NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

NHK厚生文化事業団


現在位置:ホーム > このページ


活動リポート

2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年  

2008年3月15日

認知症フォーラム「在宅で自分らしく生きる」を開催しました

NHK認知症キャンペーンの一環として、認知症フォーラム「在宅で自分らしく生きる 〜医療・介護・地域の連携〜」を、3月15日、東京都港区のメルパルクホールで開催しました。1,035人の来場者が認知症への理解を深めました。

写真:舞台講師4人と司会者

出演は、遠藤 英俊さん(国立長寿医療センター 包括診療部長)、永田 久美子さん(認知症介護研究・研修東京センター主任研究主幹)、八森 淳さん(社団法人地域医療振興協会 市立伊藤市民病院 臨床研修センターセンター長、伊東市介護老人保健施設みはらし施設長)、本多 智子さん(こだまクリニック看護師長)、司会は福祉ネットワークなどでおなじみの町永 俊雄アナウンサーが務めました。出演者のプロフィールは、こちらをご覧ください

第一部 認知症の医療と介護

  フォーラムでは、まず、認知症の医療と介護の最新情報をお伝えしました。

写真:遠藤先生の顔

認知症の専門医の遠藤さんは、アルツハイマー病(認知症の原因疾患のひとつ)の薬であるアリセプトについて、「薬の効果は脳の認知機能が低下するスピードを緩やかにするもの。初期に投与するほど効果が大きく、長く効果が持続する」と説明しました。
「半年診断が遅れると、薬を飲んでも症状が追いつかなくなる場合があり、一か月でも早く専門医を受診し、精密検査を受けることが大切だ」と伝えました。

写真:永田さんの顔

認知症介護研究・研修東京センターの永田さんは、「本人に寄り添う介護」の大切さを訴えました。「寄り添うとは、介護側がよかれと思って施すのではなく、本人が望むことに介護側が気付き、支援していくこと。本人の今までの暮らしが続くよう、本人の出来ないところを支えてあげることが大切だ」と話しました。
また、「認知症の人は記憶力や考える力は低下するが、身体は健康。イキイキと身体を動かしたり、本人の出来る部分を伸ばして、これからの人生を堂々と笑顔で暮らしていけるようサポートしてあげて欲しい」と伝えました。

第二部 認知症を在宅で、地域で支える

  第二部では、実際のとりくみの例を映像で見ながら、いつまでも住み慣れた家で暮らし続けるために必要な、「訪問診療」や「地域のネットワーク」について、話し合いました。

写真:本多さんの顔

看護師として、地域に暮らす認知症の方の訪問診療に取り組む本多さんは、在宅で暮らす認知症の人と家族をどう支えるか、話しました。「在宅の場合、本人はもちろんご家族の精神状態や雰囲気、明るさ、介護の疲れ具合などを感じとり、クリニック、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパーなどが連携してサポートすることが、本人と家族の安心感に繋がる」といいます。
また、「困ったときに、地域やご近所で気軽に声をかけ合って、協力できるような人間関係を築いていくことが大切だ」と伝えました。

写真:八森さんの顔

もの忘れ外来や訪問診療にとりくんできた八森さんは、横浜市鶴見区での認知症の人を支える地域の取り組みについて話ました。 八森さんもかかわるこの活動では、認知症の人やその家族が気軽に立ち寄れる場所を作りました。場所は、地域のそば屋さんです。定休日を利用して、お店を地域の人たちのたまり場として開放してくれました。このような場所があることで、「地域に暮らす人に“なじみの場所”“なじみの関係”ができ、認知症の人を早い段階で医療や福祉サービスに結び付けることが出来る」と話しました。「しっかりした医療と並んで、生活する地域の人たちとのネットワーク作りも重要だ」と伝えました。


主催

NHK厚生文化事業団、NHKエンタープライズ

後援

厚生労働省、社団法人 認知症の人と家族の会
日本認知症学会、日本認知症ケア学会、日本老年精神医学会

協賛

エーザイ株式会社、ファイザー株式会社


今後も認知症フォーラムを開催します

NHK厚生文化事業団では、2008年度も、認知症に関するフォーラムを開催していきます。日時や場所が決まりましたら、このホームページ等でお知らせします。


出演者プロフィール

写真:遠藤さん

遠藤 英俊 (国立長寿医療センター 包括診療部長)

1982年、滋賀医科大学卒業。1987年、名古屋大学医学部大学院修了。その後、市立中津川総合病院内科部長、国立療養所中部病院内科医長などを経て、現在に至る。老年病専門医。 著者に『認知症・アルツハイマー病がよくわかる本』(主婦の友社)、『地域回想法ハンドブック』(河出書房新社)、『いつでもどこでも「回想法」』(ごま書房)など多数。

写真:八森さん

八森 淳 (社団法人地域医療振興協会 市立伊東市民病院 臨床研修センター センター長・伊東市介護老人保健施設みはらし 施設長)

1991年、自治医科大学卒業。医師。青森県町立百石病院に副院長として勤務し、一般診療、在宅診療に携わる中で物忘れ外来に従事。2004年から現職。地域医療の視点から総合的な診療ができる「地域医療の専門医」の育成に携わり、認知症専門棟を含む介護老人保健施設の診療にもあたる。横浜市などで認知症のための地域ネットワークづくりや予防・支援・啓発の活動、介護予防評価なども行っている。日本認知症ケア学会評議員。著書に『EBM(根拠に基づく医療)を飼いならす』『現代地域医療のパラダイム』など。

写真:永田さん

永田 久美子 (認知症介護研究・研修東京センター 主任研究主幹)

千葉大学大学院看護学修士課程修了。学生時代から地域や病院、施設で認知症の人と家族を支援する活動を続けてきている。東京都老人総合研究所を経て、2000年8月から現職。認知症の人と家族がともに自分らしく暮らしていくための支援と町づくりをテーマに、本人ネットワーク支援、センター方式を活かしたチームでの支援、自治体単位での支援体制作りなどに取り組む日々。

写真:本多さん

本多 智子 (こだまクリニック 看護師長)

名古屋鉄道病院高等看護学園卒後、同病院勤務。大和病院(精神科)、東芝林間病院(糖尿病、循環器、消化器など)を経て現在に至る。今までの経験を生かし、認知症を抱えた家族やケアスタッフと薬物のモニタリングのための連絡、連携、生活をささえるための相談、調整などを行っている。正看護師、介護支援専門員、認知症ケア専門士、日本糖尿病療養指導士の資格を持つ。在宅認知症ケア連絡会事務局世話人として活躍中。


 

活動リポート目次