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わかばなかま

支援団体の活動リポート

マイペースプロジェクト「きみに届け、歌にこめた僕らの思い」

滋賀県大津市の「マイペースプロジェクト」は、不登校を経験した滋賀県出身の3人組のバンドとそのバンドを支えるメンバーが立ち上げたNPOです。学校に登校できなかったり、自分に自信を持てずにいる子どもたちの力になりたいと、滋賀県内を中心に、歌と語りに映像を織り交ぜたライブ活動をしています。
第24回「わかば基金」の支援で彼らが購入したのは、なんとこのライブ活動に使う音響機材。福祉施設や学校などに持参してライブを楽しんでもらいながら、不登校の体験やその頃の思いを伝えて多くの子どもたちを励ましています。

画像:マイペースプロジェクトのライブのようす

歌い語り思いを伝える 元不登校児の講演会Live

「マイペースプロジェクト」は、3人組のバンド「JERRYBEANS(ジェリービーンズ)」と、音響や映像、広報などを担当するメンバーの11人で活動しています。
「JERRYBEANS」の3人には不登校の経験があります。学校に行かないことへの後ろめたさや周囲との葛藤…家族や仲間に支えられ、音楽と出あい、次第に自分らしく生きることに前向きになった彼らは、1998年にバンドを結成、メジャーデビューを目指して上京しました。

画像:マイペースプロジェクトのライブのようす

音楽活動に自分たちの体験を盛り込むようになったのは、地元の養護学校の先生の依頼で、不登校をテーマにしたライブを開いたのがきっかけです。ライブ終了後、「生きててよかった」と観客の少女に泣きながら握手を求められ、辛かった不登校の体験が誰かの役にたつことを感じたそうです。2006年に活動拠点を滋賀に移してから、不登校の頃の言えなかった思いやエールを込めて3人が作詞作曲する歌と、語りを組み合わせたライブ活動(通称:講演会Live)が口コミやインターネットで知られるようになり、県内を中心に依頼が舞い込むようになりました。
より多くの人たちに自分たちの体験と思いを伝えたい。思い悩む子どもたちを励ましたい。自分たちならではのライブを多くの人たちに届けるため、2011年11月にNPO法人を立ち上げて本格的に活動をスタートしました。

依頼は断りたくない。依頼を諦めてほしくない

画像:舞台を見守るバックメンバーたち

「マイペースプロジェクト」は、メンバーそれぞれがアルバイトなどで生計を立てながら手弁当で行っている活動で、資金的な余裕はありません。ライブがメインの活動にも関わらず自前の音響機器を揃えることができないため、公演の依頼が入ると音響機材をレンタルして、そのレンタル代を依頼主に負担してもらう形をとっていました。
しかし、福祉施設や学校などはその経費が負担できずに開催を諦めるケースが少なくありませんでした。また、レンタルできる機材は毎回同じ機種とは限らず、そのつど操作に手こずったり専門の人を雇う必要が生じたりと、「マイペースプロジェクト」にとっても機材のレンタルは大きな負担になっていました。
自前の機材の購入はメンバーの悲願であり、第24回「わかば基金」第1部門で音響機材の支援が決まったときには、メンバー全員で大喜びしたそうです。

支援でライブの幅も広がった

新しい真っ黒な機材に貼られた白地に緑色の「わかば基金」のシール。購入した機材の目立つところにシールを貼り、その喜びを写真にとって報告してくれました。 画像:支援した機材 今回の支援により、照明機材も揃いました。音質豊かな生の演奏に、視覚に語りかける映像、そこに照明が加わり、ライブの雰囲気をいっそう盛り上げます。参加者からは「こんなに本格的なライブが楽しめると思わなかった」「すばらしい演出に感動した」といった感想が寄せられているそうです。

画像:JERRYBEANSの3人とコーラスのYOKKO

「自前の機材が揃えられて本当に嬉しいです。レンタルの経費を気にせずに依頼を引き受けられますし、照明機材も揃ったので、講演会Liveでの伝え方の幅が広がりました」。リーダーでベース担当の八田 典之さんは、支援の効果をこのように話し、一緒にいたボーカルの山崎 史朗さんとドラムの山崎 雄介さんが大きくうなずいていました。また、手話コーラスを担当するyokkoさんは、「ワイヤレスマイクも購入してもらえたので、マイクスタンドを気にせずに手話や身振りができるようになりました」と嬉しそうに付け加えていました。

1つ1つのライブ、1つ1つの出会いを大切に

「マイペースプロジェクト」では、NPOの立ち上げ以来100回を超えるライブを開催してきました。退職する先生へのサプライズパーティーとして中学校の生徒と一緒に歌を贈ったり、余命宣告を受けたファンのためにホスピスでの一期一会のライブを家族と準備したり、障害のある人が自分の思いを発表する時間をライブの中で設けたり…。子どもたちに自分たちの思いを伝えるだけでなく、参加者に応じて、依頼側の思いも盛り込んで、オリジナルの「講演会Live」を作りあげていきます。

画像:ドラムの山崎雄介さんとコーラスのYOKKOさん 画像:ボーカルの山崎史朗さんとベースの八田典之さん

八田さんは、「1つ1つのライブを大切にしながら、今年度も100か所開催を目指そうと話しています」とこれからの目標を語ってくれました。
より多くの人に活動を知ってもらえるように、また、不登校や引きこもりでライブに出向くことができない人向けに、ネットでのライブの配信も始めました。

自分たちのペースで自分たちらしく。活動の場が県外にも広がりつつある「マイペースプロジェクト」、あなたの街でライブが聞ける日もそう遠くないかもしれません。
(2013年5月21日記)

「マイペースプロジェクト」は、第24回(平成24年度)第1部門の支援グループです。
連絡先や活動内容については、マイペースプロジェクトのホームページをご覧ください。