2014年7月19日
フォーラム「発達障害と就労」(神戸市)開催しました
7月19日、神戸市長田区のピフレホールで、NHKハートフォーラム「発達障害と就労--発達凸凹100人会議から見えてきたこと--」を開催しました。昨年10月、大阪で行われた発達凸凹100人会議でわかったことや、当事者が実際にどのように働いているか、企業は発達障害のある人たちの雇用をどのように考えているのか、など3時間にわたって話し合いました。
発達凸凹100人会議から見えてきたこと
発達凸凹100人会議を企画したNPO法人 発達障害をもつ大人の会の代表・広野 ゆいさんが100人会議の概要や会議から分かったことを説明しました。
100人会議は発達障害のある人がどうしたら就労を続けられるかを探るために、昨年10月、大阪府の事業として行ったもの。就労している発達障害のある人100人近くが集まって就労について話し合いました。集まった人たちは障害の種別や雇用形態など様々でしたが、就労がうまくいっている人たちというのは、自ら工夫をしていること、周囲の理解や協力があるという共通点があることが分かったそうです。
就労を続けるに当たって必要なことを皆で出し合って、10カ条にまとめました。
【職場がすべきこと】
- 発達凸凹の存在について知ろう
- それぞれのできる事、できない事を理解し受け入れよう
- 特性や苦手な部分をフォローできる環境をつくろう
- 輝ける場所・力を発揮できる場所をみつけよう「適材適所」
- 私たちだけでなく、全ての人が働きやすい職場を作ろう
【本人がすべきこと】
- 自己理解をすすめ、自分の弱みを受け入れよう
- 周囲の理解を得る努力を怠らず、私たちらしく頑張ろう
- できないことがあっても自分を否定せず、自己肯定感を高めよう
- 助けてもらえる人になろう
- 周りに感謝の気持ちをもとう
当事者の就労体験
続いて、大阪府堺市で建設会社の営業として働いている石橋 尋志さん、岡山大学の図書館で働く福井 豪さんがご自身の体験談を話しました。
石橋さんの場合
石橋さんは現在の建設会社に入るまでに5つの仕事を経験しましたが、不注意によるミスが続くなどしてどれも長続きしませんでした。今の会社でもミスが続きましたが、「もう仕事を辞めたくない」
という思いから、自らミスを減らす工夫を考えました。必要なものは鞄に入れずに、常に身につけるようにしたことで、それまで多かった忘れ物をしないようになったといいます。
会社としても、情報を共有化するなどして周りがフォローできる体制をつくるなど、本人と会社の両者で、就労を継続できるよう努力しています。
日頃からあいさつをしっかりしたり、感謝の言葉を言ったり、「助けてもらえる人になる」ことを心がけるようになったことで、今のいい関係が築けているのだといいます。
福井さんの場合
福井さんは大学卒業後、銀行に就職しましたが、精神的、身体的にきつくなり休職。その間に広汎性発達障害と診断されました。
障害者雇用での就労には抵抗もありましたが、「うまくいかなかったらリハビリだと考えればいい」と気持ちを整理し、障害者雇用で岡山大学で働くことを決意しました。大学の図書館では返却図書を棚に戻したり、新着図書の受け入れ作業を行っています。基本的に自分一人で、自分のペースでできる仕事だといいます。こういった働き方を図書館と本人の間に立って調整したのが、大学内にある「グッドジョブ支援センター」という部署です。現在51人の障害者を雇用し、学内のさまざまな仕事を引き受け、本人たちのサポートをしています。
福井さんは、仕事についてはあまり口出しはしないが、いつも見守ってくれるという安心感のある心地よい支援となっているといいます。
就労の現実
第二部では、笹森 理絵さん(神戸市ピアカウンセラー)と、藤原 崇さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)チーフコンサルタント)に加わっていただき、話を進めていきました。
笹森さんは一昨年、障害者の就労支援事業所に就職。以前、勤めていたグループホームでは障害に理解を得られず、退職していました。就労支援事業所ということで、精神保健福祉士の資格も活かせるのではないかと期待を膨らませての就職でしたが、自身の思いと事業所との思いの「ズレ」がなかなか埋まらず、結局退職することになったといいます。発達障害に理解があるはずの職場でも、そこに同僚として当事者が入ってきた場合には、また違う難しさがあることを話しました。
藤原さんは企業側から見た発達障害者の雇用について話しました。現在、労働力人口が減少していること、効率重視の組織のあり方に限界が来ていることなどを指摘し、障害者雇用に対する企業の考え方がどう変化してきているかを語りました。
また、障害者を雇うことでマーケットが広がったり、上司のコミュニケーション能力が向上し、会社にとってもメリットが生まれる可能性があると解説しました。
藤原さんの話を受けて、福井さんは「発達障害者の雇用は、コストもかかるし手もかかるけど、それを補って余りあるようなメリットを生み出すために僕らも頑張っていこうと思いました」と決意を語りました。
最後に広野さんが「会社側も私たち側も歩み寄って折り合いをつけていくことがコミュニケーション。そうすることによって会社にとっても私たちにとってもプラスになると思います」とまとめました。