ボラ仲間の活動リポート
体の不自由な子に雪の中で思いっきり遊んでもらう「親と子の療育キャンプ」。
キャンプ期間中、子どもたちは親元を離れて過ごします。身の回りの介助を行うのは、公募によって集まったボランティアたちの役目です。
昨年度のキャンプより
ボランティアと子どもたちの出会い
キャンプ当日まで1ヶ月あまりとなった11月28日、板橋区の心身障害児総合医療療育センターで、キャンプの参加者が一堂に集う「全体会」が開催されました。
これまで、体の不自由な子どもたちが抱える生活上の困難さと、その介助方法を学んできたボランティアたちは、この日初めて子どもたちと出会うことになりました。
車いすに乗り、保護者につれられて会場にやってきた子どもたち。待ちかねていた大勢のボランティアに笑顔で迎えられました。
これまでキャンプに二回以上参加している子どももおり、「みんな元気だった?」と再会を喜ぶ姿もみられました。
全体会の会場には、子ども、保護者、ボランティア、運営スタッフの全員がそろいました。全体の人数は約100名になります。
主催団体の挨拶の後、キャンプ中行動を共にするグループごとに分かれて自己紹介をしました。その後、ボールや風船の投げっこで親睦を深めました。
医師やスタッフによる聞き取り
グループごとの交流と並行して、保護者と子どもは一組づつ、医師の診察を受けます。体の調子はどうか、どんな薬をいつ服用しているのか、食事や排泄の場面でどんな配慮が必要かなど、聞き取りの内容は多岐にわたります。また、意識を失ったり全身がけいれんするといった、発作の症状を持つ子も多く、医師は保護者に最近発作が起きたことがあったか、その場合どう対処したのか、などについて詳しく聞いていました。
こうした聞き取りと並行して、別のスタッフは子どもの使用している車いすのチェックを行いました。
子どもたちの利用する車いすには様々な種類があり、折りたたむ方法、体を固定するベルトの巻き方、取り外せる部品の有無などが、それぞれ異なります。
キャンプ本番でボランティアたちが車いすの取り扱いに困ることがないように、作業療法士や理学療法士の資格をもつスタッフが一台ずつチェックします。
ボランティアチーフの役割
医師やスタッフから集められた情報は、各グループに一人ずつ配置されている「ボランティアチーフ」を通じて、一人一人のボランティアに伝えられます。
「ボランティアチーフ」は、過去に何度もキャンプに参加していたり、普段仕事で障害のある人と接しているなどで、子どもたちの介助経験が豊富な人が任命されます。
記者と同じグループでボランティアリーダーを務めるのは「マスター」こと、安岡智史さん(29歳)。普段は理学療法士として障害のある子どもたちのリハビリを指導しています。
ちなみにキャンプネームの由来は、安岡さんの風貌が人気バンド「サンボマスター」のメンバーに似ているからだとのことです。
マスターに、ボランティアチーフの役割について聞いてみました。
「チーフの役割は、第一にキャンプ中子どもたちが安全に過ごせるよう、責任を持つことです。安全にキャンプを行うためには、参加者同士がコミュニケーションを密に取ることが重要です。そのために、ボランティアと子どもたちの関係作りをサポートするだけでなく、ボランティア同士の関係をよくすることを重視しています。
たとえば、今回のキャンプでは、中国からの留学生であるタラちゃん(前回の記事を参照)が、言葉の問題もあって、最初のうち言葉少なでした。そこで僕のほうから積極的に質問を投げかけてみました。それがきっかけになったのか、タラちゃんと他のメンバーとの間で、よい形の交流が生まれていったと思います」とマスターは言います。
――ボランティアチーフは、医師やスタッフからの情報をボランティアに伝える役割も担っていますね
「それも重要な役割です。単に情報を伝えるだけでなく、子どもの様子を見て、逆に主催者に配慮をお願いすることもあります。たとえば、僕たちのグループには、最近けいれん発作を起こした子が参加する予定です。就寝中の発作にも対応できるように、キャンプ中はその子の近くに看護師が待機してもらうことにしました」
キャンプへの参加は今年で4年目になるというマスター。この冬のキャンプ以外にも、春と夏に開催されるキャンプにも参加しているため、4年間でキャンプに参加した回数は10回以上にのぼるといいます。またそれぞれのキャンプの前には、毎週末5〜10回程度の研修が行われ、それにも参加しているとのこと。
――そうなると一年のうち半年くらいは、休日の一日がキャンプや研修で埋まってしまいますね
マスター「そのとおりです(笑)。それでも参加しているのは、キャンプを通じていろんな年齢や職業のボランティアたちと出会えることが、とても刺激になっているからです。それから僕は普段仕事で就学前の身体に障害のある子どもたちと接しているのですが、冬のキャンプでは同じ障害のある小学生、春や夏のキャンプには中学生や大人が参加します。普段自分が接している子どもたちが、やがてどんなふうに成長していくのか、考える機会にもなっています」
キャンプを楽しみに
全体会の最後は、キャンプのテーマソング「浦佐キャンプソング」を全員で練習しました。最初声が出ていなかった子も、何度か練習しているうちに大きな声で歌うことができるようになりました。
別れ際、「次はキャンプ本番で会おうね!」と元気に話してくれる子どもたちの姿が印象的でした。
2011年2月8日掲載 取材: 松本
次回は、いよいよキャンプ本番の様子をリポートします。