2014年10月18日
NHKハートフォーラム「うつ病と向きあう」を開催
10月18日(土曜日)、名古屋市中区にある東建ホール・丸の内で、NHKハートフォーラム「うつ病と向きあう」を開催しました。
フォーラムでは、うつ病とはどんな病気なのか、医療情報やうつ病ご本人の経験などの映像を交えながら、復職への道やうつ病と向きあいながらどう暮らしていくのが良いのかなどを話し合いました。会場には、患者や家族、医療関係者や企業のメンタルヘルス担当者など309人にお越しいただきました。
出演は、
- 大野 裕 (おおの ゆたか) 国立精神・神経センター 認知行動療法センター長
- 木村 健太郎 (きむら けんたろう) うつ病のご本人
- 三村 健 (みむら たけし) 武田病院 リワーク担当 精神保健福祉士
司会は、
- 町永俊雄(まちなが としお) 福祉ジャーナリスト/元NHK「福祉ネットワーク」キャスター
です。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください。
考え方のクセを見つけて、ストレスの軽減を
はじめに、精神科医で日本の認知行動療法の第一人者である大野 裕さんが、うつ病とはどんな病気なのかを説明しました。うつ病の原因ははっきりとはわかっていないのですが、原因のひとつとして、その人が持っているストレスへの耐性が限界を超えると発症すると言われているそうです。また人それぞれにある苦手なことがストレスになるので、「認知行動療法などの心理療法でストレスを減らしたり、耐性を高めていくことが治療にも予防にもなる」と話しました。
うつ病と「闘う」から「つきあう」へ
木村 健太郎さんは19歳のときにうつ病を発症して以来、19年間、この病気と向き合ってきました。仕事を一生懸命するあまりに病気を悪化させ転職を繰り返し、自殺を図ったこともありましたが、いまはソフト開発会社の特例子会社で人材の育成に携わっています。
木村さんは、「以前は何事にも完璧主義な自分がいて、しかも周囲の評価も気にしすぎて、がんばりすぎて再発を繰り返していました。いまも調子が悪くなるときもありますが、調子が悪くなりそうな予兆を感じたら休むように心がけられるようになりました。そうできるようになったのは、病気と“闘う”から、うまく“つきあう”という考え方になれたからだと思います。会社の理解もあってのことですが、おかげでいまは安定して働くことができるようになっています」と語りました。
仲間の力で回復を促す
三村 健さんは、うつ病の人々の復職を目指すリワーク(ReWork)プログラムに取り組んでいます。
三村さんたちの取り組みの特徴は、卓球・カードゲームなどのレクリエーションや、書道・七宝焼きなどの創作活動を多く取り入れていることです。他者との活動を楽しめるようになることが、ストレスへの耐性をつけていくうえで大切なのだそうです。
三村さんは、「うつ病の人々は孤立し、喜怒哀楽を出せなくなってしまっていますが、同じ苦しみを持つ仲間たちと一緒に活動するからこそ、自然と感情を表に出せることができるんです。これが回復の第一歩になるんです」と話しました。
フォーラムで使用した映像を貸し出しています
フォーラムは事業団が制作したDVD「うつ病」3巻セットの映像を交えながら進めていきました。DVD「うつ病」3巻セットは事業団で貸し出しをしています。
出演者プロフィール
大野 裕 (国立精神・神経センター 認知行動療法センター長)
1878年、慶應義塾大学医学部卒業。コーネル大学医学部、ペンシルバニア大学医学部に留学。慶應義塾大学教授を務めた後、2011年より現職。近年、精神医療の現場で注目される認知行動療法の第一人者。日本認知療法学会理事長、日本ポジティブサイコロジー医学会理事長、日本うつ病学会の理事など、諸学会の要職を務める。認知療法活用サイト「うつ・不安ネット」監修。著書「はじめての認知療法」など。
木村 健太郎 (うつ病のご本人)
1976年、神奈川県生まれ。大学2年生の時、うつ病と診断された。気分と体調に波があり、就職しては退職することを繰り返した後、2008年から現在の職場で、精神障害のある人の職業訓練の講師として働いている。
三村 健 (武田病院 リワーク担当 精神保健福祉士)
1979年、武蔵大学人文学部社会学科卒業。在学中からカウンセリングを学ぶ。教育相談所で教育相談員、精神科の医療機関で臨床心理士、ソーシャルワーカーなどを経て、1992年より武田病院(神奈川県川崎市)にソーシャルワーカーとして勤務。2007年、リワークプログラム立ち上げから専任スタッフとなり、現在に至る。