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インタビュー

2008年3月31日

写真:にこやかに微笑む なからいさん 〈気象予報士〉
半井 小絵(なからい さえ)さん


いろんな人と知り合って、もっと「ハートの力」を磨きたいです

障害のある方がつづった詩と、その詩から受けるイメージをさまざまな分野で活躍している著名人が絵などで表現した作品を展示する「NHKハート展」。 今回、そのひとつの詩に絵を寄せてくださったのは、NHKニュース7の気象情報でおなじみの半井 小絵さんです。半井さんが作画したのは、知的障害のある新保 いずみさんの詩「スープ」です。お話を伺いました。


しんぼ いずみさんの詩「スープ」  あたし おひめさまみたいに食べてるの。 こうやって こぼさないで食べるんだ ゆっくり食べるんだよね。 お母さん じゃましないでね。(詩 終わり)  しんぼさんは群馬県在住の19歳。日ごろは就労訓練をする施設で、ビーズアクセサリーやポストカードを制作して過ごしています。 詩のとなりに、なからいさんの描いた絵 真ん中にハート型の池がある。池にはスプーンが置いてあり、池の表面に雲が映っている。上からは、温かくほほえむ太陽が見ている。

Q.スプーンと雲が印象的ですね。絵の真ん中の池はスープをイメージしたものですか? 

半井:スプーンは「おひめさま」をイメージして、池をスープに喩えてみました。池には彼女に幸せになってほしいなって、四つ葉のクローバーを浮かべました。普段気象に関わっているので、最初にスープに雲が映ってるのが頭に浮かんだんですよ。それをどうしようかなって、はじめはカップのスープに描いてみたんですけど、なんか違うなあって。下絵を何回も描き直して1か月、出来上がるまでに3か月かかってしまいました。

Q.詩の中で印象的な言葉はありますか?

半井:「お母さんじゃましないでね」という言葉です。彼女はお母さんに愛されてるんだなって感じたんです。だから絵を考えるときに、お母さんが彼女を温かく見守ってる感じを表したかったんです。それは太陽だ!って思いました。

Q.完成したときはどんな思いがありました?

半井:何かお役に立てるんだったらと思って始めたんですが、自分なりに彼女の思いを、出来る範囲で表せたかなって思います。
彼女のほかの詩も読ませていただく機会があったんですけど、私が持っていない新鮮な言葉、たとえば少女のころに感じていたような言葉や心をたくさん持っているんだなと思いましたね。お散歩の時など、彼女が新鮮な言葉を何気なくぽっぽっと言うらしいんですよ。それをお母さんが書きとめていて、書いてごらんって言って、こういう詩が出来るそうなんです。

Q.気象予報もいろんな人に影響をあたえる仕事ですね。

写真:天気図をまえに、気象情報を伝えている なからいさん 半井:そうですね。だからとってもプレッシャーはあります。1日1日その日の全力は尽くしているつもりなんですけども、たまにうまく伝えられなかったり、ポイントをしぼれなかったりと、いろんな反省があるんですよね。気象の要素は、天気だけじゃなくて、気温、湿度、風とか、いろんな要素があります。その中から視聴者がどんなことを知りたいのかなっていつも考えてます。そして知りたいことを分かりやすく、小さなお子さんでも分かるくらいの簡潔な言葉を使って伝えるよう心がけています。そういう時に「いつも、なからいさんのお天気をみています」とかわいい字で手紙が来ると、とてもうれしいですね。

Q.人と触れあうことがお好きなんですか?

半井:そうですね。週末はゆっくり寝ていたいのですが(笑)、勉強とリフレッシュを兼ねて自然の多いところによく行くんです。そこで農業をされている方とお会いしたり。農業をされている方は一年中気象と関わってらっしゃるのでスペシャリストですから、地元の天気について教えていただくことがたくさんあります。そして、「いつも見てるよ」って応援されると、ありがとうございますと感謝の心がわいてきますし、また頑張ろうっていう活力にもなりますね。

Q.これからの目標は?

半井:気象情報の中身をもっと充実させて、わかりやすくお伝えできるようにしたいのはもちろんですが、いろんな人と知り合って、もっと人間力、「ハートの力」を磨きたいなと思います。それは、人を思いやることで、逆に思いやりを与えられることから生まれるんだと思うんです。お互いにね。心と心が通じ合うことで、「ハートの力」が少しずつ増え、何年も何年も年を重ねていくうちに、大きなハートになっていけばいいなって思います。

NHKハート展は今回で13回目。4598編の応募の中から選ばれた50編の詩に、半井さんのほか、緒形 拳さん(俳優)、北川 悠仁さん(ゆず/ミュージシャン)、茂木 健一郎さん(脳科学者)など、総勢50人の著名人が、詩の思いを受け止めた作品を寄せています。