トライギア「パソコンで、仕事も仲間も増えました」
北海道札幌市の特定非営利活動法人トライギア 事業所『スペース=希望』は、障害がある人たちの就労訓練の場です。精神障害や知的障害のある人たちが、飲食店での食品製造・販売・接客などを通して、仕事の経験を積んでいます。
第24回「わかば基金」でリサイクルパソコンの寄贈を受け、飲食店のチラシやプライスカード作りに活用しています。また、企業からパソコンを使った仕事を受託できるようになり、新たな仕事の獲得にもつながりました。
地域に根差した事業所を作りたい
特定非営利活動法人トライギア 事業所『スペース=希望』の発足は2012年5月。福祉施設の職員や、福祉施設でボランティアをしていた会社員や主婦たちが、精神障害のある人を支援する場を立ち上げようと集まり、就労訓練の場としてオープンしました。あなたとわたしと地域社会、この三者(tri)をつなぐ歯車(gear)になりたい--「トライギア」という名称は、そうした思いから名づけられています。
オープンにあたり、地域の引きこもりがちな青年をボランティアとして迎え、障害のあるメンバーと一緒に働いてもらえるようにしたところ、2人が定期的に参加するようになり、今年の春からはトライギアのスタッフとして働いています。
メンバーが意欲的に取り組める作業を パソコンの獲得
事業所『スペース=希望』は、ドリンクやランチが楽しめる飲食店で、お昼時には地域の高齢者たちでにぎわいます。開店して以降、徐々に“常連”のお客さんも増えていきました。
しかし、スタッフには気がかりなことがありました。ランチタイムを過ぎると、ぱったりと客が来なくなってしまうのです。雪の降る季節になったら、ますます客足が遠のいて仕事が減り、メンバーが働く意欲を維持できなくなってしまうのではないか--。こうした心配を解消するため、製造・接客・販売以外の新たな作業を創り出そうと考え、本人達からも要望が出ていた「パソコン」を使った就労訓練ができればと考えるようになったそうです。
パソコンが増えた 仕事が増えた
そこで第24回「わかば基金」リサイクルパソコン部門に申請したところ、3台のリサイクルパソコンの寄贈が決まりました。
現在、事業所『スペース=希望』では2台を使用しています。以前は自宅にパソコンがあったというCさんは、嬉々としてパソコンを操作し、チラシやプライスカードを作っています。パンの成分表示のラベルシールも作れるようになるなど、作業の幅が広がっています。
また、冬場には、パソコンを得意とする職員が“先生”となってパソコン教室を開き、パソコン初心者のメンバーもじっくり学ぶことができました。
そして残る1台は、今年1月から新たにはじまった仕事に利用しています。
システムエンジニアだった職員がいることから、企業からソフトウエア開発の仕事を委託されるようになりました。利用者1名と職員が、毎日リサイクルパソコンを持参して企業に出向いて働いています。「ノートパソコンがあったから仕事を受けることができましたし、メンバーはパソコンの性能がいいから作業がしやすいと言っています」と事務局の宮脇 恵美子さんは話していました。
地域で支え合える存在をめざして
事業所『スペース=希望』のメンバーは、この1年で7人から16人に増えました。当初は精神障害のあるメンバーが中心で、服薬していたり睡眠障害があるために体力面が不安なメンバーが多かったのですが、知的障害のある人や学校を卒業したばかりの若い人が加わったため、身体を動かす仕事も求められるようになってきました。
そこで、第3の仕事として、農業支援に取り組もうと準備を進めています。
札幌市でも、農家の戸数や耕地面積は年々減少しており、その要因として農家の高齢化や後継者不足が挙げられています。農家の繁忙期に必要な労働力を提供することで仕事を獲得し、農業を通して地域の人たちとさらに交流を深めることができれば、と考えています。
昨年芽吹いた「トライギア」は、周囲の人たちに支えられてぐんぐんと枝葉を伸ばしています。
(2013年8月14日記)
特定非営利活動法人トライギア 事業所『スペース=希望』は、第24回(平成24年度)第2部門の支援グループです。
住所:北海道札幌市厚別区厚別西2条2丁目6号モンファーレット1階
電話:011-895-7477
活動内容:障害のある人の就労訓練