「認知症とともに生きるまち大賞」では、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりの取り組みを募集していましたが、今年度は、コロナ禍ならではの取り組みなど、全国から26の事例が寄せられました。ご応募いただいたみなさま、ありがとうございました。先日行われた選考委員会の結果、表彰団体が決まりました。団体の活動紹介を兼ねた表彰式を12月13日(日曜日)、オンラインで開催します。表彰式では各団体の取り組みについて動画を交えて紹介するとともに、選考委員のみなさんと「認知症とともに生きるまち」を考えるフォーラムも行います。どなたでも参加できます!


選考基準は、
(1)共生社会に向けた先駆性、オリジナリティー
(2)認知症当事者が望む活動を本人が共に進めているか
(3)活動が多様な人々と共に進み、地域に広がっているか
(4)他の地域への応用可能性
の4点。
26の応募事例はどれも甲乙つけがたく、選考は難航しましたが、選考委員の合議により下記のとおり6団体を表彰することに決まりました。

本賞

楽しみながらつながる地域共生社会を目指して

ファーム・エイド東五反田(東京・品川区)

地域住民(認知症の本人、障害者も)、医療、介護、学生、地元商店など様々な人たちが「楽しみながらつながり作りをする場」として2018年に立ち上げた取り組み。本人が企画段階から参画し、本人の講演会や、マルシェでの調理や物販、体験会など多彩な活動が生まれ、地域を盛り上げている。来場した本人が、自分の思いを発するきっかけにもなっている。 
こうした中、グループホームで暮らす本人がかつて書道を教えることを生きがいにしてきたことがわかり、本人が入居者や地域の子どもたちに「書道教室」を開いて活躍するようになるなど、本人と地域との日常的な交流が育ってきている。
 今年度は、コロナ禍だからこそ準備過程で交流しよう!とファーム・エイド開催に踏み切り、本人同士の講演会を区のケーブルテレビで放送したり、オンラインでも発信するなど新たな連携も生まれている。「今」を「豊か」に生きることを一人ひとりが実践しながら、地域共生社会づくりが一歩一歩進んでいる。


認知症になっても自分らしく明るく楽しく暮らしたい

「ヒデ2」とその仲間たち(神奈川・鎌倉市)

57歳でアルツハイマー型認知症の診断を受けた男性と地元の認知症支援団体の代表がお互いにギターが好きなことをきっかけにフォーク・デュオ「ヒデ2(ヒデツー)」を3年前に結成。以来、神奈川県内を中心に100回を超えるライブや講演「認知症について認知症の人から学ぼう!」を続けている。活動場所は認知症カフェ、イベント会場、講演、路上など様々。レパートリーは70年代フォーク。依頼を受ければどこへでも行くという活動の原動力は、「認知症になっても、今できることを自分らしく楽しく実行する」ということ。
ヒデ2に触れた保育園児やその親世代、高齢者、医療介護職など幅広い人々から「認知症のイメージが変わった」、「元気をもらった」などの感想が多数寄せられている。最近のライブでは、メンバーの2人だけでなく他の本人や介護従事者などとのセッションも行われ、仲間の輪が広がっている。
コロナ禍が続くこれから、呼吸を合わせ互いにサポートしあいながらみんなの心に響くハーモニーを奏でる姿が、各地にも広がっていくことが期待されている。


出会いと情報の拠点=Go To 図書館!

マスターズCafe~図書館との協働プロジェクトで始めた認知症カフェ~(大阪・阪南市)

阪南市立図書館は、認知症の本人やその家族、図書館ボランティア、市職員等とともに2年前から館内で毎週1回認知症カフェを行っている。図書館利用者をはじめ誰でも気軽に利用できるコミュニティカフェである。市内公共施設として最も来館者が多い図書館の特徴を活かして、「認知症の情報を入手できる、本人や家族に出会うことができる、必要なら認知症の経験者や専門職、市職員に相談にものってもらえる、ここで本人も家族も活躍できる、生きがい・役割ができる」、そんな一体的な機能を育ててきており、「認知症になっても大丈夫」と思ってもらえる場を目指している。図書館職員も毎回本人や家族等の声を聴くことで「わが事」になり、利用者にカフェの紹介や相談のつなぎができるようになった。
コロナ禍で、カフェは一時休止したが、休止期間中もサポートする市の認知症地域支援推進員がオンラインミーティングを開いたり、「コロナに負けないルールブック」を作成してカフェを再開し、多くの利用がある。
市内の聴覚障害者協会と手話サークルによる「手話カフェ」も始まり、認知症カフェの経験者であるマスターたちが運営に協力しており、地元図書館を拠点に地域共生を生み出す活動が進化を続けている。


