NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

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活動リポート

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2007年7月29日

フォーラム「若年認知症と向き合って生きる」実施しました

NHKでは「認知症になっても、誰もが安心して暮らせる社会」を作るためのキャンペーンを展開しています。その一環として、7月29日(日曜日)に、東京の灘尾ホールで、フォーラム「若年認知症と向き合って生きる〜本人の思い・地域の支え〜」を、実施しました。

写真:会場全景。舞台背景のスクリーンに写真が投影されている。

65歳未満で発症する「若年認知症」の人は、全国に10万人いるとも言われています。40代、50代で発症して退職に追い込まれたり、利用できる福祉サービスがほとんどないなど、さまざまな困難に直面しながら生活しています。
このフォーラムでは、講演や、ご本人へのインタビュー、シンポジウムを通して、ご本人や家族を地域で支えるために必要なとりくみについて話し合いました。

第1部 講演 「僕が"明日の記憶"を書いたわけ」

写真:荻原さん

まず、若年認知症をテーマにした小説『明日の記憶』の作家、荻原 浩さんの講演です。荻原さんは、1997年、『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。2004年、若年認知症をテーマにした作品『明日の記憶』を発表します。この作品は、山本周五郎賞を受賞し、2006年には映画化されるなど、たいへんな反響を呼びました。

荻原さんは、「記憶」というものの不思議さに関心を持ったことがきっかけで、『明日の記憶』を執筆したそうです。執筆の過程で、「認知症は、誰もが経験すること、いつか自分の親が、もしくは自分の配偶者が、何より自分自身が、いつかはかなりの確率で体験することなんだ。他人のことではなくて、全員のことなんだ」と感じたそうです。
また、本の結末に関連して、「私の記憶が消えても、私が過ごした日々が消えるわけではない。私が失った記憶は、私が同じ日々を過ごしてきた人たちの中に残っている、と考えるようになりました」と語りました。

第2部 ご本人へのインタビュー「若年認知症を生きる思い」

写真:高橋さんと中村さん

続いて、若年認知症のご本人、中村 成信(しげのぶ)さんへのインタビューです。聞き手は、香川大学医学部 精神神経医学講座 講師の、高橋 正彦さんです。

中村さんは、57歳。医師の宮永 和夫さん(認知症サポートセンター理事長)から、「ピック病」(認知症の原因疾患のひとつ)と診断されています。
受診のきっかけは、2006年2月、万引きの疑いで逮捕され、勤務先の市役所を懲戒免職になったことでした。本人には万引きした記憶がなく、ご家族が「おかしい」と感じて受診したのです。診断結果をもとに、市の公平委員会に懲戒免職処分の取り消しを求めています。
中村さんは、「懲戒免職という形で辞めざるをえなかったということが、非常に自分の中では悔しいです。病気だって事がわかっても、自分の中では、まだまだやれることが少しでもあるんじゃないかなって思っています。自分の能力が活かせて働ける仕事があればやってみたい、という気持ちがあります」と語りました。

第3部 シンポジウム「若年認知症の人と家族を地域で支えるために」

写真:池田さん、牧野さん

第3部は、まず、池田 学さん(熊本大学大学院 医学薬学研究部 脳機能病態学分野(神経精神科)教授)が、講演しました。診断上の注意や原因疾患などにふれ、「老年期の認知症の知識だけ持って、若年認知症の方と向き合ったのでは、合わない点がいっぱい出てきます。診断、治療、ケア、すべてにおいて、若年認知症固有の特徴を理解しておくことが必要です」と語りました。

続いて、池田さんと牧野 史子さん(NPO法人 若年認知症サポートセンター 理事)がコメンテイターとなり、若年認知症の人と家族を支える実践の3つの報告をもとに、話し合いました。報告したのは、次の方々です。

写真:大沢さん、勝野さん、内藤さん
  1. 家族会によるサポート: 大沢 幸一さん(若年認知症ぐんま家族会副代表)
  2. 手作りミニデイサービス: 勝野 とわ子さん(首都大学東京大学院 人間健康科学研究科教授)
  3. 社協がコーディネイトする地域サポート・ネットワーク: 内藤 明美さん(練馬区社会福祉協議会 元ボランティア・コーディネイター)

第3部の、池田さんの講演とシンポジウムの抄録は、こちらからご覧いただけます。


主催

NHK厚生文化事業団、NHK、NPO法人 若年認知症サポートセンター

後援

若年認知症家族会「彩星の会」、若年認知症家族会「朱雀の会」、若年認知症ぐんま家族会、若年認知症支援の会「愛都の会」、北海道若年認知症の人と家族の会(北海道ひまわりの会)

 

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