名古屋ベルーガ「水中サウンドシステムで楽しくシンクロ!」
愛知県名古屋市の「名古屋ベルーガ」は、障害がある人たちのシンクロナイズドスイミングのチームです。身体や知的に障害がある人たちが、毎年開催される障害者シンクロの全国大会を目指して、楽しく練習に励んでいます。
第25回「わかば基金」では、練習に欠かせない水中スピーカーを支援しました。水中で音が聞き取りやすくなって、振り付けのタイミングがあうようになり、メンバーの意欲の向上にもつながっています。
障害者シンクロとの出会い
「名古屋ベルーガ」は1997年に発足しました。現在コーチを務める杉浦 真代さんに、シンクロナイズドスイミング(以下、シンクロ)の経験があることがきっかけで始まりました。
発足当初のメンバーは、股関節疾患や手足にまひがある人など、主に身体に障害のある人たちでしたが、最近では知的障害のある人も増えています。また、障害者シンクロは障害のない人との混成チームを作って出場できるので、メンバーの家族やシンクロに興味のある人も参加するようになり、現在のメンバーは総勢30人にのぼります。
楽しみながら徐々にレベルアップ
シンクロには、規定の基本の型を正確に行う「フィギュア競技」と、音楽に合わせて泳ぐ「ルーティン競技」があります。障害者シンクロは、ルーティン競技のなかでも自由度の高い「フリールーティン」が主で、年齢・性別・障害の種類の制限もありません。毎年5月に開催される障害者シンクロの全国大会をめざして、毎週土曜日の夜、音楽にあわせて思い思いに泳いだり、基本的な技を磨いています。
ベルーガで唯一のシンクロ経験者の杉浦さんは、“楽しく泳ぐ”をモットーに、メンバーのペースにあわせて指導を続けています。“楽しく泳ぐ”ために欠かせないのが音楽ですが、数年前から水中スピーカーやアンプの不調がおこるようになりました。古い機種で修理は困難なうえ、実費程度の会費では機材の購入資金はとうてい捻出できません。家庭用のポータブルプレーヤーを代用するものの、プールという広い場所では音量を最大にしても音は聞こえづらく、振付がうまく合わせられなかったり、気持ちがのらないメンバーもいたりで、楽しめない状況が続いていました。
新しい機材で 新しい演目に挑戦
助成してくれる団体がないかと探していたベルーガは、インターネットで「わかば基金」を知って第25回第1部門に申請、水中サウンドシステム購入費用の支援が決まりました。
「支援決定後、早々に購入させていただきました。やはり聞こえ方が全く違いますね。知的障害のあるメンバーは、音楽が楽しくて練習に来ている部分もあるくらいです。これを機に、新しい演目を増やして次の全国大会に臨みたいと思っています」と、杉浦さんは支援決定の喜びを話していました。ゆくゆくは、希望者を対象に体験会などを開いて、機材をひろく活用すると同時に、障害者シンクロの普及をはかりたいとも考えているそうです。
継続は力なり 心身面の向上も
練習を続けるうちに技や泳力が高まるのはもちろんですが、心身面にもいい影響があるようです。身体に障害のあるメンバーには、首の筋力がついて頭を持ち上げられるようになったり、体力がついて術後の回復が早くなったと主治医に言われた人もいるそうです。また、知的障害がある人には、音楽にのって泳いでいるうちに水に顔がつけられるようになったり、人との関わりを嫌がらなくなった、という変化があったそうです。
ふだんの生活では障害の有無によって介助する側・される側という立場にわかれがちですが、水のなかではシンクロを楽しむ仲間同士。全国大会出場という目標に向かって、メンバー一丸となって楽しみながら練習を続けています。
(2014年3月3日記)
「名古屋ベルーガ」は、第25回(平成25年度)第1部門の支援グループです。
連絡先や活動内容については、名古屋ベルーガのホームページをご覧ください。