2015年9月24日
ハートカフェ「罪を犯した障害者」を開催しました
お茶を片手にさまざまな福祉について学ぶ「ハートカフェ@渋谷」。
9月は「罪を犯した障害者 〜その背景と再犯を防ぐ支援とは〜」をテーマに開催しました。
第1回(9月3日) 罪を犯した障害者とは〜彼らの「生きにくさ」を知る〜
講師:赤平守さん
(日本障害者協議会理事、前東京都地域生活定着支援センター 統括センター長)
新受刑者のうち、知能指数70未満の人は全体の2割余りを占めています。
これまでに300人を超える受刑者に出会ってきた赤平さんによると、犯罪が起きる(繰り返される)背景には、本人の意思とは関係なく生じる
- 貧困と無知
- 家族関係の崩壊
- いじめ・虐待・偏見・差別
- 本人の障害
支援するうえで大切なのは、再犯防止を目標とするのではなく、罪を犯した人が新しい生活を「手放したくない」と思えるようになること。その結果、再犯が遠のくとのことでした。
第2回(9月10日) 地域生活定着支援センターの役割と課題
講師:木内英雄さん(埼玉県地域生活定着支援センター長)
平成22年に埼玉県に地域生活定着支援センターが設置されて以来センター長を務めている木内さんは、具体的な事例を挙げてセンターの役割について話しました。
お金がない、居場所がない、頼る人もいない。ないない尽くしの人が出所して同じ状態に戻ったら、再び犯罪を起こしてしまう可能性が高いことは、誰でも想像できると思います。そこで、出所後に福祉サービスにつなぐ制度・機関が必要だとして誕生したのが地域生活定着支援センターです。刑務所にいるうちから本人と面接・調査をし、関係機関に働きかけて、療育手帳を取得したり住まいを探すなど、その人の希望と状況に合わせて出所後に地域で生活できるように手だてをしています。
本人が地域で生活していくためには切れ目のない支援が必要であり、地域の関係する機関が連携して支えていくことが必要だと感じました。
第3回(9月17日) 再犯を防ぐ「関係支援」
講師:牧野賢一さん(NPO法人UCHI理事・所長)、当事者の方
生きにくさを抱える知的障害者の生活を支えてきた牧野さんは、本人を中心にしたつながりづくりを支援することを「関係支援」と称しています。本人の話を受け止めて相互関係を築いていく「精神的支援」と、生活上の問題を本人と解決していく「問題解決支援」を両輪に、本人が周囲とのつながりを増やし広げて、本人らしい暮らしが送れるよう目指します。
支援の一環として、自分の気持ちを出す機会の少ない人たちが、過去と今を振り返り自分の思いを綴る「自分史づくり」に取り組んでいます。この日は出所してグループホームで暮らしている田代さんが自分史を発表しました。これまでの歩みを振り返った後、「今が一番幸せで再犯は絶対したくないので、気をつけて暮らしていきたい」と話すと、参加者からは大きな拍手があがりました。
第4回(9月24日) トラブル・シューターの理念と役割
講師:浦崎寛泰さん(弁護士、東京TSネット代表理事)
浦崎さんは、罪を犯した障害者を、支援する人や制度につなぐ「トラブル・シューター(紛争を解決する人)」の理念について話しました。
この日のメインはグループディスカッション。ある事例をもとに、関係者や家族、本人の発言についてどのように感じたか、誰が何をできるか、グループ毎に意見を出し合いました。福祉事業所で働く人のほかに学生や弁護士の参加もあり、ふだんあまり関わりのない立場の人たちが意見を交わす機会になったようです。
意見交換の後、浦崎さんは支援のポイントとして、本人の意思を尊重すること、丁寧にアセスメントを行うこと、1人(1か所)で抱え込まずにネットワークを作って広げることを挙げ、今回のように考えたりヒントを得る場を増やしていくことが大事だと締めくくりました。
今回、「罪を犯した障害者」というテーマを初めて取りあげましたが、福祉事業所だけでなく司法関係や行政の方などさまざまな立場の方が参加してくださいました。
「罪を犯した障害者」ではなく、「福祉を必要とする障害者」を支援する。障害のある人が地域で新しい生活を始める際に、その人らしい暮らしを続けていくための支援をするのだという視点を学ぶことができました。
次回は11月に開催します。
次回のテーマは「東日本大震災 今こそ求む;ボランティア」。
決定次第、ホームページに掲載します。多くの皆様のお申し込みをお待ちしております。