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活動リポート

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2009年5月29日

認知症フォーラム「早期診断・早期ケアでいきいき暮らす」を開催しました(東京)

NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「早期診断・早期ケアでいきいき暮らす」を、5月29日、東京都港区のニッショーホールで開催しました。652人の来場者が、認知症の早期診断と診断後のケアについて学びました。

写真:舞台講師4人と司会者 出演は、朝田 隆さん(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 病態制御医学専攻 教授)、木之下 徹さん(医療法人こだま会 こだまクリニック院長)、中島 七海さん(医療法人笠松会 天神オアシスクラブ施設長)、牧野 史子さん(NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン理事長)、司会は福祉ネットワークなどでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールはこちらをご覧ください

画像診断で認知症のタイプを鑑別

写真:朝田先生の顔

認知症の専門医の朝田さんは、認知症の画像診断技術の最新情報について話しました。これまでの画像診断では、認知症のタイプ(アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)を鑑別するのに限界がありましたが、近年、SPECTと呼ばれる画像診断技術が進んでおり、鑑別が可能になったそうです。SPECTは、脳の血流の流れを画像化します。脳のどの部位で血流が低下しているかをみて、認知症のタイプを鑑別するのです。「SPECTにより、早期の段階で認知症のタイプを特定し、それぞれのタイプに合った正しい治療とケアに結びつけることが可能になります」と話しました。

写真:SPECT画像

軽度認知障害の診断とケア

朝田さんは、また、SPECT画像により、軽度認知症障害(MCI)とよばれる状態が把握可能になってきたと言います。MCIは、認知機能が健康な人より低いが、認知症と診断するまでには至らない状態です。65歳以上の高齢者のおよそ5%がMCIの状態にあると言われ、4年以内におよそ半数の方が認知症に移行するというデータがある、と説明しました。 「これをすれば絶対に認知症にならないという予防策はありませんが、MCIと診断されたら、生活習慣病にならないようにしたり、人との交流活動に進んで参加したりすることが、認知症の予防や進行を遅らせる上で一番大切です」と話しました。


写真:中島さんの顔

MCIの段階から、本人や家族のケアを実践しているのが、福岡市の「笑○の会(しょうわのかい)」です。この会を立ち上げた中島さんが、そのとりくみを報告しました。 中島さんは、MCIと診断された方は、自尊心が高く、通常のデイサービスへの参加に抵抗があるという方が多い、と言います。そこで、「笑○の会」では、カルチャーセンターをコンセプトに、楽しむだけでなく、学びの場、ためになる場づくりを心がけているそうです。街の散策、講演会、泊りがけの旅行などを、メンバーが自ら企画します。それが、ひとりひとりの達成感につながります。また、家族にとっても、思いを共有できる仲間同士、気軽に相談できる場になっているそうです。 「家族の中には、”最近、本人のプライドが高く、頑固になって困る” と言う方もいらっしゃいますが、このプライドがあるからこそ、本人がいつまでも素敵でいられるのです。プライドを捨てさせないことが大切です」と話しました。

本人と家族が安心して暮らせるために

写真:木之下さんの顔

フォーラムでは、認知症の人の暮らしの質を高めるために必要なことについても話し合われました。 訪問診療専門の開業医である木之下さんは、患者さん個々人の病歴、薬への反応の仕方、生活歴、環境など様々な要因によって対応が異なるので、全てを診て考えながら判断することが基本だと説明しました。


写真:牧野さんの顔

また、介護する家族を支援する活動をしている牧野さんは、家族が介護で疲れ果ててしまう前に、周りのサポートを得ておくことが大切だと伝えました。例えば、近所の交番や行きつけのお店に事情を話しておけば、徘徊したときにも発見が早くなります。また、近くの自治体や社会福祉協議会に家族会の情報を聞いてみるなど、情報を集めて、心強い環境を自ら作っていって欲しい、と話しました。


主催

NHK厚生文化事業団

共催

NHK

後援

厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
日本認知症学会、日本認知症ケア学会、日本老年精神医学会
日本脳神経外科学会、日本神経学会

協賛

富士フイルムRIファーマ(株)


出演者プロフィール

写真:朝田氏

朝田 隆 (筑波大学大学院人間総合科学研究科病態制御医学専攻 教授)

東京医科歯科大学医学部卒業。同大神経科勤務後、英国オックスフォード大学老年科フェロー、国立精神・神経センター武蔵病院精神科医長などを経て現職。 アルツハイマー病を中心とする認知症の遺伝疫学的な研究、およびアルツハイマー病の予防介入と若年性認知症、軽度認知障害(MCI)を対象としたアルツハイマー型認知症の早期診断に関する研究など、認知症の基礎と臨床に携わる。

写真:木之下氏

木之下 徹 (医療法人こだま会 こだまクリニック院長)

東京大学医学系研究科保健学専攻修士課程疫学教室卒業。山梨医科大学医学部医学科卒業。国立精神・神経センター勤務後、現職。品川区を中心に訪問診療を始めて6年。認知症高齢者の介護問題、在宅医療のあり方を考えるために在宅認知症ケア連絡会を立ち上げる。 在宅認知症ケア連絡会、NPO地域認知症サポートブリッジ代表。在宅で暮らせる認知症医療サービスの充実と共に、認知症の人を早期に発見するためのネットワークづくりを推進している。

写真:中島氏

中島 七海 (医療法人笠松会 天神オアシスクラブ施設長)

十善会高等看護学校卒業後、総合病院、老人病院で勤務後、療養病床、老人保健施設で認知症介護に携わる。2001年から現在の天神オアシスクラブの管理者として、若年認知症や初期認知症の介護を開始。若年認知症の集い「オアシス虹の会」と、軽度認知障害(MCI)の集い「笑○の会」(ショウワノカイ)を立ち上げる。また、認知症介護指導者として認知症介護実践者研修などにも関わっている。

写真:牧野氏

牧野 史子 (NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン理事長)

千葉大学教育学部卒業。小学校教員を経て、夫の転勤に伴い西宮市在住中に阪神大震災に遭い、仮設住宅高齢者を支援する様々な活動を展開する。2001年帰京し、“介護者の孤立”問題に取り組む組織、「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」を立ち上げる。震災後のコミュニティづくりをベースに、介護者を支援する地域のしくみづくりを提唱、実践している。

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