今回ご紹介するのは、小林覚さん(岩手県)の作品です。

キュレーターは、福祉実験ユニット・ヘラルボニーの松田文登さんです。

作者紹介……小林覚さん

小林覚さんの好きな音楽家はビリー・ジョエル、クイーン、井上陽水、スピッツ、THE BOOMと幅が広い。そして散歩が大好きです。 覚さんは養護学校中等部に在学中、日記も作文もすべての文字を独特の形にアレンジして書くようになりました。 はじめ、学校の先生も何とか直せないかと苦心しましたが、やがてこれを魅力的な造形表現ととらえることに切り替えます。 これを転機に、彼の表現は多くの人に喜びを与えるアートとして羽ばたき始めました。

 

キュレーターより《松田文登さん》

すべての文字・数字をつなげて描く。
背中をかいてもらいながら、小林覚が創り出す世界。

一見、幾何学模様に見えるかもしれないですが、実は、作品の中に様々な数字が散りばめられています。意識してご覧いただきたいです。創作活動の開始からしばらく経った頃、無色だった作品に鮮やかな色が加えられました。

これは覚さんが大好きなスピッツのアルバムを聴きながら活動していたとき、生まれた作品。名曲「夏の魔物」を聴いた時の情景が描かれているのだろうと思われます。

彼がどのようにこの作風を生み出したのか、誰も知らないのです。
数字や文字をつなげて描くことで、自分の中の暗号や新しい文字が生まれていたのかもしれない。きっと何か自分の中で納得したものがあったのだろうと思います。
彼はいつもヘッドホンで音楽を聴きながら創作活動に励んでいます。そこには、何か自分の世界があるかのようで、他人を寄せ付けない雰囲気があります。
覚さんは、背中をかいてもらうと筆が進みます。しかし、彼の背中に触れることができるのは選ばれた人のみです。実は私もその一人。

2020年はJR釜石線が 70 周年を迎えました。その記念車両のデザインを覚さんが書くことに。デザインの中に「釜石線 70 周年記念銀河ドリームライン」が隠れている覚さんの独創的なアートで電車は彩られました。

背中をかくという行為が、私と覚さんの信頼関係の証であれば嬉しいです。
これからもアーティストとして羽ばたいていく覚さんの隣にいられればと思います。

 

 


プロフィール

松田 文登(まつだ・ふみと)

株式会社ヘラルボニー代表取締役副社長。チーフ・オペレーティング・オフィサー。大手ゼネコン会社で被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共に、へラルボニー設立。自社事業の実行計画及び営業を統括するヘラルボニーのマネジメント担当。岩手在住。双子の兄。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

これまでのHEARTS & ARTSは、こちらのページでご覧いただけます。

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