ニューウェーブ賞(特別賞)

本賞とは別に、時代の先駆けとしての活動のユニークさと、これからの活動の広がりや進化への期待を込めて、ニューウェーブ賞として2団体を表彰します。

介護者同伴トイレを増やして外出支援

Dトイレプロジェクト(東京・町田市)

「認知症の妻との生活で一番つらかったのは外出時のトイレ問題。下着の着脱が出来ないので自分も一緒に入れるトイレがほしい」。認知症カフェでのある男性の声がきっかけで活動をスタート。街中の病院、薬局、企業などと交渉して、認知症の人の外出の際に介護者同伴で気軽に利用できるトイレに「Dトイレステッカー」と説明文を掲示する取り組みを続けている。
目下、トイレの数を増やすことに努めながら、Dトイレツアーを実施して、トイレの場所を周知したり、市内の認知症や障害者のイベントでの発表などに取り組んでいる。
今後は、Dトイレの普及とともに、本人自身の声を聴きながら、本人も家族も地域の人たちも安心して、「一人歩きを楽しめる」ための町中トイレの開拓を期待したい。


認知症の人の声をオンラインで発信

borderless-with dementia-(愛知・名古屋市)

コロナ禍で通常の認知症カフェの活動がままならない中、週一回、オンラインによるミーティングをスタート。次第に参加者が増え、毎回、認知症の当事者とその家族20組ほどが参加し、情報交換を行っている。加えて、認知症の人がオンライン講演をしたり、企業のオンライン研修で登壇・発信したり、オンラインによるピアサポート活動を始めるなど、必要に迫られて使い始めたオンラインツールを逆手にとって、つながりあってともに学び、本人が社会参加しつつ新たに活躍する機会としても発展中だ。


市民の募金で認知症啓発川柳

高鍋町社会福祉協議会(宮崎・高鍋町)

「めざせ! 認知症に優しい町・高鍋」を旗印に、4年前からテーマ型の募金を開始。「資金がないからできない、やらない」ではなく、「ない資金を集める過程を通じて」、町内の企業や団体、一般市民、こどもたちの関心を喚起している。集まった募金を元手に「認知症架け橋川柳」の募集事業を実施。毎年、子どもから高齢者まで多数の川柳が寄せられ、「どこ行くの いっしょに行くよ 大丈夫」、「ただ聴いて うなずくだけで いい笑顔」・・など、ひとつひとつに認知症になっても安心して暮らせる地域にしたいという思いが込められ、理解と自然な支えあいが広がっている。受賞作品をのぼり旗にして人の集まる町内の様々な場に掲げたり、町職員が受賞した川柳をプリントしたTシャツを着て仕事をするなど、町をあげて自分事として、認知症とともに生きるまちづくりに参画している。新型コロナ感染拡大が続く中でも、地道で息の長い活動を続けている。


NHKハートフォーラム<オンライン>
「コロナの時代が拓く“認知症とともに生きるまち”」

表彰団体の方々にはリモートで参加いただき、それぞれの活動紹介を兼ねた表彰式を行います。各団体の先駆的な取り組みを映像を交え、選考委員の方々とともに丁寧に紹介するとともに、「認知症とともに生きるまちづくり」について考えるフォーラムも行います。オンラインでの配信となりますので、全国どこからでもご参加いただけます。「認知症とともに生きるまちづくり」について一緒に考えてみませんか。

日時

2020年12月13日(日曜日)午後1時~3時30分

開催形態

インターネットでのライブ配信

(※会場での観覧はできません)
*インターネットに接続された環境下にあるパソコン、スマートフォンなどから参加できます。
*参加申込された方には、参加に関する準備について、事前にお知らせいたします。
*Wi-Fi(無線)接続の場合、状況により映像や音声が途切れる場合があります。長時間になりますので、3G/4G/LTE回線等で参加いただくと、データ通信量が決められた上限に達してしまう場合がございますのでご注意ください。
*参加者ごとに個別のパスワードをお送りしますので、お一人ずつ事前申込が必要です。

申し込み

締め切りました。

定員

先着500名

選考委員

永田 久美子(認知症介護研究・研修東京センター研究部長)
延命 政之(弁護士)
鈴木 森夫(認知症の人と家族の会 代表理事)
丹野 智文(オレンジドア代表)
町永 俊雄(福祉ジャーナリスト)
星野 真澄(NHK制作局 文化・福祉番組 専任部長)

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