2011年5月28日
新宿で「認知症の“こころ”を知る」フォーラム開催
5月28日、新宿明治安田生命ホールで、NHKハートフォーラム「認知症の“こころ”を知る---最新の医学とケアの方法---」を実施しました。
第一部では朝田 隆さん(筑波大学 臨床医学系 精神医学 教授)が「認知症を生きる不自由さ--生活障害とその対応--」をテーマに講演。第二部では武田 純子さん(グループホーム福寿荘 総合施設長)が札幌の施設で実践しているケアの報告を中心に、朝田さんとともにパネルディスカッションを行いました。
第一部:認知症を生きる不自由さ
朝田さんは近年の認知症医学の進歩から、アルツハイマー、レビー小体型、前頭側頭型など疾患ごとの特徴が明らかになってきたといいます。MRIやSPECTなどの画像検査によって、それぞれの疾患で脳のどの部分に変化が起きているのか発見する方法について、画像を使って分かりやすく解説しました。
認知症の人が直面する不自由さについては「生活障害」としてとらえることが大切とし、実際の映像を使って明らかにするとともに、ケアのヒントを挙げました。車に乗り込んだものの、座席でないところに座ってしまう人も、いったん車外に出てリセットし、もう一度、車に乗り込むときちんと座席に座れることがある。上着を手渡されても着方が分からない人も、ハンガーをつけたまま渡すと、スムーズに袖を通せることがあるなどの例を示しました。
最後に、認知症はパンドラの箱のように、苦しいことやつらいことがあるが、その先には必ず「希望」があるとエールを送りました。
第二部:医学の成果をケアにいかす
武田さんはまず、この10年ほどでケアが大きく変わったことを語りました。ケアの目標が以前は認知症の人の困った言動を抑えて無害化することにあったが、今ではいかに本人の「生きる」ことを支援するかにかわったというのです。つまり周辺症状を管理するケアから、それぞれの中核症状ゆえの不自由さを減らし、豊かに生活することをめざすケアへと変わってきたといい、具体的な支援の方法について紹介しました。
例えば、「服を着る」という日常生活動作ができなくなった場合の支援は、無意識に行われている動作を細分化し、そのことどこでつまづいているかを知ったうえで支援の方法を考えるといいます。
「服を着る」の場合、
- 「服を着よう」と思う
- 着やすい形にする
- 袖を通す(かぶる)
- 形を整える(ボタンをかけるなど)
という段階があります。
その中でボタンをうまくかけられない人には、「ボタンあっていますか」と一言声をかけるなど、できない部分を支援することで、その行動ができるようになるというのです
また、第一部の講演を受けて、「疾患別」のケアについてもレビー小体型認知症、ピック病についても実践例を紹介しました。
ラジオでの放送予定
このフォーラムの様子を一部、ラジオで放送します。
- 番組:ラジオ第2「ともに生きる」
- 日時:7月17日(日曜日)あさ8時から8時30分