2014年7月29日
ハートカフェ@渋谷「児童養護施設の子どもたちの自立を支援する」を開催しました。
7月31日午後6時半、渋谷区勤労福祉会館で「ハートカフェ@渋谷」を開催しました。
7月のテーマは「“福祉のすきま”を仕事にする」。
4回目のこの日は、児童養護施設を巣立つ子どもたちが自立した生活を送れるように支援している林 恵子さん(NPO法人ブリッジフォースマイル代表)にお話しいただきました。
林さんが児童養護施設に初めて関心を持ったのは11年前のことです。当時、人材派遣会社で働いていた林さんはキャリアアップを目指してビジネス研修に参加。そこで出された「企業が児童養護施設にできることを考える」という課題がきっかけでした。林さんにとってそれまで児童養護施設は名前を聞いたことがある程度。実態はまるで分からなかったため、いつくもの施設を訪ねて取材を重ねたと言います。
「親がいない子が暮らす場所だと思っていたら、そういった子は全体の1割弱。ほとんどの子どもは虐待や経済的な理由でした。また、ランドセルや学習用具、おもちゃなどには事欠くことがなかったり、高校生には個室が与えられていたり。物質的には生活に困ってはいないんです」。
例えば、子どもたちのためにと考える企業や寄付者などから施設にランドセルや衣服などが贈られることがよくあるそうですが、施設にとっては、もうすでにあるものばかりで、使い道がないという場合も多いそうです。施設のことを知らずに想像していたのと実態は大きく異なっていたそうです。
林さんが施設の実態の中で一番衝撃を受けたのは、子どもたちは高校卒業と同時に施設を出なくてはいけないということでした。さらに、その後の支援はほとんどないというのです。そのため、せっかく自立した生活を始めても、仕事や進学した学校を辞めてしまうと孤立してしまいやすく、生活が困窮しホームレスになったり、犯罪に手を染めてしまうことが少なくないそうです。
施設で暮らす子どもたちは、そういった前例を多く見聞きし、「どうせ自分なんて」と自尊感情が低くなり、将来にも希望が持てなくなってしまうそうです。
林さんは、そういった子どもたちの不安や希望の格差を解消することができればと、2004年にブリッジフォースマイルを設立。子どもたちの巣立ちを支援する活動を始めたのです。
取り組みは多岐に渡ります。引っ越しの手続きや金銭管理など一人暮らしに役立つ情報を掲載したハンドブックの作成、企業とタイアップして行う一人暮らしに欠かせない生活必需品のプレゼント、マンツーマンで生活のことや仕事や学業の悩みなどを相談できるサポートスタッフの派遣、子どもたちの「夢」を応援したいという協力者から資金を募る奨学金など。
林さんは、一人ひとり違う支援によって、それぞれが自立した生活を送れるようになれば、それがいま施設に暮らす子どもたちにとって身近なロールモデルになり、希望にもつながると考えています。
「一緒に先生に叱られたり、だらしなかった先輩が、今では自立した生活をしながら、仕事をし、進学をし、夢を実現させている。そんな姿を見てもらうことで、子どもたちが『自分にも出来るかもしれない』って思えるんじゃないかなと考えたんです。それは、年の離れた社長さんとかスポーツ選手とかが慰問に来て『お前たちも頑張れ!』っていう励ましより、よっぽど説得力があるんじゃないかなと思うんです」。
林さんたちが活動をはじめて10年。これまで関わった子どもたちは600人に上ります。しかし、いまでも「答え」はないといいます。
「子どもたちのためと頑張っても、連絡の取れなくなってしまう子もいます。また、子どもたちの可能性を信じて手を差しのべないことも必要なのですが、どこまでがその範囲なのか。私たちの活動がどこまで役に立っているのか。いまでも正直わからないです。けれども、『おかげで教師になれました』と感謝の声を届けてくれる子、『なんとかやっていけそう』と自信を取り戻してくれる子。成果は見えにくいですが、やめることはできないです」。
参加した皆さんからは、「施設・子どもと社会をつなぐという発想が目からうろこだった。とても参考になった」、「自分自身の心得としても“適切な支援を与えられる” 支援者が必要だと分かった」などの感想が寄せられました。
次は9月に開催予定です
次回のハートカフェ@渋谷は、9月に開催する予定です。詳細は近日中にお知らせします。 これまでの内容についてはこちらのページをご覧ください。