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活動リポート

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2010年3月12日

認知症フォーラム「寄りそう心 支える社会---認知症とともに歩む---」を開催しました(東京)

NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「寄りそう心 支える社会--認知症とともに歩む--」を、3月12日、東京都北区の北とぴあ さくらホールで開催しました。763人の来場者が、認知症の最新医療とケアについて学びました。

写真:舞台講師3人と司会者 出演は、遠藤 英俊さん(国立長寿医療センター 包括診療部長)、英 裕雄さん(新宿ヒロクリニック 院長)、沖田 裕子さん(大阪市社会福祉研修・情報センター スーパーバイザー)、太田 栄子さん(認知症を語る会 副代表)、司会は「福祉ネットワーク」などでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールはこちらをご覧ください

第一部 認知症の医療・ケア

第一部では、3人の方が登壇。主に医療、介護の立場から、認知症の基礎情報や、地域での医療・支援の体制などについてお話をうかがいました。

写真:遠藤先生の顔

遠藤さんは、認知症の専門医として長年、臨床にあたりながら、認知症の予防プログラムの開発、研究に取り組んでいます。まず遠藤さんは、認知症の原因疾患のひとつ、アルツハイマー病の薬であるドネペジル塩酸塩について、早期に服用するほど長く、認知機能の高い状態をキープすることが出来ると話しました。



写真:ドネペジル塩酸塩の効果

また、現在では、SPECTやPETといった、脳の「機能」をみる画像機器が登場し、これまでのCT、MRIといった脳の「形」を見る画像診断よりも、より早期に認知症を見つけることが可能になったと説明しました。「最近ちょっとおかしいな」と感じたら、年のせいにせず、早期に病院を受診することが大切ですと伝えました。


写真:英先生の顔

英さんのクリニックでは、新宿を拠点に、24時間365日、470人の在宅で生活する高齢者の訪問診療に取り組んでいます。新宿区では、高齢者世帯のうち、一人暮らしが約30%、老老介護の世帯が約30%と、60%の高齢者が社会と切り離された状態で生活していると言います。こうした人たちを少しでも支えたいと、地元の医師会と協力し、何かあったときに連絡をもらえれば、常に往診できるシステムを作ったそうです。最期まで在宅で暮らし続けることは難しい部分もあるが、24時間、医療チームが見守ることで、認知症高齢者の暮らしを少しでも安心できるものにしていきたいと話しました。


写真:沖田さんの顔

沖田さんは、病院や重度認知症デイケアなどで看護師として勤めた後、認知症の本人同士が交流を深められるよう、「本人ネットワーク支援事業」などに携わっています。
認知症の人を介護する上で、徘徊や妄想、暴言、暴力といった周辺症状(BPSD)に悩まされている介護者が多いと言います。こうした周辺症状は、認知症の症状として必ずしも起こるものではなく、何かやりたくても上手くできない苛立ちなどが、そうした形であらわれてしまうケースがあると説明しました。 介護していると、出来ないところに目がいきがちになりますが、本人の出来るところを見つけて役割を持ってもらったり、本人の思いに寄り添い優しく接したりすることで、周辺症状が改善、消失することもありますと話しました。

第二部 本人の意思を尊重し、認知症とともに歩む

第二部では、若くして認知症を発症し、以来、自らの思いを発信し続けてきた太田 正博さんの取材ビデオを見ながら進められ、これまで正博さんとともに人生を歩んでこられた妻の太田 栄子さんにご登壇いただきました。

写真:太田さんの顔

太田さんの夫、正博さんは、8年前、52歳の時に認知症を発症しました。若年認知症の支援が整っていない中で、正博さんは主治医の医師やケアのサポーターとともに、当事者の思いを伝える講演活動などを行ってきました。しかし、最近になり、徐々に症状が進行し、次第にいろいろなことが出来なくなっていく自分への苛立ちや情けなさを露にすることが多くなったと言います。「そんな夫のつらさを毎日見るたびに、重苦しい気持ちになるが、今まで以上に夫の気持ちに寄り添っていきたい」と、太田さんは話します。また、認知症を発症するまで、児童相談所に勤めていた正博さんは、子どもたちを見守りたいという思いが今でも消えていないと言います。今後、正博さんが「見守り」というご自身の役割を果たせるよう、支援者と連携しながら考えていきたいと話しました。

ビデオの中で、太田さんが夫の正博さんの思いに懸命に寄り添おうとする姿に、会場では思わず涙する来場者もおられました。ご本人の思いを大切にしながら認知症と歩む上で何ができるのか。太田さんご夫妻を通して、来場したすべての方々がそれぞれの立場で考えさせられた、そんなフォーラムでした。


主催

NHK厚生文化事業団

共催

NHK

後援

厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
日本認知症学会、日本認知症ケア学会、日本老年精神医学会

協賛

エーザイ株式会社、ファイザー株式会社


出演者プロフィール

遠藤 英俊 (国立長寿医療センター 包括診療部長)

1982年、滋賀医科大学卒業。1987年、名古屋大学医学部大学院修了。その後、市立中津川総合病院内科部長、国立療養所中部病院内科医長などを経て、現在に至る。老年病専門医。日本認知症学会理事。著書に『認知症・アルツハイマー病がよくわかる本』(主婦の友社)、『地域回想法ハンドブック』(河出書房新社)、『いつでもどこでも「回想法」』(ごま書房)など多数。

英 裕雄 (新宿ヒロクリニック 院長)

1987年慶応大学商学部卒業、1993年千葉大学医学部卒業。1996年に曙橋内科クリニックを開設し、在宅診療の道に入る。現在は医療法人社団三育会新宿ヒロクリニック院長として、認知症をはじめとする在宅医療の困難な事例に正面から向き合い、暮らしを支えるための在宅グループ診療の実践に取り組んでいる。

沖田 裕子 (大阪市社会福祉研修・情報センター スーパーバイザー)

神戸大学大学院修了。国立療養所静岡東病院、特別養護老人ホーム勤務、重度認知症デイケア等で勤務。認知症介護研究・研修大府センターにて、研修企画・運営担当。「認知症を知るキャンペーン」の認知症のための本人ネットワーク支援委員や、認知症の人のためのセンター方式(ケアマネジメント方式のひとつ)の推進員を担っている。大阪市立大学生活科学部 非常勤講師。

太田 栄子 (認知症を語る会 副代表)

長崎県出身。長崎大学医学部付属看護学校を卒業後、長崎大学医学部付属病院(現、長崎大学病院)に看護師として10年間勤務。1975年に結婚し、幸せな家庭生活を送ってきた。2002年、夫(太田正博)が52歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断され、それ以来、家計を支えながら介護を続けている。夫は「認知症を語る会」代表として講演活動中。

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