこういうふうに言っていただくところから始めてみてもらえるといいなと思います」。
参加者の皆さんからは、「お二人の話を聞いて勇気をいただきました。カミングアウトのハードルが下がったように感じます」、「カミングアウトをするかしないか迷わないでもよい時代が来るといいなと思いました」といった感想が寄せられました。
11月は毎週木曜日
11月は、毎週木曜日にハートカフェを開催しています。次回以降のハートカフェもぜひご参加ください。