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わかばなかま

支援団体の活動リポート

兵庫盲ろう者友の会「自らの力で情報収集を!パソコンで可能性を広げています」

神戸市にある「兵庫盲ろう者友の会」は、盲ろう者の自立と社会参加の支援と、盲ろう者の存在をより多くの人に知ってもらうための講演活動や支援者の養成を行っています。
「わかば基金」でリサイクルパソコン3台を贈呈、盲ろうの会員が自らの力で情報を得たり、他者とのコミュニケーションがとれるよう、パソコン技術の習得に取り組んでいます。

写真:パソコンに挑戦する盲ろう者と支援者

設立への思いを強くした阪神・淡路大震災

「兵庫盲ろう者友の会」の設立は平成8年。その前年、設立に向けて動き出していたところに、阪神・淡路大震災が発生。一人暮らしをしていた初代会長の吉田 正行さんが神戸市内で被災しました。ご自身も盲ろう者であるため、情報を聞きだせず周囲の状況も見てとれないといった困難を体験したことから、自分と同じ立場にいる人が他にもいるに違いないと、各方面に足を運んで情報を集め、探し出したのが現在の会員です。

盲ろう者は、見えない聞こえないという大きな不安のために家にこもりがちな人が多いことから、友の会では、交流会や生活訓練などを行い、いきいきとした生活を送れるよう支援をしています。同時に、より多くの人にその存在を知ってもらうための講演会や支援者養成講座の開催も行っています。
また、会を立ち上げて当事者団体として行政へ働きかけたことによって、盲ろう者の存在が県や市から認知され、通訳や介助員派遣の制度化にもつながったのだそうです。

情報を「待つ」のではなく、自ら「得る」ために

盲ろう者が情報を得る手段は、指点字や手書き文字による通訳・介助者からの伝達が中心です。
パソコンでインターネットやメールができれば、自ら情報を収集することも、他者とコミュニケーションをとることも可能になります。パソコンは盲ろう者の可能性を広げる――そう考えて、平成20年(第20回)「わかば基金」リサイクルパソコン部門に申請、3台の寄贈が決まりました。

写真:弱視の人が利用する拡大画面 パソコンは、使用する人の状態にあわせて環境設定を変えます。弱視の人の場合は背景色を変えて文字を大きく表示したり、全盲の人なら点字ディスプレイと接続したり。例えば、Aさんは視覚障害者用のソフトを入れて使用。点字にならって6つのキーで文字を入力、起動や終了の操作もすべてキーボードで行っています。
会員からは「目が見えているときにできたことができるようになりたい」「いろいろ教えてほしい」といった声があがっており、パソコンの寄贈が意欲の向上につながっているようです。

写真:点字ディスプレイ ちなみに、この原稿の作成にあたっては、まず質問を友の会宛にメールで送信し、それを事務局スタッフが会員に通訳。会員が回答し、スタッフが書き起こしたその内容をメールで送ってもらいました。会員自身がメール機能を使いこなせるようになれば、通訳を介さずにメールの送受信で直接やりとりすることが可能になります。

仲間も支援者も増やしたい

盲ろう者は、コミュニケーションの方法も、持っている能力も人それぞれです。盲ろう者がパソコン技術を習得するためには、盲ろう者向けのパソコン知識と、盲ろう者の特性とコミュニケーションへの理解の両方を有する人材を育成することが必要です。そのため、寄贈パソコンを利用して、「パソコン指導者養成講座」も開催しています。
厚生労働省の身体障害者実態調査(平成18年)によると、全国の盲ろう者数は約22,000人、そのうち兵庫県内には約900人いると推測されています。個人情報保護の観点から情報提供が得られないことと、その障害ゆえに本人に情報が行き届かないために、友の会で把握しているのはまだ40人足らずなのだそうです。

県内のどこかにいる仲間に、いきいきとした生活が送れることを伝えたい。そしてその生活を支える人達も増やしたい。発足以来変わらないこの目標のもと、会員は支援者とともに地道に活動を続けています。

(2010年2月3日記)

兵庫盲ろう者友の会、第20回(平成20年度)第2部門の支援グループです。
連絡先や活動内容については、こちらをご覧ください。