ボラ仲間の活動リポート
被災地の製品を関西で売ろう!
社会福祉法人相楽福祉会のみなさん東日本大震災では、障害のある人たちが働く施設が被災して製品を作れなくなっただけではなく、販売所が被災して売る場所がなくなったり、福島県第一原発事故の風評被害によって、製品を作っても売れない、などということが起こりました。
京都府の社会福祉法人相楽福祉会は、震災後、いち早く被災地に入り、関西にある11か所の福祉事業所と協力して「東日本大震災関西障害者応援連絡会」を結成しました。そして、被災した障害のある人や家族、スタッフを元気づけようと、製品を購入して販売する取り組みを続けてきました。
相楽福祉会は、日中活動支援やグループホーム、相談支援など、障害のある人たちが地域で暮らしていくためのあらゆるサポートをしています。
日中活動としてパンの製造販売、陶芸、織物、紙すき、喫茶店の運営、地域の公園や駅前の清掃、緑化活動などに、115名の障害のある人が取り組んでいます。
被災地の製品を京都で販売!
被災地の製品の売り場5月の日曜日、京都府精華町の福祉施設で行われたイベントで、被災地の製品を販売する復興支援の売り場が設けられました。
売られているのは、福島県、岩手県の福祉施設が作ったリンゴジュース、ふりかけ、クッキー、ドーナッツ、ラスク、のり・・・。
すべて相楽福祉会が、この日のために被災地から購入したものです。
開場と同時にお客さんが集まってきて、次々にジャムやふりかけを買っていきました。
「復興支援」の文字に目がとまったという女性がいました。
女性「夫の実家が南相馬市なんです。原発のこともあって、実際に行ってお手伝いすることはなかなかできないけど、こういう取り組みをされていたら少しでも力になりたいと思って。
募金よりもこの方が作っている人の様子を想像することもできますし。あちこちでこういう取り組みがあったらいいですよね。」
生ものは定期購入で
定期購入した製品を仕分ける職員被災地の製品を購入して販売する上で欠かせないのは衛生管理です。
そのため、できるだけ賞味期限の長い製品を選んで購入しなくてはなりません。
だけど、豆腐や納豆などの生ものを作っている施設も応援したい。
そこで始めたのが、月に一度の、職員と利用者、その家族向けの定期購入です。
毎月一度、相楽福祉会では、賞味期限の短い製品を集めた注文書を、職員と利用者に配ります。
担当者は、毎回、およそ80人分の注文をまとめて被災地にメールで発注します。
1〜2週間後、豆乳、納豆、ラーメンなど大量の商品が相楽福祉会に届きます。
それを職員が手分けして、注文書と照らし合わせながら一人分ずつまとめていきます。
製品が手元に届くまでは2日。生ものも安心して購入することができます。
松尾健介さん毎月、納豆を購入しているという利用者の松尾健介(まつお けんすけ)さん。
「値段はスーパーと同じ100円なので、どうせなら被災地の製品を買いたいと思います。豆が大きくておいしいので、納豆はみんなの大人気なんです。」
被災地の製品を販売するようになったいきさつ
相楽福祉会は、震災直後の3月15日に被災地に入り、ボランティア活動を始めました。
京都、奈良、大阪にある11か所の福祉事業所と協力して「東日本大震災関西障害者応援連絡会」を結成し、福祉施設を中心に、支援物資の輸送、炊き出し、障害のある人たちのケアなどを行ってきました。
そんな中、被災地では、施設が倒壊し障害のある人たちが製品を作れなくなっただけでなく、販売所が津波で流されて売る場所がなくなったり、福島では原発事故による風評被害で作っても売れなくなってしまったことを知りました。
売れるところで売ればいい・・・
被災地の製品をまとめて購入し、関西で販売することを提案したのは、相楽福祉会の廣瀬明彦(ひろせあきひこ)さんでした。
廣瀬明彦さん廣瀬明彦さん
「施設での作業というのは、そこに通う障害のある人たちにとってのアイデンティティーになっているかもしれんと思うんですね。通うところがあって、自分が参加する作業があって、それを人が購入してくれて、それによって社会参加している。
それがある日突然なくなったとしたら、ものすごくしんどいことだと思うんですよね。」
廣瀬さんたちは、福島県、岩手県の福祉施設などを手分けしてまわり、製品を購入するルートを開拓していきました。
その結果、福島県授産事業振興会、岩手県社会福祉協議会が注文の窓口となって、各県内の施設の製品を手配してくれることになりました。
去年5月には、100種類以上の製品が、初めて福島から届きました。
最初の製品購入にかかったおよそ50万円と送料は、被災地支援のために集めた義援金から支払いました。
咖哩亭(かりーてい)のレトルトカレー
2011年4月29日レトルトカレーの製造再開した、とりもとのみなさん相楽福祉会が復興支援として購入している商品の中に、岩手県宮古市の有限会社とりもとが作っているレトルトカレーがあります。
とりもとは、焼き鳥屋とカレーレストラン、レトルトカレーの製造販売を営み、20年前から障害のある人たちを雇用してきました。今は7人の知的障害のある人が働いています。
津波で店舗は壊滅的な被害を受けましたが、レトルトカレーを作る機械は難を逃れました。
とりもとのレトルトカレー製造再開を聞き、早速、販売のお手伝いをしたのが相楽福祉会でした。
(有)とりもと 社長 小幡勉(おばた つとむ)さん
「福祉施設であれば、災害復旧のための国の補助金などもあるけど、うちは民間企業なので、公的な支援はほんとうにわずかでした。
相楽福祉会のメンバーは、そんな状況をよく理解して支援してくれたので、とても心強かったです。本当に感謝しています。」
末永く支援を続けていくために
森田和裕さん被災地の製品を購入して地域で販売する取り組みを始めて1年がたちます。
相楽福祉会の事務局長 森田和裕さんに、活動を続けていく秘訣を聞きました。
森田さん「直接、現地に行って支援したいけどいろんな事情があってできない、でもこういう形でならできる、ということで、輪が広がってきたんだと思います。
職員も現地に支援に行ける人と行けない人がいる。だからやれる時にできることをやればいい。それが続けてこられた秘訣。
1年やったから十分ということはない。これからもじっくりやっていこうと思っています。」
2012年6月15日掲載 取材:大和田