2006年10月 1日
〈女優〉
松島 トモ子(まつしま ともこ)さん
車いすダンスって、
本当にかっこいいんですよ
映画の子役として歌手として大活躍をしてきた松島トモ子さんは、3歳からバレエを学び、今でも踊ることが大好きです。50歳を過ぎてから、障害のある人とない人がペアで踊る「車いすダンス」と出会い、車いす選手のパートナーとして競技会に出たり、普及活動に取り組んだりしています。ご自宅1階の、ダンスの稽古場を訪ねました。
Q.バレエの練習の様子を見せていただきましたが、指先まできれいな線が描かれていて、本当にすばらしかったですね。練習は毎日やってらっしゃるのですか?
松島:車いすダンスをやるということになると、筋力がとても必要になるんですね。稽古場にいろんな器具を置いて筋肉を鍛えています。自分が踊るだけではなくて、車いすを引いたり動かしたりしますし、車いすがわあっと走ってきて、それをぱっと受け止めたりするのは、結構負荷がかかるんですよね。車いすが10キロくらい、乗る人の体重を加えると70キロから80キロくらい、それにスピードがありますから、かなり、重労働なんですよ。
Q.それを、重労働という表情を見せずに受け止めなければならない?
松島:(笑い)華麗に踊らなきゃいけない訳です。
Q.車いすダンスの魅力は、どんなところにあるのでしょう?
松島:社交ダンスがベースになっていますが、スピート感がすごいんですね。車いすの動きも、前輪を持ち上げて体を後ろにそらせたり、飛び上がったり、バック転みたいなものをやってみたり。こんなこともできるのって、はじめてご覧になると、みなさん、こんなにすばらしいものがあるのかって驚いてくださいますね。だから、障害者であるとか何とかいうことを越えて、1つのエンターテインメントとしてご覧になれるものだと思いますよ。
Q.車いすダンスをやって良かったと思うのは、どんな時ですか?
松島:私のパートナーになった障害者の方たちというのは、中途障害者なんですね。生まれたときからそうだったら、また違うんでしょうけど、20代とか10代の後半とか、そういうときに彼らは事故で体を損傷していますから、どっかで納得できてないところが多いみたいですね。頭では障害者になったということがわかっていても、どこかで割り切れない。
ところが、最初のパートナーの長沢くんが、日本選手権で優勝した後でこんなことを言ったんです。選手権をやる前は、夢に出てくる自分というのは、ちゃんと立って歩いているんだそうですね。けれども、選手権で優勝した後では、夢に出てくるのは、車いすに乗っている自分。自分のことを受け入れることができたっていうんでしょうかしら。ありのままの自分を受け入れることができた。そういうことを言っていただくとれしいですよね。
派手な衣装を着て、メイクをして、全身にライトをあびて踊り、拍手をいっぱいもらい、今まで知らなかった「見られる快感」を知った、という人もいました。前向きに生きられるようになった、という人もいました。パートナーはたいへんだけど、やりがいがあります。できるだけ続けたいと思っています。
Q.今年も12月に全日本車いすダンススポーツ選手権大会がありますが、そうした競技会への参加は、しばらくお休みされるとか?
松島:実は、車いすが走ってくるのを受け止めたときに、ちょっと足を捻挫(ねんざ)しましてね。だましだましやっていたのですが、それが治るまでは競技会はお休みすることにしました。車いすダンスを知っていただくためのデモンストレーション(実演説明)は続けます。ロータリークラブの地区大会とか、学校とか、講演会とかで。
Q.デモンストレーションを見てくださる方には、何を感じてほしいですか?
松島:まあ、車いすダンスをご存じない方が多いですから、何より、車いすダンスっていうのは、こんなにかっこいいものだということを知っていただきたいですね。また、障害者の方で車いすダンスをやりたいという人はいっぱいいるんだけれども、やっぱり、相手をしてくれる方が、なかなかいませんからね。私たちのデモンストレーョンをご覧になった若い方たちが、「これはなかなかかっこいいぞ」とか、「おもしろい」とか思ってパートナーになってくだされば、本当にうれしいです。この前、京都の中学校で車いすダンスをお見せしたら、アンケートの中で、「スピード感があってすばらしかった」とか、「障害者の方がかっこよかった」とか、いろんな事を書いてくださったんですよ。これからも頑張って普及活動を続けて行こうと思っています。
松島トモ子さんが理事をされている日本車いすダンススポーツ連盟は、毎年、全日本車いすダンススポーツ選手権大会を開催しています。今年は12月17日に、東京の国立オリンピック記念青少年綜合センターで開かれます。また、全国に32の支部があり、練習会を開いています。日本車いすダンススポーツ連盟のホームページはこちらです。