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NHK厚生文化事業団は、NHKの放送と一体となって、誰もが暮らしやすい社会をめざして活動する社会福祉法人です

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“若者の自立就労支援 〜にこまる食堂の取り組み〜”

写真横浜市磯子区に、不登校・ひきこもり・ニートや発達障害・心の病気など、さまざまな理由で生きづらさを感じたり、働くことが困難な若者たちを支援している食堂があります。

カレーやどんぶりなどのランチが250円からという安い値段で食べられる250(にこまる)食堂です。

食堂で若者の就労支援

写真 平日の12時すぎ、にこまる食堂を訪れると、10人くらいのお客さんがランチを食べていました。

普通の食堂と何ら変わらない雰囲気ですが、この「にこまる食堂」で働いているのは、引きこもりやニートなどの生活から社会復帰を目指している若者たちです。
これらの訓練生は、“ジョブスタッフ”と呼ばれる若者を指導・サポートするリーダーから、接客や調理を教わりながら実際に働くことで、社会に出るための技術や経験を身につけていきます。

写真 食堂の利用客は、近所に住む若いお母さんや、近隣の会社で働く人たち、通りがかりのドライバーなどさまざまです。

にこまる食堂は誰でも利用することができますが、食事をするためには、最初に年会費1000円の寄付金を払い会員カードを作る必要があります(会員にならない場合は食事代に加えて50円の寄付金を払います)。この寄付金は、食堂の運営や若者の職業訓練などの活動費として使われます。

写真
店頭にこうした食堂の利用方法を書いた大きなポスターを貼ったり、活動内容についてのパンフレットを置くことで、若者の自立就労支援が目的の食堂であることを大きく提示しています。ただの安売りの食堂と勘違いされないよう、また、地域の理解と協力を得られるようにするためです。ホームページやブログなどに活動報告も掲載しています。

写真プルコギ丼(250円)と、みそ汁(50円)。野菜や肉はしっかり味付けされており、多めに盛られたご飯と温かいみそ汁でお腹いっぱいに 「250円で温かくておいしいごはんがお腹いっぱい食べられるように」
というコンセプトのもと考えられたメニューは、メインのおかずとご飯だけでも15種類以上。

カレー、チャーハン、うどん、どんぶり、定食などは250円〜450円。みそ汁やサラダなどのサイドメニューは50円〜100円くらいで食べられます。

にこまる食堂で働く訓練生とスタッフは4〜6名ほどですが、実際にはもっとたくさんの人が関わることで運営されています。食堂で出している豊富なメニューの考案から食材の調理など、にこまる食堂を幅広く支えているのが「アロハキッチン」です。

アロハキッチンは、同じ横浜市内の高校の学食内にあり、学食の調理を請け負うかたわら、その広い厨房を活用して、にこまる食堂の料理の下ごしらえを行うセントラルキッチンとしての調理作業も行っています。

写真撮影:K2インターナショナルジャパンここでも20名から25名が就労訓練を受けています。不登校や引きこもり、ニートなど自分だけの力では働けない状態にある若者たちが訓練を受けていますが、その背景には、発達障害や知的障害、精神疾患などの原因があったり、家庭の問題で深い悩みを抱えているなど、さまざまな理由があるといいます。料理をしたことがなければ、包丁も持ったことのない人も少なくありませんが、ジョブスタッフやボランティアが親身にサポートしています。

仕事の技術や経験が身についてきた訓練生は、有給のスタッフとして働くようになります。仕事の内容も調理作業だけでなく、にこまる食堂で接客の仕事をするなど、少しずつステップアップしていきます。また、ほとんどの訓練生は親元を離れて寮生活をしていて、生活そのものの自立も目指しています。

地域の協力が支える食堂

にこまる食堂が安く食事を提供できる理由は、食材の仕入れにあります。
にこまる食堂の活動に協力したいと、全国から食材の寄付が届いているのです。農家や家庭菜園で作った野菜やお米、余った贈答品の油や缶詰など、送られてくるものはさまざま。
メニューに合わせて食材が手に入るわけではないので、多くもらった物は冷凍保存したり、料理に添える野菜を日によって替えるなど臨機応変に対応しています。

にこまる食堂を運営する、株式会社K2インターナショナルジャパンは、20年以上も若者の支援に取り組んできた団体です。

写真 プロジェクトリーダーの岩本真実さんにお話を伺いました。

「この活動って実は、支援する側と支援を受ける側との境があまりないんです。
アロハキッチンを手伝ってくれるボランティアの人の中には、自分自身も訓練生と同じような悩みや課題を抱えている人もいますし、訓練生の親御さんで若者たちと一緒に働くことで元気になり、子どもへの理解を深めて帰っていく人もいます。訓練生と同年代の学生ボランティアもいますし、高校生が職業体験で来ることもあります」

「また食堂について言えば、全面的に“若者の自立就労支援”ということを打ち出してお店をやらせてもらう代わりに、安い値段で食事を提供しています。そして値段を安くする代わりに、寄付や食材を提供してもらっています。
単に“若者は大変なんだから協力してよ”というのではなくて、支援する側の人にもメリットを感じてもらうことによって、私たちも“こうした活動をしているんだ”と、堂々と発信していくことができています。
さまざまな人の協力を得て、地域のコミュニティカフェのような感じで運営しているのが、“にこまる食堂”なんです」

若者支援は他人事じゃない

「日本全体が働きづらい世の中になっている今、不登校、ひきこもり、ニートなどは決して特別な存在ではないし、他人事ではない」と岩本さんは言います。

仕事に就いても短期間ですぐに辞めてしまう人や、仕事はできるのに激務や人間関係などに悩まされて身体や心のバランスを壊してしまった人などは、決して特別なケースではないような気がします。“働くことが困難になる”という状況は、どんな人にも起き得ることではないでしょうか。

誰にでも可能性のある問題だからこそ、特定の団体が特定の人にだけ支援を行うだけではなく、地域全体、社会全体で考えていくことが必要なのかもしれません。

2011年11月25日掲載  取材:小保形

後編では、支援を受けながら社会復帰に向けて動き出す若者たちをリポートします。 →後編へ


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