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インタビュー

2007年6月25日

左手を左ほほにあて、おだやかに笑うのっぽさん 〈俳優・作家・歌手〉
高見 のっぽ(たかみ のっぽ)さん

あいさつすればみんなうれしい。
やさしさが伝わるんです。

高見のっぽさん(73歳)は、1970年から20年間、NHK教育テレビで放送された幼児向け工作番組『できるかな』に出演。「ノッポさん」として、ものづくりの楽しさを伝え、多くの子どもたちに愛されてきました。2年前、NHKみんなのうた『グラスホッパー物語』で歌手に初挑戦。さらに今年は続編『ハーイ!グラスホッパー』を発表。今、歌を通して伝えたい気持ちを伺いました。


Q.なぜ、歌に挑戦しようと思われたのですか?

高見:年をとったせいですよ。いい意味でずうずうしくなった。10年前、60歳くらいだったら、「歌を出しませんか」って話が来ても躊躇したと思うんです。失敗するのは嫌でしょ。声がいいのは知っていたけれども(笑)、歌が途方もなくうまいとも思っていなかったから。でも70歳を過ぎて、だめだったときに受け止める覚悟が以前より出てきたんですね。開き直りです。年を取るのは意外といいもんです。
それに歌というのはすごく影響がある。伝える力がある。取り越し苦労かもしれないけれど、心配事の多い世の中でしょう。歌で伝えることによって、その解決策になるんじゃないかと思ったんですよ。

バッタにふんするのっぽさん(「ハーイ!グラスホッパー」より)

Q.作詞もされている『グラスホッパー物語』は、子どもから大人まで大変な反響がありました。この歌で伝えたかったことは?

高見:長年「ノッポさん」をやって、高見イコール「ノッポさん」と思われるようになった。そのイメージを傷つけたくなくて新しい役に挑戦できなかった。やりそこなった自分の気持ちをそのまま歌ったんです。だから私がふんするおじいさんバッタが孫バッタたちに、「失敗を恐れず大きな世界に向かってとべとべ」と言っています。それがすごく皆さんの心に届いたみたいなんです。
年老いて、かわいい子たちとお別れしなくちゃいけないことが憂うつだった人が、私が歌うあっけらかんとした歌のために「後に残る人のために何かしよう、と明るくなりました」という感想を寄せてくださった。
でも、あの歌は「とべとべ」の部分だけじゃないんです。公園に住むバッタたちは「この外に出るな。出れば人間達に踏みつぶされるぞ」という代々の言い伝えを聞いて育つ。しかしおじいさんバッタは若き日、公園の外に出てみた。こわい目にもあったけれど、やさしいひとがぼくを助けてくれて公園まで返してくれた。実は人間はやさしかった。本当は「とびなさい」そうすれば、人のやさしさにふれられて、かけがえのない思いもいっぱいできるんだよ、というメッセージだった。

Q.人のやさしさも伝えたかったんですね。

高見:そう。けれど「失敗を恐れず、とびなさい」というところが取り上げられることが多くて影に入ってしまった。そこで続編『ハーイ!グラスホッパー』では、前作で伝えきれなかった「やさしさ」を詞に託しているんです。

Q.続編『ハーイ!グラスホッパー』では、「あいさつ」をテーマにしていますね。孫バッタたちがいろんな生き物にあいさつして回る。恐いカマキリにあいさつしたら、じろっとにらまれてそっぽ向かれた。でも、諦めずに続けたら、ついに笑顔が返ってきた、というシーンが印象的でした。

のっぽさんは子どもたちに大人気

高見:あいさつとは「私はあなたとお仲間ですよ。どうぞよろしくね」という意味なんです。
私は小さい人に「おはよう」とか「こんにちは」って言われたら、うれしくて胸がキュンとなります。仲間だから私のことを気にかけてくれる、そんなやさしさが伝わってくるんです。この歌を聴いた人が「だからあいさつは必要なのだ」という根本的なところをとらえてくれたらと思っています。先日のイベントで、歌を聴いたおチビさんたちはきちんとあいさつをしていた。ちゃんとわかってくれてるんです。私はすごくうれしかったですよ。

Q.やさしさを伝えるための「あいさつ」なのですね。

高見:みんな「かけがえのない仲間」だという気持ち、そのやさしさを感じあうことが減ってきていると思う。あいさつをして小さい人が大きい人に親しみを感じる。大きい人が小さい人を気にかける。人は一人では生きていけない。見知らぬ人ばかりではだめなんです。簡単なことなのに、案外、みんな分かっていないんじゃないかな。だから伝えたかった。
声をかけあっていれば事件だって減りますよ。みんなが互いに気にかけているから。あいさつをすれば、世の中が変わる。この歌がきっかけでそう思う人がもっと増えてくれればと願っています。みなさんも身近なところからあいさつしてみてください。最初は「どうしたんだ」って顔をされますが、あいさつされたらみんなうれしくなります。

高見のっぽさんは、「ホテルのドアマンの仕事もやってみたい」と言います。あいさつはもちろん、いろいろな方法で送迎をして、みんなが幸せな気分になれるようにしたい、とのこと。 NHKみんなのうた『グラスホッパー物語』と『ハーイ!グラスホッパー』は現在DVDまたはCDでお楽しみいただけます。のっぽさんをもっと知りたい方は、高見さんのホームページをご覧ください。別ウインドウが開きます。