今回ご紹介するのは、工房集(埼玉県川口市)の西川 泰弘さんの作品「僕のすべて」です。今回のキュレーターは中津川 浩章さん(画家、美術家、アートディレクター)です。

作者のことば……西川 泰弘(にしかわ・やすひろ)さん

絵を描く前の僕は辛い思いをすることが多かった。そんな人生を挽回したいという想いや、人から愛されたい、好きと言われたいという想いが絵を描く原動力になっている。絵を描く時は好きな音楽(カーペンターズ)を思い浮かべて、見た人の心が温まるような作品になったらいいなと思いながら描いている。
気持ちが揺れることもあるけど、絵を見てもらう事で前向きな気持ちになれるのでこれからも続けていきたい。

キュレーターより 《中津川 浩章さん》

個性的な色彩感覚、力強い筆によるストロークと点描、それらが重なり合って豊かな絵画空間を生み出している西川 泰弘。
彼は、アート活動ができる福祉施設をインターネットで探し出し、埼玉県川口市にある「工房集」に自分でやってきた。
過酷な人生から抜け出すため、新しい人生を、表現する場を切実に求めて。
工房集に出会って彼の人生は一変した。湧き上がる強い思いから生まれた作品の数々は奇跡のような輝きを放って見る者を魅了している。
さまざまに変化する色彩、大胆な筆跡、そこに細かいタッチで幾重にも色を重ねていき、自分が納得するイメージになるまで執拗に描き続ける。
同じことを繰り返す単調に見える行為は、描くことに没入することで自らを癒す時間でもある。

彼の表現する作品は不思議なことにアボリジナルアートにとても近い様式を持つ。
風の音を聞き、気圧の変動を感じ、土の匂いを感じ取りながら生きているアボリジナルと同じような原始の感覚がそこにある。
人としての生きづらさでもある感覚過敏と呼ばれる特性は、アートの世界では個性となり才能へと変わるのだ。

障害がある方たちの作品は現代人が忘れかけているさまざまなメッセージを含んでいる。このHEARTS&ARTSで、そんな大切なメッセージを伝える作家たちを紹介していきたい。


プロフィール

中津川 浩章(なかつがわ・ひろあき) 記憶・痕跡・欠損をテーマに自ら多くの作品を制作し国内外で個展やライブペインティングを行う一方、アートディレクターとして障害者のためのアートスタジオディレクションや展覧会の企画・プロデュース、キュレ―ション、ワークショップを手がける。福祉、教育、医療と多様な分野で社会とアートの関係性を問い直す活動に取り組む。障害者、支援者、子どもから大人まであらゆる人を対象にアートWSや講演活動を全国で行っている。

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