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わかばなかま

支援団体の活動リポート

はじめの一歩「地元の特産を生かして、障害のある人の就労と社会参加を後押しします」

香川県高松市にある「はじめの一歩」は、地元の特産品を活用して、知的な障害のある人の就労や社会参加を支援するNPO法人です。
特産品の庵治(あじ)石を加工した置き物の制作・販売や、お墓の掃除などを行っています。
「わかば基金」の支援金で、石磨きの工具を購入し、障害のある人が“講師”を務める「石磨き出前講座」を始めました。 画像:幼稚園での石手磨き講座の様子

福祉施設の思いと地元産業をつなぐ

「はじめの一歩」の所在地である高松市庵治(あじ)町は、全国的に名高い庵治石の産地として有名です。
庵治石は、硬度が高くて風化や変質に強く、高級石材として石碑や墓石に使われています。
代表の滝内 志保さんは、庵治石のインテリアを製作・販売する有限会社の代表でもあります。知り合いの福祉施設の職員に、「地元の特産をいかした製品を作りたいのだが…」と相談されたのをきっかけに、庵治石を使った製品の開発や販売を手伝うようになりました。
そして2008年9月、物づくりを通して障害者の就労や社会参加を後押しするNPO法人「はじめの一歩」を設立しました。活動を進めるうえで、福祉施設と地元の石材企業との橋渡しをすることも大きな役割です。

作業しやすく、達成感を味わえる物づくり

製品の材料となるのは、石材企業が商品を作った際にコストをかけて廃棄していた庵治石の端材です。これを、企業や職人の協力で加工しやすい状態にして、もらい受けています。それを、障がい者就労支援施設「きらり」(庵治町)のメンバーが、製品に仕上げていきます。

画像:石を磨くオリジナル工具 画像:支援金で購入した工具類

メンバーのメインの作業は石磨きです。目の粗さの異なる5種類のサンドペーパーを使って磨きますが、ペーパーを変える頃合いを判断するのは知的障害のあるメンバーには難しいため、時間で区切って作業します。磨き続けていくと、石の表面は次第に滑らかになり、光沢が出てきます。根気のいる作業ですが、この石の変化が達成感につながります。
手先が不器用だったり、力が入らない人でもうまく砥石をかけられるように、スタッフはハンドルをつけたオリジナルの工具を考案しました。簡単にサンドペーパーを着脱して交換でき、片手でハンドルを握って磨くことができるため、障害のあるメンバーがより主体的に作業できるようになりました。

物づくりのツールから、地域交流のアイテムに

平成22年度(第22回)の「わかば基金」第1部門では、このオリジナルの手磨き工具を揃えるための費用を支援しました。
「はじめの一歩」では、特産品を通して地域との交流を図りたい、特産品を知ってもらいたいという思いから、地域の住民を対象とした庵治石を使った体験教室も行っていました。

画像:保育園での石手磨き講座の様子

「石磨きの技術を習得したメンバーに体験教室の講師役を任せてみよう。そうすれば、特産品を知ってもらうと同時に、地域の人たちと障害のある人たちとの交流も図れるのではないか。そのため、受講者用の工具をそろえたいと考えたのです」。滝内さんは、申請の理由をこう話してくれました。
支援金により工具20セット分を揃えることができ、保育園と幼稚園で「庵治石手磨き出前講座」を行いました。メンバーは“石のおじちゃん”“手磨きせんせい”と子どもたちに受け入れられ、一緒に石磨きを楽しみました。対人関係が苦手なはずのメンバーが、自分から園児にアドバイスをする光景も見られたそうです。

活動を広げて 一石三鳥をめざす

画像:お墓の清掃をするメンバーたち 「はじめの一歩」では、2010年12月から、お墓清掃の代行・お手伝いをする「ぼちぼちお掃除隊」も始めました。障害のあるメンバーたちのさらなる仕事の場を創り出すと同時に、庵治石が製品(墓石)になった後も長く守り続けたいという思いが込められています。
活動が広がるほどに、障害のある人の就労の機会、地域との交流の機会、庵治石のPRの機会が増えていくことが期待されますが、今はまだ活動を受け入れてくれるところが限られているそうです。これからは、情報発信に力を入れて活動の賛同者や協力者を広く募り、さまざまな人たちの協力を得ながらゆっくりと進んでいきたい、と滝内さんは考えています。

「はじめの一歩」を踏み出して3年目、その歩みは地域で着実に続いています。

(2011年4月12日記)

特定非営利活動法人「はじめの一歩」は、第22回(平成22年度)第1部門の支援グループです。
連絡先や活動内容については、「はじめの一歩」のホームページをご覧ください。