2008年2月23日
大阪で若年期の認知症についてのフォーラムを実施しました
NHK認知症キャンペーンの一環として、ハートフォーラム「若年期認知症 -本人と家族をどう支えるか-」を、2月23日(土曜日)、大阪市中央区の府立女性総合センター(ドーンセンター)で開催しました。
フォーラムは二部構成。前半は、若年期認知症のご本人と妻からのメッセージと、専門医による「若年期認知症とは何か」と題する講演。後半はシンポジウムとして、さまざまな立場で若年期認知症のご本人をどう支えるかについて、熱心な議論がかわされました。当日はあいにくの強い雨の中を訪れた258人の来場者が、若年期の認知症をめぐる問題について理解を深めました。
このフォーラムの抄録を、こちらからお読みいただけます。
メッセージ 若年期認知症のご本人と妻から
冒頭、若年期認知症のご本人と妻が、舞台にあがりました。大分市からおこしくださった足立 昭一さんは、2006年に57歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。翌年、36年間勤めた大分市役所を退職。以来、自分にできることを探して、農作業の手伝いやウオーキングなどに取り組みながら、毎日を自分らしく前向きに生きてこられました。講演の最後を、「目標は、認知症完治の第一号になること」という力強いことばでしめくくられました。
続いて妻の由美子さんが、昭一さんが診断を受けてから現在まで妻としてそばで支えてきた立場から、その心がまえや悩みなど、認知症の夫とともに歩む思いを語られました。
講演 若年期認知症とは何か
次に、大阪人間科学大学教授で松本診療所ものわすれクリニック院長の松本 一生さんの講演です。松本さんは、老年精神医学、介護家族の心のケア、家族療法などが専門で、長年にわたって認知症の臨床にかかわってこられました。お話は、進行の速さや、ものわすれ以外に起こる精神的な症状(周辺症状)の激しさ、どんな病気によって若年認知症が発症するか、早期に気づく方法や進行を遅らせる薬など、多岐にわたって専門医の立場から解説をされました。
シンポジウム 若年期認知症 -本人と家族をどう支えるか-
後半のシンポジウムでは、企業、福祉、医療、それぞれの立場から、若年期認知症のご本人と家族をどう支えていくかという点について議論がかわされました。 出演は、谷本 武美さん(辰巳商会総務部部長代理)、鎌田 松代さん(総合福祉施設京都桂川園地域福祉部長)、松本 一生さん(大阪人間科学大学教授、松本診療所ものわすれクリニック院長)。コーディネーターは、社団法人認知症の人と家族の会代表理事の高見 国生さんが努めました。
ますは「仕事」についての話から。谷本さんの会社では、社員の一人が若年期認知症と診断を受けてからも働き続けています。雇用し続けると会社が判断した理由、職場の仲間や取引先の反応、働き続けてもらうための具体的な工夫や苦労、悩みなど、人事担当者としての率直なお話がありました。その中で谷本さんは、認知症のご本人を雇用し続けるうえで企業が負う様々な負担については、「当然のコスト」だという考えを述べられました。
続いてマイクを握ったのは鎌田さん。看護師でケアマネージャーでもある鎌田さんは、介護保険などの社会的サービスにふれながら、体は元気でまだまだやりたいこともある若年の認知症の人たちに着目したサービスの整備が必要だと強調しました。また、福祉の専門職として日頃から心がけていることとして、介護する家族の負担を軽減するために、「困っていることがあれば声をかけてください」というメッセージを伝え続けることが大切だと現場の体験から話されました。
松本さんからは前のお二人の話を受けて、認知症を発症した人が、適切なサポートを受けながらできる範囲で仕事をすることは、認知症の進行をある程度おさえることにもつながるという指摘がありました。また、介護に追われる日々の中で家族が疲弊するとご本人の混乱が強くなること、認知症の場合は特に介護者が精神的に安定することがきちんとした医療をおこなううえで重要であることなど、医療面からみた家族支援の重要性について力説されました。
シンポジウムの最後に、コーディネーターの高見さんが、認知症になってもその人らしく生きていけるためには、本人の前向きの気持ちと社会的な支援の両方が必要なこと、私たち一人ひとりが認知症の人と家族のおかれた現状と取り巻く課題に少し気をつけるだけでずいぶん生きやすい社会になると述べて、この日のフォーラム全体をしめくくりました。
抄録
このフォーラムのくわしい内容については、、こちらからお読みいただけます。