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活動リポート

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2012年11月 9日

NHKハートフォーラム「がんになっても前向きに生きるために」

「がん」と向き合い、充実した治療・療療生活を送るには何が必要なのか、緩和ケアの最前線に関する後援とディスカッションを行う「がんになっても前向きに生きるために」を9月30日(日曜日)、東京・千代田区のイイノホールで開催しました。
「がん」の痛みの9割は「緩和ケア」で抑えられると言われていますが、一方で、“緩和ケアは終末期に受けるもの”といった印象を持っている方も多くいます。緩和ケアでの治療や病院外での緩和ケア、緩和ケアに関する情報収集について話し合いました。

今回のフォーラムでは、国立がん研究センター中央病院緩和ケア医療科科長の的場 元弘さん、神奈川県立がんセンター患者会「コスモス」の世話人代表の緒方 真子さん、国立がん研究センターがん対策情報センター医療情報コンテンツ研究室長の渡邊 清高さん、緩和ケア認定看護師の倉持 雅代さんにご出演いただき、それぞれの立場から取り組みを紹介しました。司会は、NHK福祉番組のナレーションなどを行っているフリーアナウンサーの河野 多紀さんです。

写真:舞台遠景

出演者のプロフィールはこちらをご覧ください。


第1部 講演:これからの「がん緩和医療」が目指すもの

緩和ケアとは

写真:的場さん

第1部は的場さんの講演。「緩和ケアとは」から始まり「がん治療と緩和ケアの関係」「痛みの伝え方」などについての話がありました。その中で強調されたのが、「がんの診断を受けた時点から緩和ケアを受けることのメリット」です。気持ちの落ち込みや不安などで悩むことも減ります。生存期間が長くなる可能性があるというデータもあります。痛みは、患者本人にしかわからないものなので、医師や看護師などにその強さや変化がわかるように、どこが、どのくらい痛いのかなどをぜひご自身のことばで伝えて、必要な時期に必要な緩和ケアを受けていただきたいというお話でした。

第2部 パネルディスカッション:「がん患者」が充実した暮らしを送るために

患者の立場から緩和ケアに願うこと

写真:緒方さん

第2部のパネルディスカッションで口火を切ったのは、緒方 真子さんです。緒方さんは、ご自身に子宮がん、肝臓がんの経験があり、また、ご主人が前立腺がんで闘病中であるという立場から話されました。
今は、まだ患者や家族にとっての「緩和ケア」は「人生最後の場所、治療を断念しなくてはならない、麻薬を使うので怖い」という印象があります。しかし、緩和ケアには「早期から行うケア」と「ターミナルケア」とがあり、早期から行う緩和ケアは、がん治療をした患者の身体のケアであると同時に心の支えでもあり、心の痛みを取るものだといいます。また、がんの手術でも入院日数が短くなっている昨今、早期からの緩和ケアが大切であると訴えました。

患者さんが充実した暮らしを送るための役立つ情報

写真:渡邊さん

次に話されたのは渡邊 清高さんです。渡邊さんは医療情報を伝える立場から「患者さんが充実した暮らしを送るために役立つ情報」というテーマで報告しました。何より自分の病状について一番知識を持っている主治医と話すのはもちろんのこと、セカンドオピニオンやインターネットなども有力な情報源であること。
そして、その情報が正しいものなのかどうか、周囲と相談するなど、患者が自分にふさわしい医療を得るためにはどうやって情報を集めたらよいのか考えていくことが大切と強調しました。国立がん研究センターでは、「がん情報サービス」をホームページで提供したり、冊子をお分けしています。また、何でも相談できる、がん診療連携拠点病院の中に相談支援センターを設けて、誰からでも相談を受け付けています。

訪問看護をご存じですか?

写真:倉持さん

続いて浅草医師会立訪問看護ステーションの倉持 雅代さんの話です。倉持さんは、訪問看護は通院中でも家で安心して過ごすために訪問看護が利用できることを中心に、訪問看護の仕事やその仕組みを解説しました。訪問看護というと、寝たきりであったり医療機器を使う必要があるなどの患者さんに必要なものと思われがちですが、通院中であっても実は大変な苦労をして通院している人も病院からの指示があれば訪問看護ができるし、一人暮らしなどで生活環境に不安がある人も訪問看護で安心して生活ができることがつながる可能性を提示しました。病院と訪問看護師が連携を取り合って患者さんと向き合い、患者は自分がどんな生活をしたいかをきちんと伝えることで、せっかく退院してもまたすぐに病院に戻ることになったりせず、穏やかに過ごせるように訪問看護を利用してほしいと話しました。

緩和ケアについて話すことを恐れないで

写真:的場さんと河野さん

最後に的場さんから患者さんや家族に向けてのメッセージが送られました。「緩和ケアについて話すことが、その患者さんの病状を悪くしたり、悪影響を及ぼすことは絶対にありません。ですからご家族は、緩和ケアについて話すことを恐れないでほしいし、患者さんは緩和ケアについて聞いたり、知ってみたりすることを恐れないでほしいと思います。緩和ケアを受けることで、その人の生活の質が良くなったり、長く緩和ケアを受けた方が生きている方も強くなることがわかってきていることも、ぜひ知っておいていただきたいです。そして、自分のことばで医療従事者と話をするということも大切です。ご自身の言葉で伝えていっていただきたいと思います」


出演者

的場 元弘 まとば もとひろ (国立がん研究センター 中央病院 緩和医療科科長)

1959年生まれ。北里大学医学部卒業。オハイオ州立大学病院麻酔科研究員、北里大学医学部麻酔科講師などを経て、現在は国立がん研究センター中央病院 緩和医療科 科長。医学博士。NHK厚生文化事業団発行の「がん患者のための体と心の緩和ケア」監修。

緒方 真子 おがた まさこ (神奈川県立がんセンター 患者会「コスモス」 世話人代表)

46歳の時、米国で子宮頸がんを発病し、広汎性子宮全摘出手術。その5年後、原発性の肝細胞がんを発病し日本で手術。その後、神奈川県立がんセンター患者会「コスモス」の世話人代表として活動を行うほか、講演会や出版活動など、「がん仲間」のネットワークをひろげている。

渡邊 清高 わたなべ きよたか (国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供研究部 医療情報コンテンツ研究室長)

1996年東京大学医学部卒業。専門は消化器内科、肝臓病学。東京大学消化器内科医員を経て、2008年より現職。インターネット、冊子、患者必携などを通して、信頼できる情報発信と、患者家族の視点、現場や地域のニーズに応じた普及の取り組みを実践している。

倉持 雅代 くらもち まさよ(浅草医師会立訪問看護ステーション 緩和ケア認定看護師)

茨城県立中央看護専門学院卒業。日本看護協会認定看護師、緩和ケア認定看護師。茨城県立中央病院・地域がんセンター、救世軍清瀬病院(ホスピス)勤務などを経て、2001年より浅草医師会立訪問看護ステーションにて訪問看護師として在宅ケアに従事。

司会:河野 多紀 こうの たき (フリーアナウンサー)

社会情報番組などのリポーターや趣味実用番組の司会などを経て、現在は、NHK・Eテレ「ハートネットTV」のナレーションや、ラジオ第2「社会福祉セミナー」司会などを担当。

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主催

NHK、NHK厚生文化事業団

後援

厚生労働省、文部科学省、国立がん研究センター

 

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